著者
渡辺 裕恭 中井 文徳 井内 民師
出版者
徳島県立農林水産総合技術センター畜産研究所
雑誌
徳島県立農林水産総合技術センター畜産研究所研究報告 (ISSN:1347099X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.15-22, 2001-12

四国地域の5月から6月の暑熱環境への移行時期、いわゆる暑くなり始める時期において、牛舎内温度の上昇に伴う泌乳牛の血液成分の変動傾向を調査するため、ホルスタイン種泌乳牛19頭を用いて、平成9年(第1年度)、平成10年(第2年度)の2カ年にわたる飼養試験を行った。その結果、次のような知見が得られた。1)ヘマトクリット(PCV値)は、産歴および乳量水準による差がみられ、第2年度において牛舎内温度の上昇に伴い上昇する傾向にあった。2)総蛋白質(TP)は、第2年度において緩やかに上昇する傾向がみられた。3)トランスアミラーゼ(GOT)は、第2年度において緩やかに上昇する傾向がみられた。4)尿素窒素(BUN)は、2産以上で乳量水準の高い牛群において、第1年度では緩やかに上昇する傾向がみられたものの第2年度では変動がみられなかった。また、初産で乳量水準の低い牛群において、第1年度では緩やかに低下する傾向がみられたものの、第2年度では緩やかに上昇する傾向がみられた。5)血糖(Glu)は、いずれの年度においても変動の傾向がみられなかった。6)総コレステロール(T-cho)は、2産以上で乳量水準の高い牛群において、第1年度では緩やかに低下する傾向がみられたものの、第2年度では変動の傾向がみられなかった。また、初産で乳量水準の低い牛群において、上昇する傾向がみられた。7)遊離脂肪酸(NEFA)は、初産で乳量水準の低い牛群では、5月中旬に低下したものの、その後は変動の傾向がみられなかった。8)カルシウム(Ca)は、いずれの年度においても変動の傾向がみられなかった。9)無機リン(IP)は、第2年度において5月中旬からの本格的な暑熱環境において一旦低下したものの、その後は上昇する傾向がみられた。10)マグネシウム(Mg)は、変動の傾向がみられなかった。11)アルカリフォスファターゼ(ALP)は、産歴および乳量水準により濃度に差がみられるとともに、緩やかに低下する傾向がみられた。12)アルブミン(Alb)は、緩やかに上昇する傾向がみられた。