著者
平田 圭 増田 利隆 松本 義信 長尾 光城 長尾 憲樹 松枝 秀二 守田 哲朗
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.341-345, 2000

運動を行う時間帯の違いが脂肪燃焼に与える影響について明らかにすることを目的として検討を行った.1.静脈血および指頭血の血中遊離脂肪酸(FFA)濃度の関係について被験者は, 健康な一般成人女性20名(平均年齢21.7±0.9歳)とした.早朝空腹時, 座位安静状態において静脈血, 指頭血の順に採血を行い, 血中FFA濃度を測定した.全被験者の静脈血FFAおよび指頭血FFAの間に有意な正の相関(r=0.813,p<0.001)が認められ, 血中FFA濃度の定量が指頭から採取した血液で可能であることが明らかとなった.2.空腹時および朝食・昼食摂取2時間後の運動中の呼吸商(RQ)および血液性状の変化被験者は, 健康な一般成人女性5名とした.運動は自転車エルゴメータを用い, 60%VO_<2max>の運動強度で30分間行った.運動実施時刻は, 空腹時9 : 00a.m.(空腹時運動群), 朝食摂取2時間後(朝食後運動群), および昼食摂取2時間後(昼食後運動群)の3回とした.運動中の酸素摂取量(V0_2), 呼吸商(RQ)を測定した.採血は安静時(0分), 運動開始20分後, 25分後, 30分後の計4回行い, 血糖値, 乳酸値, 血中FFA濃度を測定した.空腹時運動群のRQは運動開始20分値, 25分値がそれぞれo.83±0.13,0.84±0.12であり3詳聞で最も低値を示した.しかし, 運動開始30分後では昼食後運動群が空腹時運動群と同じ値となった.空腹時運動群の血中FFA濃度は運動中に増加傾向を示した.昼食後運動群の血中FFA濃度は安静時(0分)において朝食後運動群より低値であったが, 運動開始後増加し, 30分後には朝食後運動群より高値となった.以上の結果から, 空腹時, 朝食摂取2時間後, 昼食摂取2時間後の3条件において30分間運動を実施する場合, 昼食摂取2時間後における運動開始30分後に空腹時と同様に脂肪燃焼が亢進することが明らかとなった.
著者
金光 義弘
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-18, 1997

本論文では実験已・理学者のM.EP.Seligmanによって提唱された学習性無力感(LearnedHelplessness)理論に関する再考察をし, 今後の適用性についての展望を試みる.主なトピックは4点で, 以下の通りである.(1)学習性無力感理論の実験 : 的検証.(2)学習性無力感理論の理論的背景の再検討.(3)学習性無力感理論の意義についての考察.(4)学習性無力感理論の適用可能性の吟味.本論ではLearnedHelplessnessの概念および理論の重要性を認識したうえで, 学習性無力感現象が生起するための三つの必要条件を指摘する.その第1条件は, 生活体が回避不可能な嫌悪刺激を与えられて, 無力感(helplessness)を知覚する状況であること.第2の条件は, 生活体が行動と結果の間の非随伴性(noncontingency)の認知を獲得する過程があること.第3の条件は, 統制不能性(uncontrollability)の期待によって動機づけレベルが低下すること, である.最後に, 学習性無力感の原形(オリジナル学習性無力感)理論こそ, 人間の精神的および行動的異常の問題に対する適用において, 妥当性と有効性が認められることを主張する.
著者
笹野 友寿 塚原 貴子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-53, 1998-06

看護大学生56名を対象として, 機能不全家族とアダルト・チルドレンの関係について調査した.機能不全家族尺度(DF尺度)とアダルト・チルドレン尺度(AC尺度)の間には, 有意な正の相関が認められた.DF尺度で特に注目すべき項目は, 「期待が大きすぎて何をやっても期待にそえない家庭」「他人の目を気にする表面だけ良い家庭」「嫁姑の仲が悪い家庭」であった.また, AC尺度で特に注目すべき項目は, 「私は常に承認と称賛を求めている」「私は過剰に責任を持ったり過剰に無責任になったりする」「私は衝動的である」であった.そして, データを解析した結果, 大学生の精神保健活動において, DF得点が4点以上で, AC得点が12点以上の者については, アダルト・チルドレンを念頭に置いて, 精神科医または臨床心理士が面接することが望ましいと思われた.なお, アダルト・チルドレンのACODとACOAの間には, 異種性が存在する可能性が示唆された.
著者
深井 喜代子 小野 和美 田中 美穂 關戸 啓子 新見 明子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.125-135, 1997
被引用文献数
1

