- 著者
-
井門 彩織
- 出版者
- 動物の行動と管理学会
- 雑誌
- 動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.125-133, 2019-09-30 (Released:2019-11-01)
- 参考文献数
- 21
チーターの発情周期は個体関係や飼育環境によって変化することから,繁殖を効率よく進めていくためには,生理学的だけでなく行動学的モニタリングも重要である。しかしながら,性成熟に伴う発情指標行動や鳴き声の発現時期に関する研究は乏しい。このことから,行動学的モニタリングの開始時期の明確化と個体の行動特徴を正確に把握するために必要な発情指標行動の基礎的データを得ることを目的とした。2009年から2013年にかけて多摩動物公園で飼育されていた22頭のチーターを観察対象とし,発情指標行動と鳴き声の頻度,発現時期と鳴き声の変化の分析を行った。その結果,性成熟とされる生後24ヵ月に向かって行動,鳴き声共に変化することが明らかとなった。「匂いをかぐ」「グルーミング」は生後6ヵ月以内の早期から発現し,最も遅く発現した行動は,雌の「尿をかける」で3歳以降であった。その他の行動と鳴き声は,親離れが始まる生後15~17ヵ月から発現又は変化し始めると考えられた。しかし,成熟個体の行動発現頻度をみると4項目で個体差が見られた。このことから,雌雄の行動特徴と発現状況を生後15~17ヵ月以降から継続的に把握し,個体ごとの発情指標を選出する必要があると考えられる。