著者
川俣 恵利
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-23, 1976 (Released:2007-07-05)
参考文献数
36
被引用文献数
1

当場果樹園に栽植中のナシに光化学スモッグによる被害と思われる症状が見られたので, その被害症状について環境バクロ室で発生した被害を参考にして調べた.1. ナシの徒長枝上の生育旺盛な葉にクロロシス, 褐変およびネクロシス (壊死) の症状が認められた.2. 被害を受けた葉は全クロロフィル, クロロフィルbが著しく減少した. また, 軽症葉ではデンプンが蓄積し, 被害が進行するにつれデンプンは徐々に崩壊した.3. 軽症葉ではO3吸収量は著しく増加したが, CO2放出量はやや増加した程度で, RQは健全葉より低かつた. 重症葉でもO2吸収量は増加したが, CO2放出量が減少したため, RQは健全葉の1/2程度であつた.4. 被害葉の無機成分含量は全般的に減少しており, なかでもNおよびMgは軽症でも著しく減少していた. しかし, 重症になるとP, K, Mgはあまり変化がみられなかつたのに対し, NとCaは減少が続いた.5. 被害により著しく減少したRQと全クロロフィル, クロロフィルaおよびbとの間には極めて高い正の相関がみられた. またNと全クロロフィル, Caと全クロロフィル, NとRQ, CaとRQとの間にも0.1%レベルの正の高い相関が認められた.6. 被害症状はオゾンないしPANによるものと類似しているように思われたが, 東京の光化学スモッグは亜硫酸ガスおよび粉じんが多く含まれ, 一酸化炭素や窒素酸化物が低い傾向にあり, 光化学反応のメカニズムが解明されていない現状では, 原因物質について明らかな確証を得るまでには至らなかつた.
著者
早田 保義 今泉 由紀子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.708-710, 2000-11-15
被引用文献数
3 6

わが国の代表的な4品種の観賞用ヒマワリについて, 日長が花芽分化と開花に及ぼす影響を調べた.4品種ともに播種から花芽分化までの日数は8時間日長で短縮された.しかし花芽分化から開花までの日数は, 'ビックスマイル'および'サンリッチオレンジ'では8時間日長と12時間日長で短縮され, 逆に'タイヨウ'では16時間日長で, 'バレンタイン'については16時間日長と12時間日長で短縮された.開花時の花序の直径は, 'サンリッチオレンジ', 'タイヨウ'および'バレンタイン'では処理区間での差がなかったが, 'ビックスマイル'では8時間日長で若干減少した.以上の結果より, 本実験で供試したヒマワリは品種によって花芽分化の最適日長と花芽発達の最適日長が異なることが明らかとなった.このことから, ヒマワリを栽培する場合に栽培期間の短縮を図るための日長処理時期は「播種時∿花芽分化期」と「花芽分化期∿開花時」の二つの時期に分け, それぞれの時期に適した最適日長処理を行うべきと推定された.
著者
松本 美枝子
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.206-214, 1988 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2

富山県等においてハクサイの主脈や葉脈に多数のゴマ状の黒色斑点の発生が認められた. この症状はゴマ症と呼ばれ, 発生の激しい場合は市場価格が著しく低下する. しかしゴマ症発生とその防止に関する報告は少ない.本報告ではまずハクサイ生育中のゴマ症発生の特徴を調査し, さらに発生部位とその周辺を形態学及び組織化学的に観察した.1. ‘ひばり’や‘耐病60日’に認められるゴマ症の発生は, その現象から2タイプに分けられた. タイプ1は未成葉で発生し, 初期生育が異常促進されることと密接な関係があった. タイプ2は成葉で発生し, 結球重に対する外葉重の割合の低下が関係していた.2. 形態学的には, 斑点発生に先だち, まず細胞内顆粒の肥大が認められ, その後細胞壁が褐変した. この細胞壁の褐変は, 細胞内顆粒や核の肥大と共にさらに拡大し, 周辺には原形質分離細胞が認められた.3. 組織化学的には, 斑点発生部位にクロロゲン酸の存在とポリフェノールオキシダーゼの活性が認められ,その周辺にポリフェノールの存在とパーオキシダーゼの反応が認められた.4. 褐変細胞の顆粒周辺に亜硝酸の分布が認められ, 細胞内顆粒の肥大が認められる部分と一致した.
著者
小原 香 坂本 由佳里 長谷川 治美 河塚 寛 坂本 宏司 早田 保義
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.267-269, 2006 (Released:2006-05-22)
参考文献数
8
被引用文献数
5 18

