著者
中村 俊太 近藤 岳 並木 美砂子
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.79-85, 2021-03-31

日本の動物園で単独飼育されているゾウは,国際的な飼育基準から動物福祉上の問題を指摘されているが,アジアゾウを単独飼育している甲府市の動物園では,飼育環境を豊かにする試み(エンリッチメント)を継続している.本学動物園動物学研究室は,2018年から2020年にかけて卒業研究の一環で行動調査を継続してきたので,その成果を報告する.調査方法は直接観察により,分析は,エンリッチメント導入の前後期間で行動発現割合を比較することによった.その結果,鼻での操作・砂浴び・採食の発現割合が有意に増加し,常同行動・移動・立ち止まりの発現割合が有意に減少した.また,常同行動の発現割合を時間帯別に比較したところ,飼育者から直接的ケアを受けることも常同行動減少に効果的であることが示唆された.今後は,ケアの内容も含め,さまざまな行動レパートリーが増えるようなエンリッチメントの工夫に対する調査が必要である.