著者
吉本 明平 下道 高志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2253-2264, 2015-12-15

プライバシにかかわる情報と個人の関係性を数学の集合論的記法を用いて表記する手法を提案する.これによってプライバシに関する客観的かつ合理的な議論を可能とする.「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の施行や「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」の公表など,日本国内におけるプライバシの取扱いについての議論が活発化している.そこでは個人に関する情報と個人との関係性や情報の共有範囲の検討が不可欠である.しかし,これらの検討において情報の関連範囲を明確に記述し論理的,具体的な議論を行う方法論が未整備であった.本稿では集合論的記法を応用し,プライバシにかかわる情報と個人の関係性を具体的に表記し,明確に議論する方法論を提案する.さらに,この記法を用いて情報の共有範囲の表記,情報とコンテクストの関係表記,プライバシの状態遷移の表記を行い,この記法の効果を確認した.また,実際に課題としてプライバシに関する議論がなされた実例への適用を行いこの記法の有効性の検証を行った.