著者
阿部 元 沖野 功次 迫 裕孝 柴田 純祐 小玉 正智 中根 佳宏
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.1100-1103, 1992-05-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
20

甲状腺好酸性細胞腫は,好酸性顆粒を多数含む特徴的な細胞からなる腫瘍で,比較的稀な疾患である.著者らは5例の甲状腺好酸性細胞腫を経験したので,臨床的検討を加えた.発症頻度は甲状腺腫瘍初回手術症例の2.4%にみられ,全例女性であった.年齢は38歳から66歳の平均53.8歳であった.症状は前頸部腫瘤のみで,圧迫症状などは認めなかった.甲状腺機能は全例正常であり,頸部軟線撮影,超音波検査,シンチグラムでは特徴的な所見を認めず,良性,悪性の鑑別は困難であった.腫瘍核出術のみは2例,葉切除術が3例に施行された.良性,悪性の鑑別は細胞形態からでは困難であり,被膜浸潤,脈管侵襲の有無で判断した結果,良性が4例,悪性は1例であった.全例とも術後経過良好で,再発を認めていない.