著者
井口 広靖 平手 博之 長沼 愛友 関谷 憲晃 小笠原 治 上村 友二 星加 麻衣子 藤掛 数馬 太田 晴子 祖父江 和哉
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】ストレス心筋症の多くは典型的なたこつぼ型の左室壁運動を呈するが、約2割は非典型的な左室壁運動を呈し、逆たこつぼ型となるのは全体の2%程度である。一方、ギラン・バレー症候群とストレス心筋症の合併はまれである。今回、逆たこつぼ型心筋症を合併したギラン・バレー症候群の症例を経験した。【臨床経過】75歳の男性。発熱、下痢を主訴に他院受診、カンピロバクター腸炎と診断された。抗菌薬治療で速やかに改善したが、発熱から1週間後に両上肢の脱力が出現、翌日には両下肢の脱力により歩行困難となった。さらに翌日には、呼吸状態が悪化、気管挿管人工呼吸器管理となったため当院に転院搬送され、ICU管理となった。前医での気管挿管後より血圧低下あり、当院搬送時には昇圧薬の持続投与が行われていた。ICU入室時の12誘導心電図でV1からV4誘導でST上昇を認め、経胸壁心臓超音波検査で左室基部の壁運動低下と心尖部の過収縮があり、逆たこつぼ型心筋症と診断した。同日施行した神経伝導検査で末梢神経伝導速度の延長があり、ギラン・バレー症候群と診断、転院1日目から二重膜濾過血漿交換を5日間施行した。左室壁運動については、駆出率(modified Simpson法)は1日目から3日目を通して55%前後で著変なかったが、左室基部の壁運動は経時的に改善し、左室流出路の速度時間積分値は1日目に12cmと低下していたものが、2日目は17cm、3日目は19cmと改善を認めた。3日目には昇圧薬の持続投与は中止した。7日目より免疫グロブリン静注療法を5日間施行したが、短期的な筋力回復は認めず、長期の人工呼吸器管理が必要と判断し、8日目に気管切開を行った。9日目よりステロイドパルス療法を3日間施行した後、12日目に人工呼吸器管理のまま一般病棟へ退室した。昇圧薬中止後の循環動態は終始安定していた。【結論】ギラン・バレー症候群患者で循環動態が悪化した場合、まれではあるがストレス心筋症の合併を疑う必要がある。
著者
上田 錠 永井 梓 稲垣 麻優 藤村 高史 平田 陽祐 辺 奈理 三宅 健太郎 竹内 直子 水落 雄一朗 有馬 一
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【はじめに】ニセクロハツは北米、台湾、中国、日本に発生するが、発生環境や色、形が食用のクロハツと類似しているため、誤って摂取後、中毒症状を呈する。ニセクロハツのもつ毒性分である2-シクロプロペンカルボン酸により、摂取後嘔吐や下痢などの消化器症状を生じ、その後に中枢神経症状、呼吸不全、横紋筋融解症、急性循環不全、急性腎不全などの症状を呈し、重症例では多臓器不全となり死亡例も報告されている。【症例】75歳の男性、自分で採取したニセクロハツを摂取した後に嘔吐・下痢の消化器症状を認め、深夜に前医に救急搬送された。入院時は意識清明、歩行可能であったが、摂取後2日目より意識レベル低下、呼吸・循環不全となり、人工呼吸管理、カテコラミン持続投与開始された。その後乏尿、代謝性アシドーシスの進行あり、全身管理目的で同日当院転院搬送された。当院搬送後の採血にてCK38100と高値で赤褐色尿を認めており、横紋筋融解症による急性腎障害と判断して輸液療法、血液浄化療法を開始した。摂取後3日目に意思疎通がとれるまで意識レベルの改善を認めたが、CKは上昇し続け摂取後6日目に203800IU/Lまで上昇した。大量輸液、高容量の昇圧剤投与にても循環維持困難となり、再度意識レベルも低下した。摂取後7日目に家人同意のもと積極的な治療を継続しない方針となり血液浄化療法を中止、その後数時間で多臓器不全のため永眠された。【考察・結語】ニセクロハツ摂取後全身管理を要し、重篤な経過をたどった症例を経験した。ニセクロハツ中毒の報告は過去に数例と少なく、現状では確立した治療法はない。極めて希な中毒症例であり、文献的考察を加え報告する。
著者
松嶋 麻子
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

重症熱傷患者の死亡は、受傷早期の循環不全(いわゆる熱傷ショック)とその後に訪れる敗血症が主な原因である。今回は、重症熱傷患者の救命を目的に、社会保険中京病院(現独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院)で行った調査と感染対策について報告する。1.敗血症の起因菌と感染対策敗血症で死亡した広範囲熱傷の患者を調査したところ、約6割の患者において、創、痰、尿、血液、カテーテルのいずれかからmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)が検出され、全員から多剤耐性緑膿菌が検出されていた。これに対し、接触予防策と環境整備を中心とした感染対策を施行したところ、MRSAの検出率に大きな変化はなかったが、多剤耐性緑膿菌の検出率は1/3まで低下した。敗血症の発症率および受傷から敗血症を発症するまでの日数は感染対策の前後で変化はなかったが、多剤耐性緑膿菌による敗血症が減少した結果、死亡率は半減した。2.熱傷患者におけるToxic Shock Syndrome (TSS)TSSは、急激にショックから多臓器不全に陥る病態である。小児の熱傷患者における発症頻度は2.5-14%とされており、診断に至らず治療が遅れた場合には死亡率は50%に上ると言われている。成人では思春期までにTSST-1に対する中和抗体が産生されるためTSSの発症は極めて稀と考えられてきたが、近年、MRSAの院内感染により発症するTSSが小児だけでなく、成人でも問題となりつつある。我々の調査研究では、熱傷患者のMRSA院内感染によるTSSの発症頻度は8.2%であり、年齢や熱傷面積の分布に一定の傾向は認めなかった。TSST-1を産生するMRSAに感染した患者の内、TSSを発症した患者は発症しなかった患者と比較して、来院時の抗TSST-1抗体は低かった。TSST-1を産生するMRSA株が蔓延する施設においては、小児、成人に関わらず、MRSAの院内感染によるTSSの発症を考慮する必要がある。
