著者
中村 大地
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

ブロックチェーンとは2009年サトシ・ナカモトによって提案された改竄が困難な元帳を作成する分散型元帳技術である。ブロックチェーンを活用した技術の代表例として仮想通貨「bitcoin」が存在する。しかし、「bitcoin」は取引をブロックチェーンに記録する際に、一度記録されてからチェーンが数ブロック伸びるまで待つ必要があり、単位時間当たりに処理できる取引数に限界がある。これをスケーラビリティ問題と呼ぶ。ライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題を解決するための方法として2016年にJosephらによって提案された。ライトニングネットワークは、ユーザとユーザ間を繋ぐマイクロペイメントチャネルで構成されている。ライトニングネットワークにおいて、どのユーザ、あるいはどのチャネルを経由して目的のユーザに送金を行うかを決定するのがライトニングネットワークのルーティング問題である。本研究ではルーティングアルゴリズム[Flare]を実装して性能測定、およびライトニングネットワークのルーティング問題に対して、ユーザが自分の利益を最大化するために周囲のノードと協力することを考え、ルーティングアルゴリズムの拡張を行った。 [Flare]は、2016年にPavelらによって提案されたライトニングネットワークのルーティングアルゴリズムである。Flareでは各ノードはネットワークにおける自身の近隣の情報しか所有しておらず、周囲のノードに近隣情報を要求していくことで目的のノードへのパスを発見する。このとき、支払いの中継を行ったノードは送金者から手数料として利益を得ることができる。 このアルゴリズムにおいて、一部のユーザが協力することで互いの利益を最大化しようとする場合を考える。ネットワーク上に存在するユーザの中で、中継ノードとして利用される確率の高いユーザを選択し、そのユーザ同士で互いにチャネルを持ち合うグループを作成する。チャネルを持ち合うことで、グループのメンバ1人でも近隣情報を要求されれば、グループの全ユーザが探索領域に入るようになり、中継ノードとして使用されやすくすることでお互いの利益を最大化しようとする。このようなユーザのグループを作成することで、アルゴリズムの性能、ユーザが得られる利益がどう変化するかを調査した。結果、グループを作成することで、メンバが得る利益と他のノードがパスを発見できる確率を増加させることに成功した。