著者
下村 香理 芦澤 昌子 佐川 賢
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-26, 2012-03-01
被引用文献数
1

日常生活においては,商品タグやパンフレットなどに様々な色の文字が用いられており,これらは高齢者に読みづらい場合も多い.本研究では,物体色モードの色文字の視覚的な読みやすさを実験的に検討した.文字色は赤,黄,緑,青と黒,灰,白の計7種類,背景色は黒,灰,白の3種類,文字サイズは4〜90ポイントの間で13種類,照度は0.01lxから1000lxまでの6段階として実験を行った.被験者は高齢者14名と若年者18名で,読みやすさの評価には5段階評定法を用いた.ただし読めない場合は別途"読めない"という評価を加えた.照度レベルが低下すると,一定の読みやすさを得るために必要なフォントサイズは大きくなる.この変化は文字色と背景色の組み合わせで変化し,ここでは明所視では明所視輝度コントラストが,暗所視・薄明視では暗所視輝度コントラストがそれぞれ影響し,どちらも輝度コントラストが高いほど読める文字サイズが小さくなる.高齢者は全体的にみると,若年者の約1.5〜2倍の文字サイズが必要であり,その結果高齢者が若年者と同じ読みやすさを得るためには,例えば薄明視レベルでは,約10倍の照度が必要であることがわかった.さらに文字の読みやすさは背景そのものによっても影響され,同じ輝度コントラストでも黒背景より,白背景の方が読みやすいことが分かった.これらの結果および分析から,色文字の読みやすさは,年齢,照度,輝度コントラスト(明所視輝度又は暗所視輝度),さらに背景色が大きく影響し,これらの要因によって読めるために必要な文字サイズが決まることが明らかとなった.