人間関係が異なる複数の被験者群において, 痛みの感受性と痛み反応, 看護ケアの鎮痛効果がどのように相違するか, またそれらに性差はあるかを検討した.被験者は健康な大学生30名で, 実験者と既知の女子7名(A群), 初対面の女子12名(B群), 初対面の男子11名(C群)の3群に分けられた.ベッド臥床した被験者の心電図, 局所発汗量, 皮膚温を測定した.看護ケアとして温罨法, 冷罨法, マッサージ, 音楽療法, 会話に代わるものとしての連想ゲームの5種類を用いた.VisualAnalogueScale(VAS)で70〜80の強さに電圧を固定して電気刺激を行い, 実験中痛みをVASで表現させた.その結果, 耐痛閾値は男性が高いこと, 痛みの評価と痛み反応は男性においてのみ皮下脂肪率と関係すること, さらに, ケア毎の鎮痛効果は対人関係の程度に関係することが明らかになった.
著者
梶原 直美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.11-20, 2014

「スピリチュアルケア」が耳慣れた用語となって久しい.WHOでは健康理解としてそれまでの身 体的,精神的,社会的に留まらず,霊的という言葉も加える議論がなされたことはよく知られている. この場合の霊的とは何を指すのか.スピリチュアリティに関する研究は近年盛んになりつつあり,様々 な定義づけが提示されている.本稿は,実践的な様々な現場でのケアを前提に,スピリチュアリティ の語源を,その背景にあるキリスト教に求め,旧約聖書に遡って文脈や語義の分析を行い,意味を問 うた.その結果,以下のことが明らかとなった. 1 .スピリットに相当するヘブライ語のルーアハは始原のエネルギーであり,神との関わりのなかで, 神に従って,完全に新しい世界さえ作り出すダイナミズムを有するものであった. 2 .物質で造られた体に,スピリットと同様の性質を持つ神の命の息ネシャマーが入れられたことで, 人は自分の命を生きる存在となった. 3 .魂とは,体も含め,命を吹き込まれて生きることとなったその人の全存在を指す. 4.人間も動物も,神から命の息を与えられた生命体である. 5.スピリチュアリティはすでに内在するものであり,人の存在を根底から支えている. われわれ人間が超越者なる神との関わりのなかでスピリチュアルな存在とされたように,互いの関 わりにおいてもまたその同じもので繋がっていけるということは,スピリチュアルケアを実践するさいに,安心と希望を与えるのではないだろうか.
著者
"高尾 堅司"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.621-626, 2006

"本稿は,新聞等報道で示された野球が被災地において果たす役割について報告する.1959年に伊勢湾台風雨に見舞われた名古屋市を本拠地とするプロ野球チーム(中日ドラゴンズ)は,主催ゲームの利益の一部を義援金として寄附した.1995年に阪神・淡路大震災に見舞われた神戸市を本拠地としていたオリックス・ブルーウェーブは,イベント等で被災者と触れ合うとともに,リーグ制覇という形で市民を励ました.同球団の優勝は,新聞等の報道で神戸市の復興と関連づけて報じられた.また,同年に高校野球が実施されたことに対しても,被災地の復興を象徴するものとして新聞に取り上げられた.2004年,福井豪雨に見舞われた福井市においては,被災地の高校野球部の全国大会出場と,甚大な被害を受けた地区のリトルリーグの活躍が,被災地を勇気づけるものとして新聞にとりあげられた.以上の事例は,被災地における野球チームの活躍は被災地の復興の象徴であり,被災者を勇気付けるものとして取り上げられることを示している."
著者
李 永喜 小河 孝則 田口 豊郁
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.75-89, 2008

