著者
中村 伴子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.318-323, 2007-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

国立病院機構, ハンセン療養所, ナショナルセンターに勤務する作業療法部門の業務実態とチーム医療の実態についてアンケート調査を行った. その結果, チーム医療に関してはチームアプローチに困難さを感じている施設がきわめて多く, 問題なしという回答施設は少なかった. チームアプローチの困難な理由は人員配置の少なさや専門性の理解不足, 必要な専門職種の配置の不足が指摘された.また, 作業療法士がチーム医療を実施している主な疾患は神経・筋疾患, 脳血管疾患, 骨・運動器疾患が多く, その専門的役割としては日常生活活動, 上肢機能回復訓練, 遂行障害評価訓練などが多くみられた. さらに, チーム医療に問題を感じながらもカンファレンスの実施や患者主体の工夫が考えられ, 困難事例についての症例検討会も多くの施設でチーム全体にて取り組まれていた.今後はチームの成員一人ひとりがチーム医療の実施者として独自の専門領域を持った上で, 自律的に協働して, 患者のニーズと願望に即した患者中心の医療が望まれる. それを実現するためにはまずチーム医療体制における必要な職種や人員の配置, まとめ役や調整役を据えた民主的な運営のもとでカンファレンスや症例検討会, 勉強会を重ね複数職種の相互理解が必要と考えられる.