著者
垣花 泰之
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

感染などに伴う過剰な生体侵襲は全身性の炎症反応を惹起するが、これにはToll様受容体(TLR)というパターン認識受容体が関与しており、活性化されるとアダプタータンパクが集まり、次いで間髪入れず数多のプロテインキナーゼが活性化される。最終的に細胞のシグナル伝達によって炎症の制御に関わる様々な遺伝子が発現し、炎症促進サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの産生が増える。Thomasらは、「敗血症による死亡や合併症の要因として最も重視すべきなのは微生物というよりも宿主反応である」という説を提唱した。TNF-αやIL-1βをはじめとする多くの炎症性サイトカインが敗血症患者で増えていることや、動物に投与すると敗血症患者で見られる臨床症状を再現できること、循環血液中のTNF-α濃度の上昇幅が大きいほど死亡率が高いことも、その説の信憑性を裏付けるものと考えられた。Thomasらが提唱した、「制御を失った過剰な炎症亢進状態が、臓器不全の原因である」との理解の基に、敗血症でみられる過剰な炎症反応の流れを断ち切る、あるいはメディエータを中和するための薬剤(TNF-α拮抗薬、IL-1拮抗薬、TLR4拮抗薬など)が開発され臨床試験が行われたが、いずれも有効性を示せなかった。つまり、TLR受容体は外来微生物に攻撃されたことを早期に認識するための受容体であり、炎症性サイトカインは速やかに防御反応を立ち上げるためのメディエータであることを考慮するならば、いくら過剰な炎症反応が宿主側にとって脅威を与えるものであったとしても、外来微生物の侵入に対して生体を守るために備わっている監視レーダーの機能を停止させ、情報伝達手段を破棄するような戦略ではとうてい勝ち目はないということであろう。敗血症性ショックにおける心機能障害のメカニズムには、β受容体のダウンレギュレーション、シグナル伝達系の異常、筋小胞体からのCa2+の放出障害、ミトコンドリアの傷害などが報告されている。敗血症において、接着分子やケモカインは、肺に好中球を捕捉し、活性化することでARDSを発症する。敗血症患者の多くは、初期の過剰な炎症期を乗り切るが、遷延するに伴い免疫抑制状態に陥り予後が悪化する。患者の免疫能を高めることで、病原体に打ち勝ち、新規感染の発症が予防できるため、臓器不全の回避、生存率の向上が期待できるのかもしれない。今回の講演では、敗血症で惹起される多臓器障害のメカニズムを、ミクロの視点(血管内皮細胞、グリコカリックス等)と、マクロの視点(心筋障害、呼吸不全、免疫不全)から解説し、敗血症性多臓器障害に対する治療戦略を提示したい。
著者
日根野谷 一 道田 将章 池本 直人 吉田 悠紀子 落合 陽子 大橋 一郎 片山 浩
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】急性感染性電撃性紫斑病(acute infectious purpura fulminans; AIPF)とは感染症により、四肢遠位部の虚血性壊死が、二肢以上で同時に侵され、近位の動脈閉塞を伴わない病態である。原因菌では髄膜炎菌が最も多いがA群β溶連菌(group A streptococci: GAS)や真菌、ウイルスなど様々である。AIPFの死亡率は約40%で、さらに敗血症性DICに至った症例の死亡率は約50%と報告があり、AIPFは最重点に置くべき病態である。【臨床経過】(患者)84歳、女性(主訴)右足背の違和感(現病歴)来院前日の夜間から右足背の違和感と疼痛、水泡形成を自覚、近医受診した。しかし、収縮期血圧約70mmHg、SpO2 85%(room air)、呼吸数30回/分以上と急変。前医へ紹介受診されるが、さらに悪寒戦慄と右下肢の水泡と新たに発赤の拡大を認め当院へ救急搬送(入院時現症)意識レベル:E4V5M6、SpO2:89%(10L/min O2マスク)、血圧:90/54(ドパミン、ノルアドリナリンそれぞれ最大量)、脈拍:110回/分、体温:38.6℃、両足背から下腿遠位にかけて有意な腫脹、発赤、水泡形成を認めた。両足背および後脛骨動脈の触知は不可だったが膝窩動脈の触知は可能(既往歴)発症1週間前に右第1足趾の外傷(入院後経過)初日、全身麻酔下で筋膜切開術を施行。術後はICUにて人工呼吸管理を行なった。抗菌薬は、ABPC 8g/日およびCLDM 2400mg/日投与を開始した。急性期DICスコアが6点より、AT-3製剤1500単位/日、トロンボモジュリン製剤19200単位/日の投与を第6病日まで行ない、その後適宜スコアを見ながら投与を行った。第2病日、急性腎傷害より持続的腎代替療法を導入。第3病日、第1病日の血液培養よりGASが検出、届出を行なった。その後壊死範囲の拡大により第5病日、膝上右下腿切断術を施行。第10病日、断端部陰圧閉鎖療法を開始した。第13病日、非閉塞性腸管虚血症が発症。パパベリンの持続投与を行なった。また、創部よりCandidaが検出。MCFG 100mg/日の投与を開始した。第20病日、AMPH 200mg/日に切り替えた。その後も治療の再検討を行なうが、DICの進行、敗血症性ショックにより第41病日、永眠。【結語】AIPFの死亡率は高く、さらに敗血症性DIC合併例の救命は困難である。本症例も救命できなかったが、AIPFの死亡例の大半は発症後2日以内であることより、救命できた可能性はあった。しかし、重大な合併症を発症した場合救命はさらに厳しいので注意が必要である。