市民による福祉ボランティア活動は,新しい地域社会を形成しうるとして高い関心を集めている.行政は福祉ボランティアに対して政策的に組み入れようとしてきた.95年の阪神・淡路大震災を契機にボランティアやNPOの機能や役割に関心が広まり,公的介護保険制度の導入,特定非営利活動促進法の施行以降それらの市民活動と行政のパートナーシップが強調されるようになった.しかし,行政と民間との「協働」「パートナーシップ」はNPOや法人に関心が傾いているようにみうけられる.多くのボランティア団体は法人格を持たない任意団体として活動しているために,社会的に信用が乏しく財政の不足が課題となっている.そこで本研究は福祉ボランティア団体・組織の立ち上げに基金支援している「A市の地域福祉基金」の運営に注目した.福祉ボランティアの大きな特徴である「自発性・主体性」に関心を持ち,行政による支援の意義についてA市基金運営委員会における参与観察を行いつつ,過去に基金助成を受けていた全団体(41団体)と現在基金助成を受けている14団体を対象にアンケ-ト調査を行い考察した.その結果,基金助成終了後92.6%の団体が会員の会費やバザ-の収益金,町内会や社会福祉協議会の助成金などで資金を調達し確実に活動を続けていることがわかった.福祉ボランティア団体は資金不足と人材不足の悩みを抱えているが,基金助成を受けることによって90%の団体が自分たちの活動が社会的に認められたと認識し,活動への意欲が高まったといっている.ここに行政による支援の意義があるといえるのである.ボランティア活動を持続していくためには,団体・組織内におけるミッション・ディスカッションを行うことが必要であるといえる.福祉ボランティアに対する行政の役割としては,資金的支援やPRの工夫と実践,福祉ボランティア団体と地域の福祉問題解決に向けて共通目標を確認し合える「情報共有の機会・場」を設けること,があげられる.
著者
"關戸 啓子 深井 喜代子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-80, 2004
被引用文献数
3

"欠食による空腹が,疲労の自覚症状に及ぼす影響を把握するために看護学生にアンケート調査を実施した.疲労の自覚症状調査は,午前中の授業の形式が,講義のみの日,演習(講義と実習)の日,実習のみの日を選んで,3日間実施した.調査用紙は58人に配付し,53人から提出があった.有効回答数は51(有効回答率96.2%)であった.調査の結果,講義のみの日に朝食を摂取していた学生は42人で,「あくびがでる」「眠い」「目がつかれる」「横になりたい」「頭がぼんやりする」「全身がだるい」という6項目において,授業後有意(p<0.05)に自覚症状が増強していた.朝食を摂取していなかった9人には,授業後増強した自覚症状はなかった.演習の日に,朝食を摂取していた学生は40人で,授業後増強した自覚症状はなかった.朝食を摂取していなかった11人にも,授業後増強した自覚症状はなかった.実習のみの日に,朝食を摂取していた学生は38人で,授業後「目がつかれる」という自覚症状のみが増強傾向を示した.朝食を摂取していなかった13人には,授業後「気がちる」「いらいらする」という自覚症状に増強傾向がみられた.学生が朝食を摂取している場合には,長時間座って講義を聞いている方が苦痛を感じており,自覚症状が増強していた.しかし,朝食を摂取していない場合には,よりエネルギーを消費する実習の授業の時に空腹の影響がみられ,精神的に授業に集中できなくなっている様子が示唆された."
著者
三上 史哲 宮崎 仁
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.115-128, 2017

近年,国際生活機能分類(ICF)の意義や活用の重要さは認識されてきたが,構造の複雑さや項目 数の多さ(全1,457項目),用語の難しさ,全体像の理解の難しさなどから,実践的活用までに至って いないといえる.本研究では ICF の実践的な活用を目指し,その第一歩として適切なコード化を促 す支援システムを作成し,その活用例を示した.支援システムは ICF をインターネットを介して閲 覧,検索可能とする Web システムとした.ICF 検索機能としては Google 検索エンジンのサイト内検 索を利用し,多くのユーザが見慣れた検索結果を得ることが可能となった.さらに,Yahoo 形態素解 析(WebAPI)を利用し,文章による検索を可能とした.類義語に関しては,形態素解析で分割され たキーワードに対する類語辞典へのリンクを表示し,容易に再検索できるようにした.このシステム の活用例として,①日本広範小児リハ評価セット,②居宅サービス評価票,③要介護認定調査票,④ 重症児チェックリスト,⑤障害程度区分,⑥認知症アセスメント,⑦機能的自立度評価表の各評価項 目を ICF コード化した.全生活機能評価票の分析対象項目は,合計で291件あった.コーディングし たデータを評価票ごとに集計し,頻度分布図を作成したところ,評価内容が心身機能「b」を中心に したものと活動・参加「d」を中心にしたものに分かれることが示唆された.そこで,評価票間のコー ド(質問項目)の類似度をクラスタ分析を用いて確認したところ,日常生活動作を中心に調査を行っ ている評価票と高齢者を対象とした調査の分類があることが示唆された.新しい評価票を作成した際 に,同様の分析を行えば類似度の高い評価票を確認することができる.この活用例では,既存の評価 票を ICF コード化し,類似の評価票を分類することで,新しい評価票を作成する際により完成度を 高めるための一つの方法を示すことができたと考える.
著者
奥山 清子 花谷 香津世 板野 美佐子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.75-80, 1994

