著者
世良 時子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.92-100, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
15

本研究は,タ形の連体節に注目し,母語話者の持つ文レベルの文法的予測を明らかにしようとするものである。日本語母語話者64名を対象に,主名詞が連体節・後続する主節ともにガ格であるタ形の連体節を「連体節+主名詞+ハ/ガ」の形で提示し,その後続部分を完成させるという調査を行った。その結果,タ形の連体節から予測される後続部分には,述語の種類に共通性があり,連体節が状態性の場合,後続部分にはその「変化」を表す内容,連体節が動作性の場合,後続部分には「次の動作」を表す内容が予測されることが明らかになった。これらについて,BCCWJの用例で検討したところ,状態性述語について同様の傾向が見られた。 連体節は,中級以降では扱いが少ないとされるが,本稿の調査結果から,連体節の形式や意味に注目し学習することは,学習者の文理解・産出能力の向上に資する可能性があると考える。