著者
日下 あかり 内田 由紀 田邊 輝真 世良 俊樹 多田 昌弘 伊関 正彦 竹崎 亨 楠 真二 山野上 敬夫
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】2018年7月の西日本豪雨においては、広島県でも各地で土砂崩れ、河川の氾濫などにより甚大な被害が発生した。土砂災害の被災者で軽微な挫創から破傷風を発症した1症例を経験したので報告する。【臨床経過】70歳台、男性。土砂崩れにより自宅が倒壊し、およそ3時間後に土砂の中から救出され当院へ搬送された。全身の土砂を洗浄後に検索を行ったが、大きな外傷を認めず、両膝の約2cmの挫創を洗浄・縫合し、破傷風トキソイドワクチンを投与して救命センターへ入院とした。感染兆候を認めず一般病棟へ転棟し離床を進めていたが、入院10日目に呂律困難および嚥下困難を自覚、入院11日目からは開口障害が出現した。破傷風と診断し、抗破傷風ヒト免疫グロブリン1500単位を投与、ICUへ入室しペニシリンG300万単位×6回/日投与を開始した。その後も開口障害と嚥下障害は進行し、唾液を嚥下できず吐き出すようになり、入院13日目に開口制限は0.5横指まで増悪、経口摂取を中止し経鼻胃管による経腸栄養に切り替えた。入院16日目頃より開口障害は改善傾向となり、21日目に経口摂取を再開し経鼻胃管を抜去、後遺症なく36日目に自宅退院となった。【結論】軽微な創傷からでも、あるいは明らかな外傷がない場合でも、破傷風を発症する可能性があることは知られている。本症例は比較的軽微な挫創であり、受傷後6時間以内に初療がなされ、破傷風トキソイドワクチンが投与されたにもかかわらず破傷風を発症した。土砂災害による外傷患者に対しては、過去の予防接種により十分な抗毒素抗体価が期待できる場合を除き、外傷の程度や受傷からの時間によらず積極的な破傷風予防・治療が必要と考えられた。
著者
宮本 将太 高谷 悠大 奥野 善教 邑田 悟 篠塚 健 下戸 学 柚木 知之 趙 晃済 大鶴 繁 小池 薫
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】三環系抗うつ薬(TCA)は過量摂取時に強い毒性を有することが知られており、死に至ることもある。主な死因に痙攣や致死性心室性不整脈が挙げられる。今回、処方にTCAが含まれていなかったにも関わらず、痙攣と致死性心室性不整脈を発症し、不整脈の加療およびTCA中毒と判断するのに苦慮した一例を経験したため報告する。【臨床経過】双極性障害を既往に持つ39歳男性、身長163cm、体重63kg。これまで6回の薬物大量内服による救急搬送歴があった。来院2時間前に、薬物大量服用の意思を友人に電話で伝えていた。友人到着時は意識清明だったが、徐々に意識レベルが低下したため救急要請し、当院搬送となった。来院時はJCS300、血圧128/77mmHg、心拍数141/分・整、呼吸数32回/分、SpO2 90%(高濃度酸素マスク10L投与下)だった。来院直後、脈あり心室頻拍が出現したが1分以内に自然頓挫した。その後けいれん発作が出現したため、ジアゼパム、レベチラセタム、ビタミンB1を投与したが発作を繰り返し、気管挿管の上でプロポフォール持続投与開始したところ鎮痙した。しかしその後、脈なし心室頻拍も持続したため蘇生を行った。ショック遷延に対して複数の昇圧剤および炭酸水素ナトリウム投与を要した。心エコーおよび全身CTでは特記すべき器質的病変を認めなかった。尿中薬物定性検査ではベンゾジアゼピン、TCAが検出されていたが、判明していた内服薬にTCAは含まれていなかった。病歴と合わせて薬物中毒による痙攣および致死性不整脈が起こっていると考えられた。集中的な全身管理が必要と判断し、ICUに入室させた。入室時APACHE2スコアは32点、SOFAスコアは17点だった。ICU入室後は昇圧剤投与下でも血圧80mmHg前後で推移していたが、第2病日に脈なし心室頻拍出現、CPR開始した。除細動2回施行し、アドレナリン投与含む蘇生を行ったが、自己心拍は再開しなかった。来院されたご家族に状況説明したところ、V-A ECMO導入は希望されず、死亡確認を行った。後日、血液検査結果では、アミトリプチリンが2034ng/mLと致死量を超える血中濃度を示していた。以上よりTCA中毒により痙攣および致死性不整脈が生じたと考えられた。【結論】TCA処方歴のないTCA中毒を経験した。急性薬物中毒が疑われる症例では、処方歴よりも顕現している症状から原因薬物を検索すべきである。
著者
平田 祐太郎 石井 美恵子
