著者
岩沼 聡一朗 長見 真
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.49-60, 2022-03-31

体育授業では,疾病や忘れ物等を理由に,見学という形で授業に出席する場合がある.その際,見学者に対する教育的配慮は,授業者の幅広い裁量に委ねられている.見学者においても,学びの機会や運動・スポーツに関する発達の機会を保障する必要があると考えられる.しかし,体育授業における見学の実態は明らかとなっていない.本研究では,小学校・中学校・高等学校での体育授業における見学状況を把握することを目的とした.大学生に対して各校種での見学経験を振り返ってもらい,web フォームにて回答させた.得られた回答から定量的分析を行い,小学校・中学校・高等学校の体育授業における見学状況の全体像を検討した.その結果,体育授業における見学では,①校種や性,授業内容(領域)に関連して特徴的な傾向が見られること,②見学時の過ごし方が授業者主体で決められること,③見学の理由に個々の体育授業の好き・嫌いや評定が関連すること,が示された.
著者
中村 俊太 近藤 岳 並木 美砂子
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.79-85, 2021-03-31

日本の動物園で単独飼育されているゾウは,国際的な飼育基準から動物福祉上の問題を指摘されているが,アジアゾウを単独飼育している甲府市の動物園では,飼育環境を豊かにする試み(エンリッチメント)を継続している.本学動物園動物学研究室は,2018年から2020年にかけて卒業研究の一環で行動調査を継続してきたので,その成果を報告する.調査方法は直接観察により,分析は,エンリッチメント導入の前後期間で行動発現割合を比較することによった.その結果,鼻での操作・砂浴び・採食の発現割合が有意に増加し,常同行動・移動・立ち止まりの発現割合が有意に減少した.また,常同行動の発現割合を時間帯別に比較したところ,飼育者から直接的ケアを受けることも常同行動減少に効果的であることが示唆された.今後は,ケアの内容も含め,さまざまな行動レパートリーが増えるようなエンリッチメントの工夫に対する調査が必要である.
著者
小西 瑛子
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.11-19, 2019-03-30

本研究の出発点は,英語を不得意とする大学生の特徴を明らかにし,教育に生かしたいと考えたことである.これまで,英語を不得意とする大学生に関して,いくつか調査を行った.例えば,品詞の習得に関しては,名詞の習得が不十分であると判明した.ただし,これは高校生(上‐下位レベル)においても同様で (Konishi,2014),大学生特有の特徴は見出せなかった.更に,reading 力と語彙の関係は,統計的に有意だが弱いと判明した(N =59,r = .271,p < .05).前述の状態を踏まえたうえで,本研究ではlistening力とreading力の関係が数値的にどのようなバランスをとっているのかを焦点とした.先行研究によれば,TOEIC系のテストにおいては,listening がreading の得点を多くの場合上回っている.これは英語を不得意とする学習者にも当てはまるのかと疑念を抱いたからである.使用テストはTOEIC Bridge の公式問題集(100 点満点).Listening が3部,reading が2部,計5部構成の,約60 分のテストである.本研究の対象として,使用したテストの得点が50点以下の学生を85名抽出した.全体平均は45.64,listening力の平均は26.74,reading力の平均は18.89であった.Listening力がreading力を上回り,先行研究を踏襲した結果となった.この結果をt 検定にかけた結果,t(84)= 13.03,p < .01 となり,listening 力がreading 力を統計的に有意に上回っていることが判明した.また,両者の相関はr= -.401,p < .01となり,負の相関が有意に認められた.さらに,スピアマンの順位相関係数を求めたところ,r= -.468,p < .01となり,負の相関が確認された.つまり両者の関係はバランスがとれておらず不安定なものであるといえる.その結果を受け,授業では学習者に有利な評価を行うことにした.