著者
多湖 輝興 中坂 佑太 増田 隆夫
出版者
石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.197-207, 2014
被引用文献数
12

酸化鉄系触媒によるグリセロールからの有用化学物質合成を実施した。反応実験は反応温度623 K,常圧下,固定床流通式反応器にて実施した。グリセロールからの有用化学物質転換反応では,主にアリルアルコール,プロピレン,ケトン類が得られた。これらの有用化学物質は反応経路I(アリルアルコール,プロピレン)と反応経路II(ヒドロキシアセトン,アクロレイン)に従って生成し,経路IIに含まれるヒドロキシアセトンは容易にカルボン酸へと転化し,カルボン酸のケトン化反応によりケトンへと転化された。<i>W/F</i>値(触媒量/供給原料比)を増加させると,アリルアルコールからのプロピレン生成,およびカルボン酸からのケトン生成の各逐次反応が進行し,生成物はプロピレン(収率約24 mol%-Carbon)とケトン類(収率約25 mol%-Carbon)に収束した。また,アルカリ金属を触媒に添加することにより,アリルアルコールの収率が効果的に向上することを見出した。本論文では,試薬グリセリン,および粗製グリセリンからの有用化学物質合成を報告するとともに,触媒組成と反応条件が生成物収率に及ぼす影響を反応機構の観点から議論する。