- 著者
-
松本 義信
津﨑 智之
中村 博範
宮田 富弘
小野 章史
- 雑誌
- 川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.413-421, 2019
低糖質食は肥満あるいは糖尿病などの生活習慣病の予防・改善に対する栄養素等の摂取方法として用いられているが,最近では健康な人のダイエット法として注目されている.しかし,低糖質食は糖質摂取を抑えるかわりに,たんぱく質ならびに脂質のどちらか,あるいはそれらの両方が過剰摂取につながりやすいと考えられる.本研究では動物モデルを用いて低糖質食を摂取した時の成長および生体内代謝に及ぼす影響について比較検討した.実験ではSD系雄性ラット3週齢を用い,一般的な食餌(コントロール食群),あるいはたんぱく質30.0%(w/w),脂質50.0%(w/w)の食餌(30%たんぱく質群),またはたんぱく質40.0%(w/w),脂質40.0%(w/w)の食餌(40%たんぱく質群)の2種類の低糖質食いずれかを10週間与えた.その結果,食餌摂取量はコントロール群に比べて低糖質食を与えた群で有意に低値となったが,エネルギー摂取量,ならびに実験終了時の体重に有意差を認めなかった.血清トリグリセライド濃度はコントロール群に比べて低糖質食群で有意に低値を示した.血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)はいずれ も40%たんぱく質群で他の2群より高値を示し,ASTの差は有意であった.肝臓脂質量はコントロール群に比べて低糖質食群で高値となり,40%たんぱく質群との差は有意であった.以上,本研究では低糖質食摂取により肝臓に脂質が蓄積するとともに肝臓代謝機能が低下したことが示唆された.