著者
桜井 啓太 中村 又一
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.70-82, 2011-05-31

2005年度より全国の福祉事務所で「生活保護自立支援プログラム」が策定され,生活保護受給者に対する就労支援などの自立支援プログラムが実施されている.被保護世帯の「自立支援」が注目される反面,自立した被保護世帯の具体的な所得水準や生活状況については十分に研究がなされていない.筆者は大阪府内P市で2006〜2008年度に就労によって生活保護が廃止となった世帯(就労自立世帯)を対象に,廃止時の所得水準・雇用形態について調査を行った.本稿ではその調査結果を基に「国民生活基礎調査」「就業構造基本調査」との比較分析を行った.その結果,(1)低所得と非正規雇用によってワーキングプア化する生活保護「自立」者の存在と(2)自立後も乏しい他の社会保障給付に頼らざるを得ない世帯の現状という2点が明らかになった.