著者
小川 宗一郎 濱川 俊朗 成尾 浩明 辛島 謙 中村 禎志
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】破傷風の治療は,原疾患の治療に加え痙攣のコントロールや鎮静などの全身管理が重要である.鎮静においてベンゾジアゼピン系薬物や塩酸モルヒネの大量投与で,良好な全身管理が出来たとの報告がある.また,筋弛緩薬は廃用性萎縮や症状評価が難しいという理由で使用しづらい点がある.今回破傷風患者に,筋弛緩薬を使用せず,大量のミダゾラム(MDZ)と塩酸モルヒネ(MOR)を併用し,良好な鎮静管理ができたので報告する.【臨床経過】60歳代の男性.嚥下困難感と後頸部の違和感を主訴に当院を受診した.受診1か月前に右中指の外傷歴があり,受診2日前より上記症状が出現した.受診時開口障害と後頸部硬直を認め,外傷歴と症状から破傷風と診断した.予防接種歴もなかったため破傷風トキソイド,抗破傷風人免疫グロブリン製剤,メトロニダゾールを投与した.ICUに収容し気管挿管後に人工呼吸器管理を開始した.また創部をデブリードマンし,開放創とした.入室後にMDZ:2500mg/日による鎮静を行っていたが,次第に刺激による頻回の後弓反張が出現した.そのため5日目よりMOR150mg/日+MDZ720mg/日で鎮静を行った.また,全身管理期間も長期になることが予想され,入室6日目に気管切開を行った.その後は硬直や痙攣症状なく,呼吸状態も安定していた. 8日目よりMDZを500mg/日,12日目にはMORを100mg/日に減量した.13日目に人工呼吸器からウィーニングを開始し,MDZを240mg/日に減量した.15日目にMORを90mg/日へ減量した.21日目に両下肢の痙攣が出現し,併用でデクスメデトミジン 5.1ml/時を開始したが,徐脈が出現したため翌日に中止した. 24日目に人工呼吸器離脱し, 25日目にMDZを終了した.その後,離脱症候の観点からMORは徐々に漸減し, 29日目に終了し,33日目でICU退室となった.退室後は嚥下機能訓練を行い,入院後約3か月で退院となった.【結果】今回の症例ではアルコール多飲歴によるベンゾジアゼピン系薬物への抵抗性が形成されており,MDZの鎮静効果が低かったと考えた.筋弛緩薬は筋の廃用性萎縮や症状評価の観点から使用しなかった.またデクスメデトミジンは徐脈が出現したため使用しなかった.鎮静薬の量はジアゼパム3400mg/日,モルヒネ 235mg/日と大量投与で良好な治療効果が得られたとの報告がある.筋弛緩薬を使用せず,大量のMORの併用とMDZにより鎮静を行い良好な鎮静管理とスムーズなウィーニングが可能であった.