著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.Suppl, pp.suppl_37-suppl_38, 2017-06-30 (Released:2017-09-05)

涙やけの改善を目的に二つの実験を行った。実験1では、フードによって涙やけの状 態が変化するイヌを用い、過去にこのイヌの涙やけを改善させたフードAと悪化させたフードBを給餌して、涙やけの状態を観察した。その結果、Bの給餌では涙やけが悪化したが、Aの給餌では改善が認められた。実験2では、涙やけにアレルギーが関係しているとの仮説を立て、涙やけと血清総IgEの関係について検討した。無作為に選んだ33頭のイヌを用い、涙やけ有り群と無し群に分け血清総IgE濃度を比較した。その結果、両者の間に統計的な有意な差は認められなかった。この結果により、涙やけとアレルギーは関係ないことが示唆された。
著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 熊谷 安希子 増田 健一 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-100, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

涙やけは多くの家庭犬に認められ、その原因は流涙症とされている。われわれはドックフードを替えると涙やけの症状が変化するイヌに注目した。このイヌを被験犬としてフードと涙やけの関係について検討した。その結果、試験前に給餌されていたフード(フードP)から過去に涙やけを悪化させたフード(フードA)に切り替えると涙やけが悪化し、涙やけを改善したフード(フードB)を与えると涙やけが改善した。過去に観察されたドックフードによる涙やけの症状の変化が再現された。涙やけの原因の一つとして食物アレルギーが考えられることから、フードに使用されている原材料について調査した。その結果、いずれのフードにも食物アレルギー源となる可能性のある原材料が使用されていた。しかし、試験期間中、被験犬に食物アレルギーの症状は観察されなかった。そこで、涙やけに腸内環境が関係しているのではないかとの仮説を立て、便のpHを測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の便のpHは低値を示した。さらに便中の総短鎖脂肪酸濃度を測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の総短鎖脂肪酸濃度は高値となった。便のpHの低下は短鎖脂肪酸によることが示唆された。以上の結果から、涙やけを改善したフードBの給餌により、腸内環境が改善される可能性が示唆された。フードBは腸内環境改善を謳ったフードであり、ビートパルプ、オリゴ糖の他にビール酵母や野菜パウダーが添加されていた、しかし、今回の実験ではフードに配合されているどの原材料が涙やけの改善に関与したのかは特定できなかった。涙やけと腸内環境の関係の糸口として、涙液中の総IgE濃度を測定した。しかし値の変動が大きく一定の傾向は認められなかった。