著者
中村 眞樹子 竹中 万紀子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.243-249, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

数年~10年以上にわたり詳細で慎重な継続観察ができ,かつ長年変化しない特徴を明確に識別できた場合に限り,ハシボソガラスでは標識にたよらない身体的特徴などによる個体識別法は有効であることが示唆された.この方法による個体識別が正しいとすると,札幌で繁殖するハシボソガラスの中には一時的な1夫2妻が形成されることがあり,これらのトリオ形成は,必ず第1♀が数年間続けて繁殖に失敗したあとに起こった.第2♀の由来は,2例で近隣のテリトリーから移動してきた若い♀であり,1例の♀の由来は不明であった.2例で第1♀が消失または死亡してから第2♀が「本妻に昇格」した.これらのつがい関係で興味深いのは第1♀の繁殖力が低下または消失してもつがい関係を一定期間維持し続けることである.本調査の観察は,テリトリー内につがい以外の個体が許容されても必ずしもヘルパーではないこと示すものである.