著者
中松 満始
出版者
千葉県立現代産業科学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:東京芸術大学所蔵の、国会議事堂正面他ブロンズ製扉製作に関する資料の基礎研究を行った。本扉は大蔵省営繕管財局から委嘱を受け東京美術学校(現東京芸術大学)が製作した。○研究方法:東京芸術大学所蔵の、国会議事堂正面扉に関する第一次資料をデジタルカメラで撮影しデジタルデータ化し、その全てについて精読後、特に重要な資料をタイプした。○研究成果:資料は全2冊に綴られ保存されていた。1冊目367枚、2冊目218枚、計585枚の資料を確認し、内容別に以下の4区分に大別整理した。1)大蔵省営繕管財局と東京美術学校との連絡記録2)東京美術学校と、ブロンズ扉地金鋳造会社である、住友伸銅鋼管との連絡記録3)東京美術学校内に設置した、扉製作工場に関する記録4)製作に伴う職員雇用等に関する記録1)の資料を整備し、大蔵省営繕管財局が委嘱先(東京美術学校)に提示した「仕様書」は、製作を請負った東京美術学校が事前に作成提出した「工作仕様書」を、ほぼそのまま転用していたことがわかった。また、扉製作は2回に分け学校へ依頼があり、1回目(正面玄関正面、側面、境界、衆議院玄関、参議院玄関の各扉)の工事のあと、2回目(総理大臣、大臣、秘書官室の各扉)の製作依頼・工事が実施されたことがわかった。つまり、東京美術学校による国会議事堂内ブロンズ製扉工事は、正面玄関正面扉(5組)、側面扉(2組)、境界扉(1組)、衆参両議員玄関扉(各院共3組)、総理大臣室テラス側扉(1組)、大臣室テラス側扉(2組)、秘書官室テラス側扉(1組)が、その全体であるとわかった。2)の資料を整備し、東京美術学校が住友伸銅鋼管から購入したブロンズ量(33t)とその発注回数(7回)がわかった。3)の資料を整備し、学校内に39坪の仮設工場を設置、次に担当教官であった津田信夫(つだしのぶ)の自宅工房を借用、さらに校内に3棟増築したことがわかった。また、仮設工場設置の記述文から立体図を作成し、各工場の外観図による復元を行った。4)の資料を整備し、製作に伴う雇用等については、学校教官2名を中心に、経理担当1名、製造技術担当1名のもとで、50名の雇用者が関わっていたことを確認した。さらに、本扉の図面製作(デザイン)は、学校教官であり製作責任者であった、津田信夫が行ったことがわかった。