著者
久保田 茂隆 中村 昭一
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.47-63, 2004-03-31

ITの急速な進展により,私たちの身の回りには,気が付かない所でコンピュータが活躍している。ユビキタス社会の到来がいわれるようになったが,予想以上に早く進み始めている。ユビキタス社会の特徴は, (1)いつでもどこでも必要な情報を入手できること (2)あらゆる「モノ」が情報の受発信を行う点にある。ユビキタス社会の実現のためには,統一された定義,概念のもとで基盤を整備し,システムを作っていかなければならない。ユビキタスは,Mark Weiser氏が提唱した概念であるが,東京大学の坂村健氏が提唱した「どこでもコンピュータ」と同じ概念である。ユビキタス社会では,私たちの生活も便利になるであろうが,インフラの整備に多額の投資が必要となり,また,多くの個人情報が集約される結果,プライバシー保護が大きな課題となる。0.3〜0.4mm角のICチップが,社会を変えていくことになる。ICチップ(ICタグ)は部品であり,これを実ビジネスでどう活用するかということが重要であり,システムとして価値が生まれる。旅行業界では,60社以上が参加する「手ぶら旅行」の実証実験や,貨物輸送,量販店での店員の効率的接客,その他多くの活用・実証実験が行われている。本稿では,現在のユビキタス・コンピューティングの概念をデバイス側やサーバー側からの考え方を紹介し,現状の研究機関・企業・政府の取り組みを明らかにして,技術的課題・問題点を抽出し,ユビキタス・コンピューティングを実現する為の環境・条件を明らかにすることを試みている。