著者
中杤 昌弘
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.58-75, 2021 (Released:2021-10-05)
参考文献数
69

近年の測定技術の発展は、ゲノム情報だけでなく様々なエピゲノム情報の取得を可能にした。中でもDNAメチル化は、他のエピゲノム情報の担い手と比べて安定的に遺伝子発現制御を行う仕組みである。ヒトのDNAメチル化は、疾患の有無や、これまでの生活習慣によって変動する。このことから、DNAメチル化は種々の疾患の病態解明のカギになると考えられ、さらに診断・発症リスク評価等のバイオマーカーとしての活用も期待されている。DNAメチル化アレイによって、ヒトゲノムのDNAメチル化プロファイルを比較的安価に取得できるようになり、大規模なエピゲノムデータの解析が可能になった。本稿では、エピゲノムワイド関連研究(Epigenome-wide association study, EWAS)に焦点を当て、DNAメチル化のデータ形式や、頻用される解析方法及び解析上の注意事項について概説する。また、近年提案されたアプローチや残されている課題についても概説する。