香草のコリアンダー (Coriandrum sativum L.) の異なる成長期における器官別香気成分の変動を検討した.コリアンダーの幼苗期の葉部と茎部のにおいは極めて類似しており,高いパターン類似率を示した.しかしながら,幼苗期の葉茎部と成熟期の葉茎部のパターン類似率は低下し,さらに,幼苗期から成熟期へと成長が進むに従い,葉と茎部の香気は異なるようになり,そのパターン類似率も著しく低下した.また,果実と他の器官におけるパターン類似率の低下は顕著であった.茎葉部の主要香気成分は,油っぽい,甘い,草様の香りを有する decanal, (E)-2-decenal, (E)-2-undecenal, 2-dodecenal, (E)-2-tetradecenal の 5 成分であり,種子にはほとんど含まれていなかった.また,種子の特徴的香気成分は,花様の爽やかな香りを有する linalool や α-pinene, γ-terpinene, D-camphor, geraniol の 5 成分であり,茎葉部にはほとんど含まれていなかった.茎葉部では,成長が進むに従い,heptanal, (E)-2-hexenal や octanal の様な青いフレッシュな香気が減少する傾向があり,生茎葉を香草として使用する場合は,コリアンダー特有の青臭い香りだけでなく,フレッシュな香気を併せ持つ幼苗期の茎葉部が適していると判断された.
著者
大東 宏 小野 祐幸 冨永 茂人 森永 邦久 工藤 和典
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.331-346, 1980