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【目的】クリティカルケア領域の看護師が記録した肺音聴診結果を表す用語の実態調査と、記録された用語と看護師の背景との関連を明らかにする。【方法】実態調査では看護師の記録を対象に肺音聴診結果を表す用語について適切用語記録率を算出した。質問紙調査ではA県医療機関ICU所属看護師に対し基本属性と共に不適切用語14カテゴリーを使用する際の意識について4段階評定法で評価を行い、そのうち肺音に直接関連する6カテゴリーの平均点を合計し不適切用語合計点を算出した。また看護記録実施者に影響を与える要因についても調査を行った。適切用語記録率の関連要因を探るため、従属変数を適切用語記録率、独立変数を基本属性としt検定、一元配置分散分析を行った。また適切用語記録率と不適切用語合計点の相関についてPearsonの相関係数を算出した。【結果と考察】研究同意を得た看護師46人のうち質問用紙の回収率は100%、有効回答率は97.8%であった。実態調査では全カテゴリーの適切用語記録率は71.0%であったが、そのうち「呼吸音」カテゴリーでは適切用語記録率が16.4%と低く不適切用語の全てが「エア入り」であった。適切用語記録率との関連を認めたのは認定看護師教育課程でフィジカルセスメント学習経験をもつ群であり、十分な時間をかけたActive Learningによる学習経験が関連していると考えられた。看護記録は先輩看護師の記録や指導など周囲からの影響を受けている傾向が観察され、「エア入り」についても記録を簡素化するために作られた造語であり先輩看護師からの伝承により使用されていると推測された。適切用語記録率と不適切用語合計点は相関を認めたことから不適切用語に関して正しい知識で修正できれば適切用語記録率にも影響されることがわかった。【結論】実態調査では全カテゴリーの適切用語記録率が71.0%であった。「呼吸音」カテゴリーでの適切用語記録率は16.4%であり、そのうち不適切用語の全てが「エア入り」という用語であった。適切用語記録率はフィジカルアセスメントを認定看護師教育課程で学習した群との関連が認められ、さらに不適切用語合計点とは相関を認めた。看護記録に影響を与える要因としては先輩看護師の指導や記録などがあることが考えられた。このことから認定看護師が適切な用語による看護記録を継続し看護師へ指導することで正しい知識が伝承され、適切な用語による記録が可能となると示唆された。
著者
吉本 広平 増山 純二 土井 研人 中島 勧 橘田 要一 森村 尚登
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】2016年にSepsis-3 criteria(以下Sepsis-3)が提案され、救急外来(以下ER)においては敗血症患者のスクリーニングにquick SOFA score(以下qSOFA)の測定が推奨されている。しかしながら医療システムや患者分布の異なる本邦でのqSOFAの有用性は明らかでなく、またqSOFAは予後予測に対する感度に劣るとの問題点も指摘されている。【目的】細菌感染症が疑われるER受診患者におけるSepsis-3の臨床的妥当性を評価する【研究デザイン】単施設後方視的コホート研究【対象】2017年1~12月に地方基幹病院ERを受診した患者のうち細菌感染症として治療された者【方法】対象患者を後方視的に抽出後、トリアージ時点のバイタルサインおよびER受診時の血液データからqSOFA、SOFA、SIRSスコアを算出し、ROC曲線下面積(AUC)用いてprimary outcomeを院内死亡とした診断能を比較した。また臓器障害(SOFA2点以上の増加)を認める場合qSOFAに+1点を加えたqSOFA+(4点満点)を定義し、同様にしてqSOFAと比較した。【結果】対象はn=668(男351)、年齢中央値77、院内死亡率6.7%であり、罹患疾患は呼吸器(n=227)、消化器(n=164)、肝胆膵(n=106)の順であった。99名がqSOFA≧2を満たし、その死亡率は24.2%であった。qSOFAは院内死亡予測に対してSIRSより有意に優れ[AUC 0.75 (95%CI, 0.66-0.83) vs 0.60 (95%CI,0.51-0.68), P<0.001]、SOFAと同等であった[AUC 0.76 (95%CI 0.68-0.84), P=0.67]。qSOFA+はAUC 0.78(95%CI, 0.70-0.85)であり、各2点をカットオフポイントとした場合、予後予測に関してqSOFAの感度53%、特異度88%に対し、qSOFA+は感度76%、特異度70%であった。【結論】本邦ERにおいてもqSOFAはSIRSより明らかに予後予測に優れ、来院時に短時間で計算できるにも関わらず、SOFA scoreと同等の予後予測能を有する。また本邦外での報告と同様にqSOFAは特異度が高く感度に劣るが、来院時の臓器障害を加味することで感度向上が得られることが示唆された。
著者
藤井 元輝 大野 博司 植木 あゆみ
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】2型糖尿病治療薬のメトホルミンの有害事象に乳酸アシドーシスがある。メトホルミン中毒は死亡率の高い疾患であり、特に高度のアシドーシスによる意識障害・循環不全を伴う場合は、血液浄化療法が有効である。血行動態が不安定な際は持続腎代替療法が考慮されるが、間歇的血液透析と比較し、薬剤のクリアランスが低い欠点がある。今回、我々は血行動態の不安定なメトホルミン中毒に対してprolonged intermittent renal replacement therapy (PIRRT)を施行し、救命した一例を経験したので報告する。【臨床経過】66歳男性。2型糖尿病でメトホルミンを内服中であった。来院1週間前に炎天下での屋外業務で熱中症となり、食事・水分がほとんど摂取できなくなったが内服薬は継続していた。来院日に倦怠感が強く当院救急外来に救急搬送となった。来院時著明な乳酸アシドーシス(pH 6.9,乳酸値124 mg/dl)、腎機能障害、高カリウム血症を認め、メトホルミン中毒、急性腎障害と診断した。意識障害を認め、挿管・人工呼吸器管理の上でICU入室とした。乳酸アシドーシス、急性腎障害に対して血液浄化療法の適応と考え、循環不安定なため、PIRRTを施行した。1回目のPIRRT中に乳酸アシドーシス、意識状態、血行動態の改善を得て、第2病日に抜管した。当初高値であった血中メトホルミン濃度はPIRRTに伴い経時的な低下を認めた。【結論】血行動態が不安定なメトホルミン中毒に対しては、PIRRTが血行動態を悪化させることなく、メトホルミンを除去する選択肢となりうる。
