著者
中嶋 眞弓 大野 耕一 竹内 由則 竹内 文乃 中島 亘 Fujino Y. 辻本 元
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-71, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
22

重症動物の蛋白質やエネルギー摂取不足による低栄養状態を短期的かつ客観的に評価するため、医学領域において動的栄養指標蛋白として利用されている急速代謝回転蛋白 (RTP) のうち血漿トランスフェリン (Tf)、レチノール結合蛋白 (RBP) のイヌにおける有用性について検討した。健常イヌにおける短期的な給餌量調整試験では、給餌制限に伴いTf値は有意に低下し、給餌再増量に伴い上昇傾向を認めたが、RBP、ALB値に関しては一定の傾向は認められなかった。臨床例における検討では1週間以上50%以上安静時エネルギー必要量 (RER) を維持している慢性消化器疾患症例と比較して、摂取量が50%未満RERである食欲不振症例のTf値は有意に低値を示した。積極的な栄養療法を行った2症例におけるTf値の経時的測定では、上昇を認めた症例では経過良好であったが、徐々に下降した症例では斃死した。今回の結果からイヌの血漿Tf値測定は動的栄養指標蛋白として有用である事が示唆された。