著者
小倉 匡俊 近藤 沙紀 中尾 小百合 河村 あゆみ 福泉 洋樹 岡部 光太
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.8-17, 2020-03-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
23

動物園において複数の動物種を同一空間で飼育展示する混合展示はさまざまなメリットがある。しかし動物福祉を損ないうる状況も存在し、たとえば出産と哺育に対して混合展示が負の影響を与えうることが指摘されている。本研究では日本の動物園における混合展示の代表的な組み合わせであるアミメキリンGiraffa camelopardalis reticulataとグレビーシマウマEquus grevyiを対象に社会関係を評価するとともに、グレビーシマウマの出産が動物福祉に与える影響を調べた。京都市動物園で飼育されていたアミメキリン3個体とグレビーシマウマ1個体(出産後は2個体)を対象に、社会行動と最近接個体、個体間距離を記録し、出産の前後で比較した。その結果、出産前後ともに異種間での親和行動が観察され、一定の良好な関係を築いていることが確認された。しかし個体の組み合わせによっては親和行動が減少し敵対行動が増加するなど、出産によるネガティブな変化も見られた。混合展示により個体数の限られた飼育環境においても社会的な刺激がもたらされることと、出産と哺育に際する攻撃行動の増加に対する注意の重要性が示された。