著者
佐藤 洋祐 松田 律史 民谷 健太郎 増井 伸高 松田 知倫 瀧 健治 丸藤 哲
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】我々はしばしば悪性症候群(NMS)に遭遇する。またICU-acquired weakness(ICU-AW)が知られているが、近位筋が侵され中枢神経に影響はない。今回我々はNMSに中枢神経を含む全身性の神経疾患を合併した一例を経験したので報告する。【臨床経過】60歳代男性。搬送3日前より四肢の脱力・感覚鈍麻を自覚、歩行困難・呂律障害も出現し当院搬送となった。既往症は双極性障害と脂質異常症で、内服薬は炭酸リチウム 600mg/日、クロチアゼパム 15mg/日、メコバラミン 1.5mg/日、フルニトラゼパム 2mg/日、ゾテピン 25mg/日。来院時現症:GCS E4V5M6, 瞳孔 4+/4+、RR 12/min、SpO2 98%(室内気)、HR 134bpm、BP 161/118mmHg、BT 36.8℃。頭部・胸腹部および脳神経(II-XII)に異常所見認めず、上下肢の脱力及びdermatomeに一致しない感覚鈍麻を認めた。頭部CT/MR、CXR、胸腹部CT、ECG及びUCGに特記所見は認めなかった。血液検査で軽度の白血球増多およびCRP高値を認めた。23年来のLi内服者で、血中Li濃度は低値だったが晩期リチウム中毒として入院加療を開始した。補液により感覚鈍麻は改善したが、四肢の脱力と、横隔膜の筋力低下を認めた。髄液検査では蛋白細胞解離を認めたが、原因は不詳であった。GBSやCIDPを考慮し各種検査を追加したが、オリゴクローナルバンドやGQ1b抗体、GM1抗体は陰性で、髄液HSV抗体は既感染パタンだった。血清IgG抗体は高値を示したが、IgG4は正常範囲に留まった。HIVは同意が得られず検査できなかった。第4病日に意識レベルの低下と頻脈を認め、第5病日に発熱、眼球の上転、著名な発汗をきたし、NMSを疑い診断基準を検討したが、CKの上昇や筋強剛は認めなかった。EEGでは群発波・鋭波を認めた。神経伝導速度検査で潜時の延長および振幅の低下を認め、末梢神経脱髄と判断し、最終的に振戦のないNMSと診断した。ステロイドパルス療法(mPSL 1000mg/day)を3日間施行し、意識状態および頻脈・血圧高値の改善を得た。脱力も改善した。しかし脳波異常および髄液検査異常を説明できず、精査を目的に第10病日に神経内科へ転院した。【結論】NMSに、末梢神経の脱髄性ポリニューロパチー、蛋白細胞解離および鋭波を伴う中枢神経が関与する病態の一例を経験した。ICU-AWを考慮したが横隔膜の筋力低下を伴っていた。本症例では中枢神経が侵されており、全身性疾患の一部であった可能性は否定できないが原因は不詳であった。
著者
小川 宗一郎 濱川 俊朗 成尾 浩明 辛島 謙 中村 禎志
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】破傷風の治療は,原疾患の治療に加え痙攣のコントロールや鎮静などの全身管理が重要である.鎮静においてベンゾジアゼピン系薬物や塩酸モルヒネの大量投与で,良好な全身管理が出来たとの報告がある.また,筋弛緩薬は廃用性萎縮や症状評価が難しいという理由で使用しづらい点がある.今回破傷風患者に,筋弛緩薬を使用せず,大量のミダゾラム(MDZ)と塩酸モルヒネ(MOR)を併用し,良好な鎮静管理ができたので報告する.【臨床経過】60歳代の男性.嚥下困難感と後頸部の違和感を主訴に当院を受診した.受診1か月前に右中指の外傷歴があり,受診2日前より上記症状が出現した.受診時開口障害と後頸部硬直を認め,外傷歴と症状から破傷風と診断した.予防接種歴もなかったため破傷風トキソイド,抗破傷風人免疫グロブリン製剤,メトロニダゾールを投与した.ICUに収容し気管挿管後に人工呼吸器管理を開始した.また創部をデブリードマンし,開放創とした.入室後にMDZ:2500mg/日による鎮静を行っていたが,次第に刺激による頻回の後弓反張が出現した.そのため5日目よりMOR150mg/日+MDZ720mg/日で鎮静を行った.また,全身管理期間も長期になることが予想され,入室6日目に気管切開を行った.その後は硬直や痙攣症状なく,呼吸状態も安定していた. 8日目よりMDZを500mg/日,12日目にはMORを100mg/日に減量した.13日目に人工呼吸器からウィーニングを開始し,MDZを240mg/日に減量した.15日目にMORを90mg/日へ減量した.21日目に両下肢の痙攣が出現し,併用でデクスメデトミジン 5.1ml/時を開始したが,徐脈が出現したため翌日に中止した. 24日目に人工呼吸器離脱し, 25日目にMDZを終了した.その後,離脱症候の観点からMORは徐々に漸減し, 29日目に終了し,33日目でICU退室となった.退室後は嚥下機能訓練を行い,入院後約3か月で退院となった.【結果】今回の症例ではアルコール多飲歴によるベンゾジアゼピン系薬物への抵抗性が形成されており,MDZの鎮静効果が低かったと考えた.筋弛緩薬は筋の廃用性萎縮や症状評価の観点から使用しなかった.またデクスメデトミジンは徐脈が出現したため使用しなかった.鎮静薬の量はジアゼパム3400mg/日,モルヒネ 235mg/日と大量投与で良好な治療効果が得られたとの報告がある.筋弛緩薬を使用せず,大量のMORの併用とMDZにより鎮静を行い良好な鎮静管理とスムーズなウィーニングが可能であった.
著者
島田 薫 柄澤 智史 田中 久美子 松村 洋輔 大島 拓 織田 成人
