著者
中山 郁英 水野 大二郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_43-2_50, 2021-09-30 (Released:2021-11-03)
参考文献数
54

本稿では行政とデザインについて議論するための共通の土台をつくることを目的とし,行政とデザイン双方から歩み寄ってきた背景を,行政とデザインの統合の場としての「公共イノベーションラボ」を起点とし,文献レビューを中心に解説した。行政側では,1)行政課題の複雑化や,2)行政サービスのデジタル化,3)多様な主体が参画する形への行政改革の進展といった変化が起きており,それを解決推進する手段としてデザイン,特にサービスデザインが注目を浴びるようになった。また,デザイン側では,プロダクトなどの伝統的分野から,サービスやシステム分野への関心の広がり,また社会的課題をテーマとするソーシャルイノベーションのためのデザイン分野の活発な活動が,行政組織でのデザイン実践へと繋がっていったことを整理した。最後に,行政組織においてデザインを実践する際の論点として,1)政策過程のどの部分にデザインが介入するか,また2)行政組織とデザイナーがどのような関係性で協働するのか,という2点について展望を述べる。