著者
中村 万理子
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.107-122, 2004-03-25

今回の調査では,大学生の睡眠習慣・睡眠環境・心身状態と睡眠状況について調べた。習慣については,カフェインの過度の摂取度が不眠をもたらす可能性があることが分かった。睡眠環境と不眠傾向との有意な関連性は結果としてあまり得られなかったが,睡眠時の騒音に関しての調査では,騒音に対して反応が過敏である程不眠傾向が高くなることが推察された。またこの調査から最も知りたかったことは,大学生の心身状態と睡眠状況の関連性であった。TMIを用いて心身状態の自覚症状を質問したところ,正常型に入る者はわずかに50%にみたず,過半数が現在の心身状態になんらかの異常傾向を持っていることが分かった。大学生の生活には比較的規制が少なく,ストレスも持ちにくいと考えていたが,学校や塾などにカリキュラムがみっちりと決められた受身の状態だった高校までの生活から,何をするにも自主性を求められる大学生活へと移り変わることによって,生活リズムを崩したり,今までの自分との一貫性をなくし目標までも失うなど,精神的につらい時期を過ごす者も少なくはなく,今回のTMIによる心身状態の結果にそれが現れているのではないかと考える。それらの身体的・精神的異常傾向は程度に差はあるものの,心身ともに正常な状態よりも不眠状態を招きやすく,よって大学生の生活のリズムをより悪化させる因子ともなり得る。現在の大学生の心身状態に影響している主なストレス原因は何であるのか,また,大学生が規制の少ない生活を送る一因であると思われる大学の教育制度のあり方についても細分化した調査・分析を行っていくことが必要であると思われる。