ウンシュウミカンの栽植様式. 樹形. 整枝並びにせん定などの樹形管理技術の合理化と品質向上対策を図るための基礎資料を得る目的で, 1977年の7月から同年12月にかけて, 開心自然形と柵仕立ての杉山系普通ウンシュウミカン成木の異なる着果部位における受光量, 気温及び果実温の日変化を調査した. 結果は以下のとおりである.<br>1. 各月の1日の総全周短波放射量は, 開心自然形樹では樹冠の南側上部において最も高く, 他の着果部位でも概して上部において南側とほぼ同じであったが, 柵仕立て樹では樹冠上部でも少なかった. この相違は, 柵仕立て樹が南北方向の生垣状樹形で, 日射程度が午前と午後とでかなり異なるためであり, 開心自然形樹では半球状樹相のため, 終日平均的に日射を受けることによるものであろう. 樹冠下部の1日全周短波放射量はかなり少なく, 特に北側下部では, 秋季には南側上部の2%程度に落ち込み, 夏季においても45%程度となった. 樹冠内部における1日の総全周短波放射量は低く, 特に柵仕立てでは南側上部の10~20%程度であった.<br>2. 開心自然形樹の着果部位ごとの気温は, 樹冠南側, 東側上, 下部, 内部では, 日の出から正午過ぎにかけて西側上, 下部, 北側上, 下部よりも早く昇温したが, その後日没まで, 西側上, 下部よりも低くなって徐々に下降した. 西側上, 下部では14時頃までは, 昇温が遅れぎみとなったが, その後16時頃までにかなり高くなり, 更に日没まで他の部位よりも高く, 特に東側上, 下部よりも明らかに高温で推移した. 北側上部では日の出から時期にもよるが16~18時頃まで昇温は遅れたが, その後日没まで東側上, 下部よりも高くなった.内側では午前中西側上, 下部, 北側上, 下部より昇温は早かったが, その後16~18時頃まではほぼ一定気温で推移し, 概して16時以降東側上, 下部よりも高かった.<br>柵仕立て樹の着果部位ごとの気温は, 午前中は樹冠の東側上, 下部の昇温が顕著であり, 西側上, 下部では東側よりも遅れて昇温した. 正午になると, 西側上, 下部において高くなり, その後日没に向って下降するものの, 他の部位よりも明らかに高く, 特に, 東側よりも西日の影響が強く現れ, 長く高温が持続するものと思われる. 樹冠内側では東西から太陽の影響を受けているため, 各部位の同時刻の気温の昇降変化のなかで常に中間的な推移を示した. ところが, 東側上, 下部では時期にもよるが14時頃から気温の低下が速くなり, 日没まで各部位中最低の気温を示した. このように, 柵仕立て樹では午前と午後とで気温分布がかなり異なっていることが明らかである. その理由として, 同樹形樹は南北方向の壁様樹相を呈し, しかも樹冠幅は狭いものの枝葉の着生密度が高いため, 大気が枝葉間を流れにくい状態となっていることから, 午前中は東側が, 午後は西側の気温が高まりやすくなると考えられた. そのため, 特に西側では西日の受熱量が貯えられやすいものと思われた.<br>3. 開心自然形樹の果実温は, 午前中, 東側上, 下部の温度上昇が早く, その後西側上, 下部が高くなった. 南側の果実温は午前中は, 東側よりも, また, 午後には西側よりもそれぞれ低くなった. 北側上部の果実温は, 午前中低かったが, 午後かなり過ぎると, 南側よりもむしろ高くなった. 北側下部では果実温の昇温は著しく遅れ, 日中は低かった. 内部でも北側下部とほぼ同様に果実温の上昇は遅れ, 午後も低くなった. 柵仕立て樹では午前中, 東側上, 下部, 西側上部の果実温は早く上昇し, 東側下部ではその後急下降したが, 正午以降再び上昇した. そして, 日没に向って下降した. 西側下部, 内部の果実温は正午過ぎまで他の部位よりも上昇は遅く,しかも最高温度も低く, 更に, 夕刻近くなると, 内部の低下は特に早かった. 西側下部では西日を受け, しかも地表面温度の影響を受けるためか, 果実温度の下降は遅れぎみとなった.
著者
土井 元章 斉藤 珠美 長井 伸夫 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.854-860, 1999-07-15
被引用文献数
2 3

1. 小花の30%が開花した段階で採花したシュッコンカスミソウ'ブリストル・フェアリー'の切り花を水にいけ20&acd;29℃下に保持したところ, 20℃下では小花は形を保ったま老化してドライフラワー状となり, 黒花とはならなかったが, 23℃以上の温度下では急激に花弁がしおれて萎縮し, 黒花となった.2. つぼみ段階で採花した切り花に対し0.2mM STSと4%ショ糖を含む前処理液で3時間の水あげを行っただけでは, 25℃下における黒花の発生を完全に回避することはできなかった.前処理に引き続いて0.26mM 8-hydroxyquinoline sulfate (8-HQS)と4%ショ糖を含む開花用溶液にいけて糖を与え続けることにより, 小花の開花が促されるとともに, 25℃下でも黒花発生をほぼ抑えることができた.収穫から30%開花までの日数は, 20℃で5日, 25℃で3日程度を要した.また, 開花を促す際に20℃として光強度を15.0W・m^<-2>にまで高めることにより, 切り花品質が向上し, その後水にいけた場合の品質保持期間が延長された.3. 切り花の呼吸速度は温度に対して指数関数的に増加し, 20℃での呼吸速度は約210 μmol CO_2・hr^<-1>・100 gfw^<-1>で, Q_<10>=1.5となった.4. 25℃下で水にいけた切り花の小花では, 20℃下でいけたものに比べて, 2日目および4日目のブドウ糖, 果糖含量が1/2&acd;1/3, ショ糖含量が1/4程度にまで減少していた.また, 25℃下で開花用溶液にいけた切り花では, これら3種類の糖含量が高く推移し, このことが黒花の発生を抑制しているものと考えられた.5. つぼみ切りした切り花は, 出荷段階にまで開花を促した後の品質保持期間を低下させることなく, STS処理後ショ糖溶液による湿式で4週間程度の貯蔵が可能であった.
著者
西山 一朗 福田 哲生 大田 忠親
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.157-162, 2004-03-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
10 20

