著者
小泉 亜希子 山中 寿城 岡本 匡史 平井 信行 黒瀬 直孝 小川 慶治 川北 貞夫 垂水 彰二 高橋 康次郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.125-131, 2003-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

清酒を光照射下で保存した場合に増加する成分について, 溶存酸素濃度がそれらの成分の変化に与える影響について検討し, 以下の結果を得た。(1) トリプトファン類縁化合物6成分が清酒の光照射により生成することを確認した。6成分は, 前報で報告したハルマンのほか, ノルハルマン, 1-エチル-β-カルボリン, 3-インドールカルボキシアルデヒド, 9H-カルバゾールおよび3-メチルー1H-インドールであり, これらは何れも苦味を呈する成分であった。(2) ハルマン, ノルハルマン, 3-インドールカルボキシアルデヒドの3成分は, 溶存酸素低減により増加が抑制され, 9H-カルバゾール, 3-メチルー1H-インドールのの2成分は溶存酸素低減により増加が促進された。1-エチルーβ-カルボリンについては, 溶存酸素低減による影響は明らかでなかった。(3) 16%エタノール含有のマックルベイン緩衝液へのトリプトファン添加試験の結果, 上記6成分が光照射下の保存で生成したことから, これらはトリプトファンから生成することを確認した。また, トリプトファンを添加した清酒の保存試験の結果, トリプトファン濃度の増加により6成分全ての生成量が増加した。(4) 上述の6成分以外にもトリプトファン類縁化合物とGC/MSライブラリー検索の一致率が72%以上である4成分が清酒の光照射により増加することが認められた。
著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.Suppl, pp.suppl_37-suppl_38, 2017-06-30 (Released:2017-09-05)

涙やけの改善を目的に二つの実験を行った。実験1では、フードによって涙やけの状 態が変化するイヌを用い、過去にこのイヌの涙やけを改善させたフードAと悪化させたフードBを給餌して、涙やけの状態を観察した。その結果、Bの給餌では涙やけが悪化したが、Aの給餌では改善が認められた。実験2では、涙やけにアレルギーが関係しているとの仮説を立て、涙やけと血清総IgEの関係について検討した。無作為に選んだ33頭のイヌを用い、涙やけ有り群と無し群に分け血清総IgE濃度を比較した。その結果、両者の間に統計的な有意な差は認められなかった。この結果により、涙やけとアレルギーは関係ないことが示唆された。
著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 熊谷 安希子 増田 健一 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-100, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

涙やけは多くの家庭犬に認められ、その原因は流涙症とされている。われわれはドックフードを替えると涙やけの症状が変化するイヌに注目した。このイヌを被験犬としてフードと涙やけの関係について検討した。その結果、試験前に給餌されていたフード(フードP)から過去に涙やけを悪化させたフード(フードA)に切り替えると涙やけが悪化し、涙やけを改善したフード(フードB)を与えると涙やけが改善した。過去に観察されたドックフードによる涙やけの症状の変化が再現された。涙やけの原因の一つとして食物アレルギーが考えられることから、フードに使用されている原材料について調査した。その結果、いずれのフードにも食物アレルギー源となる可能性のある原材料が使用されていた。しかし、試験期間中、被験犬に食物アレルギーの症状は観察されなかった。そこで、涙やけに腸内環境が関係しているのではないかとの仮説を立て、便のpHを測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の便のpHは低値を示した。さらに便中の総短鎖脂肪酸濃度を測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の総短鎖脂肪酸濃度は高値となった。便のpHの低下は短鎖脂肪酸によることが示唆された。以上の結果から、涙やけを改善したフードBの給餌により、腸内環境が改善される可能性が示唆された。フードBは腸内環境改善を謳ったフードであり、ビートパルプ、オリゴ糖の他にビール酵母や野菜パウダーが添加されていた、しかし、今回の実験ではフードに配合されているどの原材料が涙やけの改善に関与したのかは特定できなかった。涙やけと腸内環境の関係の糸口として、涙液中の総IgE濃度を測定した。しかし値の変動が大きく一定の傾向は認められなかった。
著者
大辻 一也 小泉 亜希子 小林 なつみ 鈴木 真理 古川 奈々 久須美 明子 小林 豊和
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-20, 2016-04-09 (Released:2016-06-01)
参考文献数
6

ボディコンディションスコア(BCS)は犬や猫の栄養診断法として、臨床ではよく使われる方法である。アメリカ動物病院協会は2010年にBCSを栄養診断のスクリーニングの一つとして取り入れた。日本動物病院協会もこれを受け入れた。さらに世界小動物獣医協会はBCSを栄養診断の世界標準にすることを決めた。このようにBCSはイヌやネコの栄養診断法としてオーソライズされたにもかかわらず、診断者によるばらつきは避けられない。そこで、われわれはBCS診断の精度を上げることを目的に、BCSモデル(モデル)を作成した。モデルは人工的に成型した模擬肋骨の上に、各種ゴム素材を積層しBCS1~5になるように調整し作成した。被毛の代替えとして起毛した布を使用した。実験にはBCSの異なる24頭のイヌを使用した。動物看護学を学ぶ学生にイヌを触診させ、モデルの有無によって、BCS 値のばらつきに違いが出るか否かを検討した。その結果、BCS3およびBCS4と診断されたイヌ群において、モデルを使用して診断した方が、モデル無しで診断した方に比較して、ばらつきは統計的に有意に減少した。BCS2は対象個体数が少なく統計処理が不可能であった。BCS1とBCS5の個体は被験犬の中に含まれなかった。今後、個体数を増やし検討する予定である。また、BCSはモデル有の方が無しに比較して、スコアが高く診断される傾向があった。この点に関しては、モデルの改良が必要と思われた。さらに、一般のイヌの飼い主に、モデルを用いて飼い犬のBCS測定をさせ、モデルの印象について調査した。その結果、モデルが飼い犬の栄養診断に役立ったかとの質問に対しては、約80%の飼い主が役立ったと回答した。さらに、モデルを使うことで、うまく診断できたかと言う質問に対して、約65%の飼い主がうまく診断できたと回答した。以上の結果、このモデルは改良が必要であるが、獣医療従事者のみならず、イヌやネコの飼い主の栄養診断にも有用であることが示唆された。