著者
山内 洋一 生田 殉也 清水 貞宏 中村 政記
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.239-246, 1990 (Released:2007-02-20)
参考文献数
43
被引用文献数
2 1

塩酸dilazepの脳虚血モデルに対する影響を高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて検討した.SHRは4時間の両側総頸動脈結紮により,四肢の麻痺,正向反射の消失などの異常神経症状が見られた.血流を再開通させることにより,これらの神経症状はさらに悪化し,死亡する例も認められた.再開通1時間後の脳内水分含量は著明に増加し,Na含量の増加,K含量の低下を伴っていた.さらに,脳内脂質過酸化反応の指標として測定したchemiluminescence値は脳虚血4時間後では増加し,再開通15分後では一過性に急激に増加した.dilazep0.3~3mg/kg/hrは虚血中4時間の静脈内持続注入により,虚血中および再開通後の神経症状および再開通後の死亡に対して,用量依存的な抑制を示した.dilazep3mg/kg/hrは脳浮腫および脳内脂質過酸化反応を抑制した.以上,dilazepは虚血性脳血管障害にもとつく神経症状の改善効果および脳浮腫の抑制効果を示した.これらの作用機序として,脳内脂質過酸化反応の抑制が重要な役割を演じていることが示唆された.