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】集中治療室(ICU)における特発性腸腰筋血腫は抗凝固薬や抗血小板薬の投与、腎代替療法、高齢がリスク因子と考えられており、発生頻度は0.3%と稀ながら、致死率は30%との報告もある。当科でも診療機会が増えているが、典型的な臨床所見が明確でないことから、診断に苦慮することも多い。【目的】当院ICUで経験した症例から特発性腸腰筋血腫の臨床的特徴を明らかにする。【対象と方法】2016年4月1日から2018年9月15日の期間に当院ICUに入室した患者のうち、特発性腸腰筋血腫と診断された患者を診療録から後方視的に抽出した。【結果】対象期間中のICUの延べ入室患者数は4529例で、うち6例(男性4例)で特発性腸腰筋血腫を認めた。発症頻度は0.1%だった。平均年齢は66歳、いずれも片側発症で、右側5例、左側1例だった。発症前から全例でヘパリン、4例でステロイドが投与されており、4例で腎代替療法が施行されていた。自覚症状から診断に至った症例は4例で、呼吸困難、腰痛と腹部膨満、右側腹部痛、腹部緊満を認めた。他の2例は意識障害を伴う出血性ショック、原因不明の貧血進行から判明した。いずれの症例でも同時に貧血が進行していた。5例に出血性ショックを呈し、4例に血管内治療を施行し止血が得られた。1例は輸血で止血は得られたが腸管虚血を含めた臓器不全が進行し死亡した。血管内治療を施行した例では出血による死亡例はなかった。【結論】特発性腸腰筋血腫は稀な病態で、診断が遅れれば致死的になりうる。ICU患者は自覚症状に乏しい上に、確定診断に有用なCT検査の実施が容易でない場合が多い。一方で、早期に診断できれば止血術により救命できる可能性が高い。自験例では高率にリスク因子を認めた一方で貧血の進行以外に共通する臨床所見はなかったが、ショックを呈した症例は適切な止血術により救命し得た。リスク因子のある症例で貧血が進行した際には、腸腰筋血腫も念頭に置いた原因検索をすすめることが重要である。
著者
石原 嗣郎 佐藤 直樹
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

現在、生理学的根拠・知識、権威に基づく医療、個人的な経験によるものではなく、患者背景、医師の技量、エビデンスを3つの柱とした、いわゆる根拠に基づく医療(evidence based medicine, EBM)を行うことが多くの場面で求められる。そのEBMを実践する上で、エビデンスのピラミッドからも見て取れるように、ランダム化比較試験が最もエビデンスレベルの高い手法であり、この手法のみが交絡因子を排除することが可能である。つまり、薬物やある治療法がある集団で効果があるかどうかを検証する方法としてはRCTが最も優れた手法であると言える。しかし、RCTの問題点として、コストの問題、外的妥当性の限界など、様々である。ただ、EBMに基づく医療を掲げるのであれば、RCTにおける対象群やプロコール、解析方法などに対して批判的吟味を行った上で実臨床につなげる必要があることは自明のことであり、RCTから得られた結果をどう使うかも、やはりEBMに基づく診療と言える。
著者
松井 祐介 松岡 宏晃 金本 匡史 渋谷 綾子 室岡 由紀恵 大高 麻衣子 竹前 彰人 高澤 知規 日野原 宏 齋藤 繁
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】HITは,血小板第 4 因子(PF4)とヘパリンとの複合体に対する抗体(抗PF4/H抗体)の産生が起こり,その中の一部で強い血小板活性化能を持つもの(HIT抗体)が,血小板,単核球,血管内皮の活性化を引き起こし,最終的にトロンビンの過剰産生が起こり,血小板減少,さらには血栓塞栓症を誘発する。治療には,まずはヘパリンの使用を中止することに加え,抗トロンビン作用を持つ代替抗凝固療法 (アルガトロバン) が必要である。今回我々は体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia , HIT)を発症し,回路内凝血により持続的腎代替療法の継続が困難であったが,透析膜の変更で治療を継続することができた1症例を経験したため報告する。【臨床経過】我々は,体外式膜型人工肺を用いた心肺蘇生後にHITを発症し,除水ならびに血液浄化目的に、持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)が必要となり,ポリスルホン,セルローストリアセテートの透析膜を用いても,血栓による閉塞を頻回に起こし、回路交換による中断をせざるを得なくなり,管理に難渋する症例を経験した。本例は,ヘパリン中止,アルガトロバンによる全身の抗凝固療法と,ナファモスタットを用いた回路内の抗凝固療法を併用し,活性化凝固時間を延長させたにもかかわらず,頻回な回路閉塞によりCHDFの継続は困難であった。しかし,高い親水性をもった厚い柔軟層を有するポリスルホン製の透析膜のダイアライザー (商品名:トレライトNV) を用いた持続的血液透析および体外式限外濾過療法より,比較的長時間の腎代替療法を行うことができ,除水を継続することができた。【結論】HIT患者においても,ダイアライザーの種類を変更することで,腎代替療法を継続することができた。水分管理が困難であった場合,酸素化不良による静脈返血での体外式膜型人工肺(V-V ECMO)が考慮されたが,本症例では導入を必要とするまでには至らず,重篤な合併症を回避することができた。
著者
青景 聡之 平山 隆浩 塚原 紘平 高 寛 清水 一好 中川 晃志 岩崎 達雄 笠原 真悟 内藤 宏道 中尾 篤典
