著者
中村 好和 桜井 泰憲
出版者
水産庁北海道区水産研究所
雑誌
北海道区水産研究所研究報告 (ISSN:05132541)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p1-7, 1990-03
被引用文献数
2

1988年6月に北海道松前沖で釣獲されたスルメイカ(外套背長13~20cm)を,北海道大学水産学部付属臼尻水産実験所内の水槽(容量12トン,1個)で29日間飼育し,その間に平衡石にマークを付けるための処理を合計4回行った。その処理はテトラサイクリン塩酸塩または塩化ストロンチウムの溶液に浸したスケトウダラ幼魚を,それぞれ2回14日間の間隔で投餌することによった。テトラサイクリンによるマークは,紫外線照射下で,研磨した平衡石の周縁部に1つの帯状として観察された。テトラサイクリンによるマークの開始位置から平衡石外縁までの輪紋数は,4個体で数えることができ,それぞれ18,21,21,23本であった。テトラサイクリンを加えた餌を最初に与えた日から飼育終了までの経過日数は20日間であった。計数した輪紋数が経過日数に近かったことは,スルメイカ平衡石に日周期的な輪紋形成が存在することを示唆した。平衡石研磨標本において,ストロンチウムによるマークは検出されなかった。