Actinidin, a cysteine protease in kiwifruit, affects the taste, allergenic properties, and characteristics for processing the fruit. The actinidin concentration and the protease activity in the fruit juice of six Actinidia arguta and two A. rufa cultivars were determined by quantitative sodium dodecyl sulfate- polyacrylamide gel electrophoresis and spectrophotometric assay, using L-pyroglutamyl-L-phenyl-alanyl-L-leucinep-nitroanilide as a substrate. In 'Shinzan', 'Hirano', 'Gassan', and 'Mitsuko', both actinidin concentration and protease activity in the juice were much higher than those of 'Hayward', the most common kiwifruit cultivar, whereas protease activities in 'Kosui', 'Awaji', and 'Nagano' were significantly lower. These results indicate that there are varietal differences in actinidin content in the fruit ofActinidia species.
著者
中尾 義則 平 知明 堀内 昭作 河瀬 憲次 向井 康比己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.275-280, 2005-07-15
被引用文献数
1

イチョウは雌雄異株であるが, 現在, 雌雄の判別は生殖器官の観察によるしかない.そこで, 染色体における雌雄の違いについて調査した.染色体数は雌雄ともに24本(12対)であった.付随体を持つ染色体の数は, 雄株と雌株それぞれ3本と4本であった.これら付随体の2本はもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕にあり, その他の雄株の1本と雌株の2本は次中部動原体型染色体の長腕にあった.CMA染色の結果, 雌雄ともに2本のもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕と2本の次中部動原体型染色体の長腕のそれぞれの二次狭窄部に, 合計4か所の黄色いバンドが認められた.5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISH解析で両領域ともに二次狭窄部に位置し, 雌雄間に違いはなかった.また, これらの位置はCMAバンドと同様の場所に検出された.したがって, イチョウの雌雄性の判別は付随体の数によって判別できるが, 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISHシグナルやCMA染色では判別できないことが明らかとなった.
著者
望月 龍也 石内 伝治 伊藤 喜三男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1000-1006, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

遺伝的に多様なトマト30品種・系統を供試し, 完熟果実におけるグルコースおよびフルクトース含量の作期および果房位による変動特性の差異を検討した.トマト品種・系統間における両成分含有量の相対的関係は, 栽培・環境条件の変動に対して比較的安定していた.また全体を通じてグルコース含量とフルクトース含量には高い正の相関がみられたが, 糖含量が高くなるほど全体に占めるフルクトース含量の比率は低くなる傾向がみられた.全品種・系統をこみにした作期・果房位ごとの平均値に対する, 対応する作期・果房位における糖含量の回帰分析から, 供試材料は, (1)作期・果房位ごとの糖含量が全供試材料の平均値とほぼ平等して変動する品種・系統, (2)作期・果房位間の変動が全供試材料の平均より大きい品種・系統, (3)作期・果房位間の変動が小さく安定した糖含量を示す品種・系統, (4)回帰直線への回帰が有意でなく糖含量変動が全供試材料の変動傾向と異なる変動を示す品種・系統が認められたが, 糖含量が高くかつ変動の小さい品種・系統は見出せなかった.
著者
中村 俊一郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.367-375, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

