著者
堀 成夫 飯泉 仁
出版者
水産庁北海道区水産研究所
雑誌
北海道区水産研究所研究報告 (ISSN:05132541)
巻号頁・発行日
no.61, pp.27-53, 1997-03
被引用文献数
1

忍路湾の潮間帯~水深5m付近における底生生物相調査の過程で、以下の13種のトウガタガイ科貝類が採集された。Odostomia desimana Dall and Bartsch, 1906クチキレガイモドキ、O. tenera A. Adams, 1860スカシクチキレガイモドキ、O. cf. kizakiensis Yokoyama, 1922, O. cf. toneana Yokoyama, 1922, Chrysallida pseudalveata Nomura, 1936ムシロイトカケクチキレガイ、C. ultralaeta (Nomura, 1936)カワリイトカケギリガイ、Miralda scitula (A. Adams, 1860)ハチマキクチキレガイ(新称)、M. neofelixoides (Nomura, 1936)トウダカチリメンクチキレガイ、Phasianema lirata (A. Adams, 1860)ツトクチキレガイ、Turbonilla yoritomoi Nomura, 1938イソイトカケギリガイ、Cingulina cingulata (Dunker, 1860)ヨコイトカケギリガイ、C. terebra (Dunker, 1860)ヨコイトカケギリガイダマシ、Syrnola taeniata (A. Adams, 1863)スジイリクリムシクチキレガイ。これらの内、コイトカケギリガイ以外は北海道新記録種である。また、各種の生物地理学的見地から、忍路湾潮間帯付近のトウガタガイ類相が主に温帯性種から構成され、わずかに北方系および熱帯性種が混在していることが分かった。
著者
伊藤 博
出版者
水産庁北海道区水産研究所
雑誌
北海道区水産研究所研究報告 (ISSN:05132541)
巻号頁・発行日
no.61, pp.55-64, 1997-03

北海道根室湾沿岸で春季に採取したウバガイPseudocardium sybillaeの消化管内容物を調べた。体重に対する胃内容物の割合は殻長が大きくなると増えた。胃と腸の内容物にみられたプランクトンは、珪藻綱の中心目と羽状目、黄色鞭毛藻綱の珪質鞭毛藻目、渦鞭毛藻綱のペリディニウム目、繊毛虫綱の有鐘目の各種、および藍藻類、線虫類、多毛類、甲殻類だった。消化管内のプランクトンと海水中のネットプランクトンとの符合は部分的に認められた。いっぽう、Melosira sulcataなどの底生性珪藻はネットプランクトン中に少なかったが、消化管内に多く出現した。これは沿岸性の二枚貝類が攪乱で再懸濁した餌料粒子を利用することを示唆している。
著者
中村 好和 桜井 泰憲
出版者
水産庁北海道区水産研究所
雑誌
北海道区水産研究所研究報告 (ISSN:05132541)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p1-7, 1990-03
被引用文献数
2

1988年6月に北海道松前沖で釣獲されたスルメイカ(外套背長13~20cm)を,北海道大学水産学部付属臼尻水産実験所内の水槽(容量12トン,1個)で29日間飼育し,その間に平衡石にマークを付けるための処理を合計4回行った。その処理はテトラサイクリン塩酸塩または塩化ストロンチウムの溶液に浸したスケトウダラ幼魚を,それぞれ2回14日間の間隔で投餌することによった。テトラサイクリンによるマークは,紫外線照射下で,研磨した平衡石の周縁部に1つの帯状として観察された。テトラサイクリンによるマークの開始位置から平衡石外縁までの輪紋数は,4個体で数えることができ,それぞれ18,21,21,23本であった。テトラサイクリンを加えた餌を最初に与えた日から飼育終了までの経過日数は20日間であった。計数した輪紋数が経過日数に近かったことは,スルメイカ平衡石に日周期的な輪紋形成が存在することを示唆した。平衡石研磨標本において,ストロンチウムによるマークは検出されなかった。