著者
高取 克彦 梛野 浩司 山本 和香 下平 貴弘 森下 慎一郎 立山 真治 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.352-356, 2003
参考文献数
15
被引用文献数
2

変形性膝関節症にて全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:以下TKA)を受けた症例に対して,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:以下DVT)の予防を目的とした下肢の神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)を実施し,その臨床的実用性を検討した。対象は,本研究に対して同意を得られた16例(男性2名,女性14名,平均年齢68.6 ± 8歳)とした。NMESは術直後から離床まで継続的に実施し,その臨床的実用性を以下の3項目(1.電気刺激に対するコンプライアンス,2.刺激強度の定常性,3.電極の皮膚への影響)で評価した。DVTの有無については,腫脹,Homan's徴候などの理学的所見と凝固線溶系マーカーのFDP D-dimer(以下D-dimer)値によるスクリーニング評価にて実施した。刺激に対するコンプライアンスは15例が手術直後からドレーンチューブ抜去までNMESが実施可能であり良好であった。1例のみ刺激に対する不快感によりNMESを一時中断した。刺激強度は麻酔の影響,発汗などにより定期的な調節が必要であった。電極の皮膚への影響は1例のみ皮膚の発赤が認められた。DVTスクリーニング評価では明らかな下肢腫張が3例,腓腹筋把握痛が3例に認められたが,D-dimer値は全症例正常範囲内であった。今回の結果から,本法は刺激強度の定常性や皮膚への影響などの課題を改善することで,臨床的実用性が獲得できるものと考えられた。