- 著者
-
中村 聡美
- 出版者
- 日本カウンセリング学会
- 雑誌
- カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.1-13, 2018-06-30 (Released:2019-10-01)
- 参考文献数
- 26
本研究の目的は,集団認知行動療法による介入の評価を質的・量的の両側面から行い,介入によるうつ病休職者の職場のストレスに対する認知および行動の変容過程を質的側面から明らかにすることである。企業組織に在籍し,うつ病休職中で復職を目指す16名に対して集団認知行動療法を実施し,前後に質問紙調査および半構造化面接を行った結果,当事者の語りおよびBDI-Ⅱの得点差(Z=-2.330, p=.017)から,介入後の抑うつ気分に改善が認められた。同時に,職場のストレス処理に対する認知および行動からなる労働スタイルにも変化が生じ,柔軟性が増していた。休職前の〈埋没的労働スタイル〉は,休職中に〈職務解放労働スタイル〉へと変化し,集団認知行動療法後は〈職務統制労働スタイル〉へと変化しており,各段階を連続的に捉えると,核となる現象特性として,《自己完結的労働スタイル》の緩和のプロセスが認められた。職場復帰を目指すうつ病休職者に対して集団認知行動療法を実施する際,《自己完結的労働スタイル》に関わる認知や対処行動(解決策)に着目し,緩和の方向を意識して介入することが目標になり得ると考えた。