障害児が健常児と同じ精神年齢である場合, 健常児の発達の型にみられるような同じ遊びのパターンを示すかどうかを明らかにするため, 障害児の精神年齢とほぼ同じ生活年齢の健常児を対象として対人行動を観察し比較検討した.遊びの中で見られる対人行動の現れ方, スタイルは障害児と健常児とでは異なっていた.健常児の場合, 自由な遊び場面においては, 1歳児から2歳児の間に, 孤立的行動や傍観的行動は減少し, 代わりに平行的行動や集団的行動の増加が見られることが明らかとなった.障害児の場合, 孤立的行動が多いのがその特徴であるが, 集団生活の経験が増すにつれ孤立的行動は減少し, 傍観的行動や平行的行動は増加した.集団的行動の内容を検討して見ると障害児も, 健常児も同じ比率で, 自らかかわる行動が増加していた.保育園の自由な遊び場面において, 遊びへの自発的かかわりという内的な転換が認められた.障害児の社会的学習効果の視点からも, 保育園での統合保育の果たす役割は重要な意味を持つと考えられる.
著者
佐藤 麻衣
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.129-136, 2013

日本語を解さない外国人が日本で罪を犯した場合,言葉を仲介する通訳人を要する.裁判では,関係する人々の感情がうごめく.本稿では,裁判という非日常的な環境において,通訳に従事する「司 法通訳人」がどのように感情をコントロールしているのか,またどのような感情の表出を求められて いるのかについて言及するものである.言い換えれば,司法通訳人の「感情の操作性」に関する探究 である.そこで,長尾氏が提示した「司法通訳人の職業倫理」と感情労働の判明事項といえる「感情労働の 一般原理」(内包的概念と根本的11要因)との照合により,司法通訳人の感情労働について明示する. それにより,司法通訳人独自の感情労働,すなわち,自身の感情を抑制することで,法廷で「透明人 間」(渡辺氏の比喩的表現)として振る舞う司法通訳人の感情労働が明らかとなった.したがって本稿は,職業倫理から捉えた,司法通訳人の感情労働に関する考察である.
著者
武内 陽子 飯田 淳子 長崎 和則
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.150-158, 2017

本稿は,精神障害者と支援者,家族,ピア,地域住民など多様な周囲の人々との関係に関する先行研究を検討したものである.その結果,精神障害者と周囲の人々に関する研究の傾向は,支援者と精 神障害者との関係を明らかにするものが圧倒的に多く,その中でも,支援者の視点から考察するもの が多く見られた.従来は役割関係や関係の性質に関する量的な研究が多く行われていたが,近年では, 関係の質を問う研究や当事者を主体とした関係,地域住民との関係など多様な関係のあり方に関する 研究が行われていた.精神障害者と周囲の人々との関係に関する各研究は,精神障害者支援の変遷と も大きく関わっていると考える.治安対策や医療的な精神障害者の処遇が中心の時代は,専門家主導 で精神障害者支援が行われることが当然であった.しかし,現在の精神障害者支援では当事者が主体 的に支援を決定し,支援者とともに課題を解決する協働者として捉えられている.それに伴い,支援 者主体から当事者を主体とした関係や家族,ピア,地域住民との関係に焦点が移ってきたと考える. しかし,未だ地域住民との関係に関する研究は限りなく少ない.そのため,支援関係以外の関係を含 めた周囲の人々との関係が実際にどのようなものであるか,精神障害者本人の視点に立って具体的に 示していくような研究も,今後,蓄積される必要があると考える.This paper examines the studies on the relationships between the mentally handicapped and those surrounding them, such as health professionals, family, peers and others living in their vicinity. It was found that the majority of research focused on the relationships between the mentally handicapped and the health professionals who support them, including a large amount of research from the viewpoint of the health professionals. Until recent years, most research was quantitative in nature, and focused on the specific roles of each party involved. However, current research tends to focus more on the quality of relationships, positioning mentally handicapped persons at the center of inquiry. More emphasis is also being placed on interactions with the wider community. It is worth noting that studies on the relationship between the mentally handicapped and their community is still severely lacking. Research is greatly necessary into how the mentally handicapped view their relationships not only with health professionals but also with members of the community.
著者
大島 埴生 飯田 淳子 長崎 和則
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2-1, pp.247-258, 2018