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景・目的】ECMOには抗凝固療法が必須であり、出血や貧血を代償するため輸血が用いられる。輸血需要に関連した患者の臨床的特徴、凝固管理、予後については十分に解明されていない。本研究では輸血需要が増加しやすい患者の特徴を明らかにし、リスクに応じて異なる抗凝固戦略の必要性について考察する。【方法】2013年1月から2018年8月までの成人ECMO症例 67例のうち、96時間以上のECMO使用例、30例を研究対象とした。導入前後に開胸手術、Central ECMOを要した症例は除外した。入院時の臨床的特徴および、導入から7日目まで(離脱・回路交換を行ったものはその時点まで)の輸血量と凝固パラメータを評価した。1日あたりの平均赤血球輸血量の中央値は240 ml/dayであったため、少量輸血群(<240ml/day)13例と多量輸血群(≧240ml/day)17例の2群に分類し、臨床的特徴と凝固パラメータ、予後について解析した。【結果・考察】臨床的特徴・予後を表に示す。多量輸血群ではVA ECMOの頻度が高かった。年齢・性別・APACHE/SOFAスコアは両群間で差はなかった。管理面では、多量輸血群で、血小板値が低く、ヘパリン使用量が少ない反面、APTTは延長していた。ACTとECMO期間に差はなかった。VA ECMOでは、VVよりも出血が生じやすい可能性があり、輸血量に反映された可能性がある。【結語】輸血量が多い群ではVA ECMOの割合が多かった。VAではVVと異なる抗凝固戦略の必要性が示唆された。今後はさらに解析をすすめ、VAとVVの患者背景と管理法の違いを明らかにしていく。
著者
首藤 誠 正岡 光智子 武智 晶子
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】日常の診療において、観血的動脈圧が非観血的動脈圧と明らかに異なることはよく経験する。その原因の一つは、圧モニタリングキットが有する周波数特性と動脈血圧波形そのものが持つ周波数特性との関係によって共振現象が生じることと考えられている。またその要因として、耐圧チューブの長さやサンプリングシステムの挿入、体液量の変化や麻酔覚醒時の交感神経活性化状態などが考えられている。その共振現象を抑える制動素子としてはROSE(Argon Medical Devices, TX、 USA)ダンピングデバイスが市販されているが生体での有効性については報告が少ない。【目的】今回、麻酔覚醒時(吸入麻酔の中止から抜管までの段階)に観血的動脈圧と非観血的動脈圧の間に明らかな差が生じている場合、ROSEの回路内挿入によってその差が補正されるかどうかを調べた。【方法】最近3か月間に、麻酔覚醒時の観血的動脈圧が非観血的動脈圧よりも明らかに高かったがん根治術症例19例において、ROSEが観血的動脈圧の波形及び値を補正できるかを調べた。記録はROSEの観血的動脈圧測定キットへの挿入直前と直後にマンシェットによる非観血的動脈圧測定を行い、モニタの表示画像(数値及び波形)を保存して解析に用いた。ROSE挿入前後の観血的(Invasive)動脈圧の収縮期圧、拡張期圧、平均圧をそれぞれpre SIとpost SI、pre DIとpost DI、pre MIとpost MIとし、対応する非観血的(Non-invasive)動脈圧をそれぞれpre SNとpost SN、pre DNとpost DN、 pre DIとpost DIとした。観血的と非観血的動脈圧の差及びROSE挿入前後の動脈圧の変化についてpaired T testによる統計学的検討を行った。【結果】ROSE挿入直前の収縮期血圧はpre SN=125±28(mean±SD)mmHg、pre SI=154±31mmHgで観血的動脈圧が有意(p<0.01)に高かった。またROSE挿入直後の観血的動脈圧はpost SI=125±27mmHgで挿入直前に比べて有意に(p<0.01)低下し、非観血的動脈圧post SN=122±27mmHgとの差は認められなかった。ROSE挿入前にみられた観血的動脈圧波形のオーバーシュートは挿入後明らかに減少した。【結論】麻酔覚醒時の交感神経亢進やシバリングによって観血的動脈圧波形がオーバーシュートし、特に収縮期血圧が非観血的動脈圧よりも高く測定されることはよく経験される。今回の研究で少なくともダンピングデバイスROSEの挿入によってその差が是正されることが確認できた。
著者
Shohei Takatani
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

Advances in critical care have led to increased survival and, as a result, the recognition of prolonged physical and psychosocial morbidity after critical illness. Neuromuscular dysfunction has been identified in many intensive care unit (ICU) patients with sepsis, multi organ failure, or prolonged mechanical ventilation and is associated with a longer duration or mechanical ventilation and increased length of ICU and hospital stay [1]. Early Mobility (EM) and engagement is an essential component