著者
小川 弘俊 大村 豊 大橋 大造 入谷 勇夫 加藤 政隆 待木 雄一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.250-253, 1986-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

従来無毒蛇と考えられていたヤマカガシによる蛇咬傷で,著明な出血傾向をきたし脳出血で死亡した症例を経験した. 症例は14歳男性で,ヤマカガシに左手背を咬まれ,数十分後より頭痛が出現,続いて局所が腫脹,約16時間後より出血傾向が出現,約19時間後に昏睡状態となり,さらにその数時間後呼吸停止をきたした.頭部CTスキャンで左側頭葉および後頭葉に脳出血を認めた.交換輸血などを行ったが軽快せず,受傷後10日目に死亡した. ヤマカガシ咬傷では,上顎後部のDuvernoy腺より分泌される毒液が体内に入ることにより出血傾向がひきおこされる.本邦では坂本の症例以来自験例を含めて8例の報告例があり,全例に出血傾向が認められる.咬傷患者に対しては,出血傾向の出現に注意し,異常があれば早期に交換輸血や抗毒素血清の注射などが必要である.
著者
江崎 治夫 安田 克樹 武市 宜雄 平岡 敬生 伊藤 利夫 藤倉 敏夫 矢川 寛一 林 雄三 西田 俊博 石丸 寅之助
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.1127-1137, 1983-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

広島での原爆被爆者からの甲状腺癌の発生を知るため研究を行った.対象は統計処理を容易ならしめるよう,性別,被爆時年齢別,被爆線量別にあらかじめ定められた固定集団である放射線影響研究所の寿命調査拡大対象を用い, 1958年から1979年までの22年間に診断,或いは剖検により発見された甲状腺癌を調べ,被曝放射線量との関係を明らかにした. 75,493人の中から125人の臨床的甲状腺癌が発生した.男15人,女110人で,人口10万人対粗年間発生率は男2.7, 女12.4で男女共,線量の増加と共にリスクが増加する.若年女性に特に,この傾向が著るしい.期待数に対する観察数の比(O/E)をみると,男女別でも,男女合計でも,線量の増加と共に甲状腺癌が増加する.線型反応についての検定を行うと,女性及び男女合計では線量効果がみとめられた.又年齢が若い程線量効果が明らかである. 50rad以上被爆した群の対照群に対する相対性リスクは4.2で,男女差はないが男性は数が少い為,女性にのみ有意である.年齢別では20歳末満のリスクが7.9と高く,統計的に有意である.統計的に有意な回帰係数が求められた20歳末満の女性の年間1 rad当りのリスクの増加は100万人対約3.4である. 同期間に剖検された4,425人中155人に潜伏癌がみられた. 50rad以上の群の相対的リスクは1.9で有意に高く, O/E比は男1.6, 女1.8でほぼ等しいが,女子にのみ有意であった.
著者
吉田 信裕 舟橋 啓臣 今井 常夫 田中 勇治 飛永 純一 山田 二三夫 和田 応樹 束村 恭輔 森田 孝子 高木 弘
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1296-1300, 1995-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21

1979年から1992年までに,当教室では甲状腺分化癌手術を392例経験したが,このうち20歳未満の若年者は18例であった.若年者症例にも成人と同様,「(1)甲状腺全摘,(2)両側頸部郭清,(3)上皮小体自家移植」の基本術式を原則として施行してきた.腫瘍径やリンパ節転移などを成人と比較,また術後経過についてQuality of lifeを含め追跡し,当教室の術式の是非を検討した.腫瘍径はt2以上が全体の約80%を占めたが,成人は60%に留まった.またリンパ節転移は約90%の症例に認めたが,成人例は76%であった.若年者は手術時に成人より進行していたが,18例のうち1例も再発を認めていない.また術後の合併症は,軽度の上皮小体機能低下症1例と術創ケロイド3例のみであった. 10歳以下の症例の成長・発育にも何ら問題はなく,適齢期に達した女性5症例のうち3例は児を設けている.充分な根治性と良好な術後経過を期待できる,妥当な術式と考えられた.
著者
伊藤 勅子 小松 大介 小山 洋 坂井 威彦 藤田 知之 中田 岳成 熊木 俊成 青木 孝學 春日 好雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.1853-1856, 2002-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

