著者
中家 葵 長島 啓子 田中 和博
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-12, 2014-12-25 (Released:2018-07-07)
参考文献数
21
被引用文献数
1

京都ではマツ枯れ後ソヨゴ林が拡大しているとの報告がある。ナラ枯れ後もマツ枯れ後のような植生が広がるとの指摘もある。しかし,ソヨゴの分布状況や拡大の可能性を研究した例はない。本研究では立地環境(表層地質,地形,堆積様式,斜面傾斜,表層土粒径)をもとにソヨゴ林の現況把握と拡大予測を試みた。京都市宝ヶ池公園(96.25ha)の山林内に立地環境を確認した上で,調査地点53ヶ所を設置し毎木調査(胸高直径,樹高)を行った。ソヨゴの優占する立地環境を把握した結果,地形が凸部,堆積様式が残積土,表層土粒径がシルト質でソヨゴは優占する傾向があり,その面積は13.66ha(対象地の面積の14.1%)であった。また,現在,ナラ枯れ被害樹種が優占し,その下層にソヨゴが多く分布する範囲でソヨゴの拡大を予測した結果,コナラが優占する場合5.95ha(6.2%)または5.72ha(5.9%),アベマキの場合3.92ha(4.1%)または5.08ha(5.3%)と小さかった。ソヨゴが優占する立地環境はコナラやアベマキのそれとは異なるため,ナラ枯れの影響によりソヨゴが拡大する可能性は小さいのではないかと考えられる。