1970, 71年の2年にわたり, イチゴの10余品種を採種してその発芽性を調査した.1. どの品種も強い光感性を示し, 暗黒下の発芽は不良であつた. 発芽温度については変温が著しく促進効果を示した. 恒温では25°C付近が適温であつたが, 20°Cから30°Cにわたつて比較的幅広い適温帯があつた.2. 採種後約1年間では休眠性の変化はみられず, 各品種とも強い休眠性を維持した.3. 薬品処理では硝酸カリが最も効果を示し, エスレルおよびジベレリンも相当程度有効であつたが, チオ尿素はわずかな効果しか示さなかつた.4. 低温処理は短期間では効果がなく, 1か月以上の処理が有効で, 3か月間処理すると大きな発芽促進効果を示した.5. 濃硫酸処理を行なつて種皮を腐蝕すると発芽が相当に促進され, イチゴ種子の休眠には種皮が大きな役割をもつていると考えられる.6. 近赤外光は強い発芽抑制作用を示し, 変温を行なつても発芽率は0%であつた. ただし低温処理は近赤外光の抑制作用に相当程度うちかつことができた.7. 種子は乾燥または低温下で良好に貯蔵された.
著者
浅尾 俊樹 谷口 久美子 冨田 浩平
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.519-521, 2001 (Released:2011-03-05)

養液栽培された葉菜類について、自家中毒の種間差異について検討した。6科16種の葉菜類を活性炭添加および無添加の条件において培養液非交換で栽培した。葉菜類の収量にあたる地上部の生体重は、パセリ、セルリーミツバ、リーフレタス、サラダナ、葉ゴボウ、シュンギク、チンゲンサイおよびケールで活性炭添加区に比べて無添加区で劣った。活性炭無添加による生育抑制はパセリで最も著しかった。コマツナ、ハクサイ、葉ダイコン、ネギ、シソおよびホウレンソウでは活性炭無添加による生育の抑制はみられなかった。以上より、セリ科、キク科および一部のアブラナ科に自家中毒を示す葉菜類がみられた。
著者
小原 香 坂本 由佳里 長谷川 治美 河塚 寛 坂本 宏司 早田 保義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.267-269, 2006-05-15
被引用文献数
1 18

香草のコリアンダー(Coriandrum sativum L.)の異なる成長期における器官別香気成分の変動を検討した.コリアンダーの幼苗期の葉部と茎部のにおいは極めて類似しており,高いパターン類似率を示した.しかしながら,幼苗期の葉茎部と成熟期の葉茎部のパターン類似率は低下し,さらに,幼苗期から成熟期へと成長が進むに従い,葉と茎部の香気は異なるようになり,そのパターン類似率も著しく低下した.また,果実と他の器官におけるパターン類似率の低下は顕著であった.茎葉部の主要香気成分は,油っぽい,甘い,草様の香りを有するdecanal,(E)-2-decenal,(E)-2-undecenal,2-dodecenal,(E)-2-tetradecenalの5成分であり,種子にはほとんど含まれていなかった.また,種子の特徴的香気成分は,花様の爽やかな香りを有するlinaloolやα-pinene,γ-terpinene,D-camphor,geraniolの5成分であり,茎葉部にはほとんど含まれていなかった.茎葉部では,成長が進むに従い,heptanal,(E)-2-hexenalやoctanalの様な青いフレッシュな香気が減少する傾向があり,生茎葉を香草として使用する場合は,コリアンダー特有の青臭い香りだけでなく,フレッシュな香気を併せ持つ幼苗期の茎葉部が適していると判断された.
著者
陳 介余 宮里 満 石黒 悦爾 難波 直彦
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.951-956, 1993
被引用文献数
1

本報では打撃力による農産物の硬度を非破壊的に測定する方法を提案した. 簡単な弾性モデルを用いて打撃力を解析した結果, 特性値kは農産物の弾性係数などの内部品質だけに影響され, 農産物の大きさと打撃力の強さに影響されないので農産物硬度の判定指標とすることが可能であることが示された.<BR>また, カボチャと桜島大根を供試材料として, 打撃装置を利用して統計的な実験をした結果, その硬度とk値との間にそれぞれ0.93, 0.92の相関係数が得られた. 従って, 本方法はカボチャと桜島大根の硬度を非破壊測定するには可能だと思われる.
著者
足立 勝 中林 健一 東 理恵 倉田 裕文 高橋 芳弘 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1139-1145, 1999-11-15
被引用文献数
4 7

