著者
稲村 泰弘 中村 充孝 新井 正敏
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.319-324, 2016-07-15 (Released:2016-07-15)
参考文献数
12

一般にガラスやアモルファスと呼ばれる構造的に無秩序な物質は,比熱や熱伝導率といった熱輸送現象において低温領域で結晶とは異なる性質を普遍的に持つことが知られている。これらの熱的物性は,中性子非弾性散乱実験やラマン散乱実験で観測されるBoson Peakと呼ばれる低エネルギー励起と直接関連付けられる。また,中性子非弾性散乱実験で得られる振動状態密度は,普遍的低温熱物性に対する2準位系理論モデルの正当性を支持する。
著者
中村 充孝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.93-99, 2017

<p>粉末試料や非晶質などといった等方的試料のダイナミクスを研究対象とする場合,チョッパー分光器による中性子非弾性散乱測定は,定常炉の三軸分光器と比較して圧倒的な優位性を示す。特異な物性を発現する新規物質を発見した場合,研究の初期段階にあっては,単結晶を育成することができず,粉末試料しか得られないことも多いが,J-PARCの強力なパルス中性子ビームを用いることで,早々とダイナミクスに関する研究を展開することが可能である。すでにJ-PARCで稼働中の3台のチョッパー分光器は,今もなお装置高度化や新規解析手法の開発を継続しており,今後,革新的な研究成果を創出しうるポテンシャルを十分備えている。</p>