著者
吉村 史郎 小笠原 寛 中原 聰 藤谷 哲造
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.602-608, 1995
被引用文献数
6

オオバヤシャプシは六甲山系の開発後に多数植林されており, その開花時期はスギ花粉飛散期の後半に重なる. 1991年の花粉飛散期に芦屋市内に10年以上居住する532名の女性を対象にスギならびにオオバヤシャブシ花粉症の疫学調査を行った. スギとの重複感作例を含めたオオバヤシャブシ花粉症有病率はオオバヤシャブシが密植されハンノキ属の落下花粉総数が977個/cm^2/年の山腹では26.1%で, 山腹から約5km離れ落下花粉総数386個/cm^2/年の平野部では4.3%にすぎなかった. 平野部には交通量の多い幹線道路が通過し, 大気汚染は山腹よりも有意に強かった. しかし, 我々の調査結果から, しばしばスギ花粉症で報告されているような大気汚染の花粉症に対するアジュバント効果は認められなかった.
著者
中原 聰 芦田 恒雄 衛藤 幸男 吉川 恒男 井手 武 田端 司郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.104-109, 1990
被引用文献数
6

オオバヤシャブシによる本邦最初の花粉症が, 昭和62年4月, われわれの診療所で発見された.患者は54歳の主婦で, 15年来現住所の表六甲山麓に住み, 3年前から春季に花粉症症状に悩まされるようになった.六甲山系には古くより土砂崩れ防止の目的で, オオバヤシャブシが多数植林されており, 患者の住宅地一帯はオオバヤシャブシ林に囲まれて, 濃厚な花粉飛散の環境下にあった.したがって, 同地域住民のオオバヤシャブシ花粉症の多発が推測されたので, 翌63年春に花粉症疫学調査を実施した.その結果, 同地域とくに1丁目の住民には, オオバヤシャブシ花粉症の高い有病率が認められた.