of the ABCDEF bundle that has been effective in reducing ICU - Acquired weakness as well as an effective intervention to significantly affect delirium. The three ICUs at Stanford Medical Center (SMC) consist of the Cardiovascular ICU, the Medical Surgical Neurological ICU, and the Coronary Care Unit (CCU). Every ICU has a designated rehabilitation team comprised of occupational therapists (OT), physical therapists (PT), speech language pathologists (SLP) and rehabilitation aides (RA). At SMC, over 90% of ICU patients receive consults to PT and OT when medically appropriate, and are initiated on a standard, intermediate, or intensive rehabilitation program based on appropriateness. All rehabilitation programs emphasize the utilization of structured activity programs, progressive exercise programs and safe patient handling equipment such as hospital beds with tilting features, overhead lift systems, chairs with pressure relieving capabilities in order to facilitate safe and effective participation in EM and engagement for both patient and staff. Incorporating family involvement. In order to care for our critically ill patients, we collaborate with interdisciplinary members on a daily basis. EM can be performed by any part of the interdisciplinary team including nurses, physical therapists, occupational therapists, or physicians and it can consist of activities from passive range of motion to ambulation.As a result of our ICU early mobility and engagement rehabilitation program, cardiac surgery and transplant patients’ length of stay (LOS) in the ICU and overall hospital length of stay has been reduced. Additionally, we have also noted a reduction in staff injury rates related to EM and engagement practices in the ICU.EM has been a standard of practice in the ICUs at SMC and the emphasis on early mobility and engagement in structured ICU rehabilitation programs have been very safe and successful for our patients at SMC as well as for the care team members. Through close collaboration with nursing staff, primary medical team members, and other ancillary services, i.e., respiratory therapy (RT), perfusionists, dietitians (RD), we have a strong mobility culture and we continue to strive to provide effective EM and early engagement in our critically ill patients.[1] Stevens RD, Dowdy DW, Michaels RK, Mendez-Tellez PA, Pronovost PJ, Needham DM, Neuromuscular dysfunction acquired in critical illness: a systematic review. Intensive Care Med 2007; 33:1876-91.