暗所下においてエチレン処理したカイワレダイコン(Raphanus sativus L.)子葉の脱緑機構を明らかにするために, クロロフィルαの分解を子葉のタンパク質を用いて検討した.粗酵素はエチレンにより脱緑が誘導されたカイワレダイコン子葉から調製した.クロロフィルα分解酵素は, H_2O_2-2, 4-ジクロロフェノール/pクマリン酸依存であった.クロロフィルα分解反応の最初の分解産物はHPLCとHPTLC分析により分析された.その分解産物が標準C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαと同定された.C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成反応はアスコルビン酸(2mM)そしてKCN(2mM)の添加により完全に阻害された.しかし, 嫌気性条件下では阻害されなかった.つまり, C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成酵素は, H_2O_2を利用した1原子酸素添加反応を触媒するペルオキシゲナーゼまたは, ペルオキシゲナーゼ作用を持つペルオキシダーゼの一種であると考えられる.さらに, 三次元蛍光分光解析により無色の蛍光クロロフィル代謝産物(FCC : Ex 350 nm/Em 455 nm)がクロロフィルαの分解につれて生成されることが明らかとなった.以上の結果よりクロロフィルαはカイワレダイコン子葉より調製したタンパク質により, 以下の反応で分解されることが示唆された.Chl α→C-13^2-HO Chl α→→colorless Rs-FCC(無色の蛍光クロロフィル代謝酸化開環産物).
著者
桜井 直樹 岩谷 真一郎 寺崎 章二 山本 良一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.31-35, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
13
被引用文献数
27 34

キュウリ3品種の肉質 (シャキシャキ感) を音響的に測定した. ガラスシリンジのピストンと先端を尖らせたプローブの間にピエゾ圧電素子をはさみ, シリンジに水をポンプで送り込みながら, プローブを毎分35 mmの速度でキュウリに挿入し, プローブが受信した音響的振動をピエゾ素子で直接検出し10000 Hzまでの信号を測定した. 振動信号は高速フーリエ変換し, 振動強度の周波数スペクトルを得た. 1~6 kHzの間の振動強度に, 品種間, 部位別の違いがもっともよく現れた. そこで, 高周波成分の振動強度を強調し, 全ての周波数成分を積分した値を計算し, シャキシャキ感を示す新しい指標“シャープネス”を提案した. シャキシャキ感を示す“シャープネス”が農産物の食感をどれくらい定量的に評価できるかについて議論した.
著者
岩堀 修一 崎山 亮三 高橋 和彦
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.197-204, 1963 (Released:2007-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

1. トマト福寿2号を用いて, 6段階の苗齢のそれぞれについて, 30(対照区), 35, 40, 45°Cの高温処理を1日3時間ずつ連続5日間行ない, その後の生育, 着果を調べた。2. 苗齢VI(本葉14~15枚)の45°C区を除いて生育障害はなかつた。3. 本葉5枚までの苗は高温処理で着果率は減少しなかつた。しかし, 本葉8, 11, 14~15枚の苗は高温により着果率, 収量ともに減少し, その程度は処理温度が高いほど, また苗齢が進んでいるものほど著しかつた。本葉8枚の苗は第1花房, 11枚の苗は第1, 2花房, 14~15枚の苗は第1~3花房までが障害をうけた。4. 発育のステージを異にする花蕾に対する高温の影響をみると, 開花15日前~開花9日後ごろの花蕾が高温の影響をうけ, とくに開花5日前ごろと開花1日後は着果率の減少がはなはだしかつた。5. 開花中または開花後高温をうけた花からは小粒果が出現した。それ以外の奇型果の出現はみられなかつた。
著者
伊達 修一 寺林 敏 松井 浩平 並木 隆和 藤目 幸擴
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.485-489, 2002-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