本稿は,中途障害者の生活の再編成に関する先行研究を検討したものである.先行研究は,(1)直 接的な援助を想定した援助志向の研究と,(2)当事者の生活をありのままに理解しようとする,当事 者の生活に焦点を当てた研究,(3)両者のいずれにも属さない,障害と社会の関係を問う社会モデル に基づく研究に大別された.さらに,援助志向の研究は医学モデルと生活モデルに基づく研究があっ た.医学モデルに基づく研究は中途障害者の生活の再編成を個人の問題として,生活モデルに基づく 研究は個人と環境を含めた問題として,そして社会モデルに基づく研究は社会の問題として捉えてい る.当事者の生活に焦点を当てた研究は,インペアメントに伴う体験に関する研究と個人史に着目し た研究があり,前者は短期的な生活を,後者は中長期的な人生を扱う傾向がある.これらの先行研究 の課題としては,第一に一部の中途障害の研究で社会モデルの観点がほとんど採用されていない点, 第二に研究対象者が豊富な語りをもつ人に限定されている点,第三に短期的な生活と中長期的な人生 の関係性が捉えにくい点がある.今後はこれらの課題を踏まえ,語りの聴き取りのみならず,生活の 観察も行うことにより,従来の研究の俎上に上がってこない人々の体験を,社会的状況と人生史の文 脈のなかで考察し,中途障害者の生活の再編成過程を描写していくような研究が求められる.
著者
藤若 恵美 進藤 貴子 永田 博
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.351-357, 2010

本研究の目的は,祖父母との親密性と介護経験の両面から孫世代である大学生の介護観を検討すること,そして,孫世代が介護を実際にどの程度担うことができると考えているのかを介助に対する自信によって測定し,介護場面での孫世代の役割について検討することであった.その結果,祖父母との親密性が高い孫世代は,親密性の低い孫世代よりも家族介護意識と社会的介護意識の両方が高く,家族介護にとどまらず,介護を支援する社会資源にも目をむけていた.祖父母との親密性と介護経験の交互作用はいずれの介護意識においても認められなかった.また,孫世代は現時点で間接的な介助を行う自信があることが示され,介護場面において孫世代が重要な存在となり得ることが示唆された.
著者
"高見 千恵 忠津 佐和代 水子 学"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.343-351, 2008

"本研究の目的は,介護保険サービスにおけるアウトカム指標としてのサービス満足度の評価尺度を開発する前段階として,設問項目の内容の信頼性,妥当性を検討することである.研究方法は,質問紙調査であり,対象は高齢者支援センター18ヶ所に併設されている訪問看護ステーション,デイケアセンター,デイサービスセンター,ヘルパーステーションで介護保険サービスを利用している325人である.分析方法では,測定尺度としての構成概念妥当性を検証するため探索的因子分析と信頼性を確認するため信頼性分析(Cronbachのα係数を算出)を実施した.探索的因子分析の結果,サービス満足度は「ケアマネジャーの対応」,「サービスのアウトカム」,「サービス提供者への対応」,「サービスへの利用者ニード」,「サービスへの不満」の5因子で構成されていることが明らかとなった.また,信頼性分析の結果,各下位尺度のCronbachのα係数は「サービスへの不満」を除き,0.7以上であった.また,家族構成との関連性については,「ケアマネジャーの対応」と「サービス提供者への対応」に有意な差が認められ,「1人暮らし」は「2世代同居」「夫婦のみ」よりも低かった.以上より,介護保険制度におけるケアマネジメントによって提供されたサービスの満足度を評価する測定用具として許容できる信頼性,妥当性を持つことが示された."
著者
福本 安甫 田中 睦英 押川 武志
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.433-438, 2009

