著者
中条 利明 片岡 正治 山内 勧 葦澤 正義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.339-343, 1972
被引用文献数
5

鉢植えの5年生の富有カキについて, 8月上旬~9月中旬 (果実肥大の第II期と第III期の初期) における夜温および昼夜恒温の処理が, 果実の肥大ならびに品質に及ぼす影響を調べた.<br>1. 8月3日~9月21日の夜温処理 (150°, 20°, 25°および30°C) における, 処理終了時の果重は, 30°Cでとくに劣つた以外は各区の間で, はなはだしい相違がなかつた. 果皮の着色は25°Cおよび30°C区でいちじるしく進み, 淡黄緑色を呈し, クロロフィル含量は少なく, その傾向はとくに25°C区でいちじるしかった. 可溶性固形物含量もこれらの区で多かつた. しかし, これらの果実を11月10日に収穫すると, 果重, 果色および可溶性固形物含量の点よりみて, 形質の最もすぐれたのは25°C区であり, 最も劣つたのは30°C区であつた.<br>2. 8月6日~9月18日の間, 昼夜恒温の処理 (15°, 20°, 25°および30°C) をした結果, 処理終了時の果重および果皮の着色度は15°C区で最もすぐれ, ついで, 20°, 25°, および30°C区の順となつた. とくに30°C区では果重がいちじるしく劣り, 果皮も緑色であつた. 可溶性固形物含量も30°C区で最も劣つた以外に, 各区の間でいちじるしい相違がなかつた. 全糖に対する非還元糖の含量割合は, 処理温度の上昇につれて増加した. 10月25日の採取時には, 果重, 果色, かつ斑の発現, 可溶性固形物含量および全糖含量の点よりみて, 果実の形質は20°C区で最もすぐれ, 30°C区で最も劣つた.