水道水を用いて作成した培養液による水耕栽培で, しばしば発生する根部褐変の原因について調査した.サラダナの根部褐変は次亜塩素酸の形態で存在する水道水中の残留塩素とアンモニウムイオンが存在する培養液でのみ発生し, どちらか一方しか存在しない培養液では発生しなかった.また, 次亜塩素酸あるいはアンモニウムイオンどちらかを含む培養液に交互に移植しても根部褐変は発生しなかった.従って, 根部褐変は次亜塩素酸とアンモニウムイオンにより生成するクロラミンにより発生するものと考えられた.さらに培養液中の残留塩素濃度の低下は, 光条件下で鉄イオンの存在により促進された.
著者
今津 正 藤下 典之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.293-302, 1962 (Released:2007-05-31)
参考文献数
34
被引用文献数
8 9

栽培および野生フキの中には形態や生態から, 倍数性のような染色体数の違うものがあるように思われたので, 栽培フキの4品種と, 北海道から九州屋久島にいたる201か所から集めた野生フキとについて, 染色体数と形態, 生態あるいは分布との関係を調べ, 染色体数から栽培フキと野生フキとの関係を考察した。1. 根端細胞で58本と87本の株があり, 後者はその不稔性やフキ属の染色体基本数から3倍体と考えられ, その成因は非減数の染色体をもつた配偶子と正常に減数した染色体をもつた配偶子との合一によるものと推察された。2. そ菜用品種の“愛知早生ブキ”と“水ブキ”は3倍体, 草姿の巨大性を特徴とする加工用の“アキタ大ブキ”は2倍体, 地方品種の“アキタ青ブキ”には3倍体と2倍体とがまざつていた。3. 野生フキのうち2倍体は本邦全土に, 3倍体は北海道をのぞく他のすべての地域に分布し, 後者は緯度の低い西日本, 特に南九州により多く自生する傾向が強かつたが, 両者が入り乱れて生えている場所もあつて, それぞれの自生地の立地条件には差が認められなかつた。東北や北海道地方に分布しているアキタブキ (subsp.giganteus KITAM.) はいずれも2倍体であつた。4. 栽培と野生あるいは株の雌雄の如何にかかわらず, 3倍体のフキには2倍体のものより萠芽が早くて,葉も大きく, 草勢も強いというような実用上すぐれた特性をもつた株が多かつた。5. 雌株にも雄株にも2倍体と3倍体とがあつたが,3倍体の雄株の小花が短花柱花となる以外, とくに倍数化による性表現の変化は認められなかつた。6. 3倍体のフキは不稔性で, 雄株は正常花粉を形成せず開葯もしないし, その雌株は充実種子を稔実せず花穂の丈も低いので, 雌雄の株とも2倍体とは容易にみわけることができる。7. 現在のそ菜用品種は早生, 強勢, 多収などの実用上すぐれた特性をもつていた3倍体の株が野生フキの中から選ばれ, 今日までその株の地下茎の分割増殖がくり返されてきたものらしい。
著者
岡崎 桂一 村上 欣治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.405-411, 1992 (Released:2008-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
3 7

チューリップの自家不和合性を打破する目的で, 促成時期のちがいと自家不和合性の強弱の関係を調査したほか, 柱頭を花柱から切り放し, その切断面に自家花粉を受粉する柱頭切除受粉法および柱頭を40°~50°Cの温湯に浸漬する高温処理を検討した.1.チューリップ5品種を2月から4月にかけて促成栽培と露地栽培を行い自殖したところ, 露地栽培の自然開花時では全品種とも完全な自家不和合性であったが, 促成栽培では5品種中4品種は自殖によって多数の種子が得られた. 促成栽培を行うことによって,自家不和合性が弱まることが示された.2.柱頭切除後の受粉によって, 供試した5品種すべての自家不和合性が部分的に解消され, 1子房当たり8~81個の自殖種子が得られた. 柱頭切除法によって, 極めて効率よくチューリップの自家不和合性が打破されることが明らかになった.3.柱頭を温湯に浸潰する高温処理法により自殖したところ, 供試した3品種のうち1品種で, 50°C, 1分間処理により24花交配中2花, 3分間処理により24花交配中4花結実し, 低率ではあるが自殖種子が得られた.これらの方法は, チューリップの自殖系統育成法として実用的な技術であると推察された.