高齢者139名を対象に,高齢者意識に関する15項目の質問とQOL評価を行い,高齢者の主観的高齢感とQOLの関係を検討した.日常生活が自立した在宅高齢者の場合は,高齢者であるという意識は少ない傾向にある.高齢感は年齢や性別より「感じ方」の影響が大きく,最大の要因は病気にかかる頻度とそれに対する心配にあるといえ,罹患の頻度が多くなるほど,高齢感が増大する可能性を示唆した.高齢者意識が高いほどQOLが低下する傾向にあり,高齢者自身が高齢者という用語に対して「マイナスイメージ」を持っていることが示唆された.また,高齢感は過去の自分や他者との比較の中から感じ取られる可能性が示唆された.高齢者意識とQOLとの関連において,高齢感が弱い場合は「生活のハリ」「心理的安定感」「積極的外出」などが関連し,高齢感が強い場合は「幸福感」「ゆとり感」「趣味などの楽しみ機会」などに関連することがわかった.これらの関係は,自己受容或いは自己効力感の作用と考えられたが,今後の検討課題となった.これらの結果から,高齢感の変化とQOLの視点をもった予防医学の展開が重要と考えられた.
著者
藤井 俊子 角南 重夫
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.129-136, 1994

1985年と1990年の性・都道府県別肺がんの標準化死亡比(SMR)と各SMRの調査年より6年前, 11年前の食物要因(一人当たり, 一月当たりの消費量)との関係について調べた.1985,1990年の性・都道府県別肺がんSMRと項目(食物要因)との関係で男女ともに有意の正相関が認められたのは副食費, パン類, 肉類, 乳卵類, 牛肉, 鶏卵, コーヒーの7項目, 女性のSMRと有意の正相関が認められたのは食料費, 主食費, 野菜類, 乾物・海草類, 飲料費, 鶏肉, ハム, ソーセージ, 干しいたけ, 他の乾物・海草の10項目であった.男女ともに有意の負相関が認められたのは学校給費1項目で, 男性のSMRと有意の負相関が認められたのは嗜好食品, 菓子類, 果物類, 緑茶の4項目, 女性のSMRと有意の負相関が認められたのは食塩と清酒の2項目であった.この成績から, 最近のわが国の肺がん死亡率の都道府県別格差と関連のある食物要因は肉類, 乳卵類, 牛肉, 鶏卵, コーヒーなどであることを認めた.
著者
菊井 和子 竹田 恵子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.63-70, 2000-06-26

エリザベス・キュブラー・ロスの名著「死ぬ瞬間」(1969年)がわが国に導入されて以後, 死にゆく患者の心理過程はターミナルケアにあたる医療職者にとっても社会全体にとっても重要な課題となった.なかでもその最終段階である"死の受容"についての関心が高まった.キュブラー・ロスは"死の受容"を"長かった人生の最終段階"で, 痛みも去り, 闘争も終り, 感情も殆ど喪失し, 患者はある種の安らぎをもってほとんど眠っている状態と説明しているが, わが国でいう"死の受容"はもっと力強く肯定的な意味をもっている.患者の闘病記・遺稿集およびターミナルケアに関わる健康専門職者の記録からわが国の死の受容に強い影響を及ぼしたと考えられる数編を選び, その記述を検討した結果, 4つの死の受容に関する構成要素が確認された.つまり, 1)自己の死が近いという自覚, 2)自己実現のための意欲的な行動, 3)死との和解, および4)残される者への別離と感謝の言葉, である.わが国における"死の受容"とは, 人生の発達の最終段階における人間の成熟した肯定的で力強い生活行動を言い, 達成感, 満足感, 幸福感を伴い, 死にゆく者と看取るものの協働作業で達成する.
著者
田淵 創
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.123-127, 1999-06-25
著者
平野 聖
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.481-493, 2011

昭和後期は我が国扇風機の成熟期に相当し,普及率が伸び悩む状態となった時代である.三菱電機において市場を喚起する役割を担ったのが,「扇風機のコンパクト化」に関する提案であった.扇風機を分解梱包し,使用しない時にはコンパクトに保管できるアイデアを「コンパック」とネーミングし消費者に大いにアピールした.扇風機本体の形状を変化させる工夫を施しさらにコンパクトにするアイデアは継続的に研究され,「オレオレ」として花開く.他社がスイッチ部の電子コントロール等の開発に血道を上げている間に,同社はダイナミックな外観の変化を優先することにより差異化を図った.昭和末期には頭部後半部に突出部を持たない「バックレスファン」を登場させ,それまでの扇風機の概念を覆すスマートな外観を実現した.ただし,それ以降は扇風機製造の拠点をタイに移し,技術開発及びドラスチックな新規デザイン開発が段々と行われなくなる.