甲状腺癌のほとんどを占める乳頭癌は分化度の高いものが多く,早期発見および適切な外科治療により治癒が期待できる.今回われわれは, 1997年4月から2002年3月までの5年間の当院人間ドックにおける触診での甲状腺癌検診の成績および外科治療を含めた臨床的検討を行った.発見率は総受診者25,139人中58人(0.23%)で,男性は17,443人中11人(0.06%),女性は7,696人中47人(0.61%)であった.最大腫瘍径が1cm以下のいわゆる微小癌は25例(43%)であった.組織型は乳頭癌は56例(96%)で,濾胞癌,髄様癌はそれぞれ1例(2%)であった.リンパ節転移陽性は27例(47%)に認められた.いずれも手術時合併症はなく現在再発を認めていない.人間ドックでの早期発見により侵襲,合併症が少ない治療が可能で患者のQOLは向上することが期待され,検診の意義は十分にあると考えられる.
著者
武藤 功 音羽 剛
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.1126-1130, 1987-08-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
16

魚骨片を誤飲する機会は多いと考えられるが,この魚骨片が体外与排泄されず,消化管を穿通したという症例の報告は比較的少ない. 最近,誤飲された魚骨が,消化管を穿通し膿瘍あるいは腫瘤を形成し,手術した5症例を経験した. 1例は食道を穿通し縦隔洞膿瘍を形成し, 1例は直腸壁を穿通し肛門周囲膿瘍を形成,他の3例は結腸を穿通し肉芽腫を形成していた.結腸穿通の1例で放線菌症を認めた.結腸穿通により形成された肉芽腫の場合,悪性腫瘍との鑑別が困難な事があるがCT所見で,肉芽腫の場合,腫瘤陰影の中にひときわ明瞭なhigh densityの直線部分がある事が重要な所見に思われた.全例,切開ドレナージないし腫瘤摘出により完治し再発は認めていない.尚,個々の症例についての症状,診断,治療について若干の文献的検討を加え報告する.
著者
石田 常博 小川 徹男 星野 和男 阿部 展祐輝 佐藤 浩司 中村 敬 細野 治 飯野 佑一 川井 忠和 泉雄 勝
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.1191-1197, 1986-10-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

群馬県下における甲状腺癌集団検診を1980年から県対ガン協会と協力し,乳癌検診と同時に実施してきたので, 5年間の成績結果を報告する.受診者総数は91.787名(実人数54,625名)で,一次検診の異常者は4.6%,要精検者は2.4%であった.甲状腺癌は133例(乳頭癌117例,濾胞癌15例,髄様癌1例)発見され,発見率は0.14%,実人数に対して0.24%であった.初回受診者は繰り返し受診者よりも2倍発見率が高い.集検癌の82%が甲状腺腫に気付いていなかった.腫瘤径は2cm以下が65.5%を占め, 1cm以下の微小癌が22.6%にみられた.教室外来例に比して,リンパ節転移程度も少なく,甲状腺内に限局しているより早期の癌が多かった.転帰はリンパ節再発1例,残存甲状腺再発1例,交通事故死1例の他は健存であり,きわめて予後良好であった.甲状腺癌の集団検診は早期発見,早期治療上,有意義であり,今後さらに普及させるべきものと思われる.
著者
井原 司 村上 英嗣 門脇 康二 田中 英二 岡部 正之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.1511-1514, 2003-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
6

症例は90歳,女性.臍部の腫脹と疼痛を主訴に当院を受診.臍部に黒色の3cm大の臍石を認め圧痛と臍周囲に発赤を伴っていた.生活歴において現在までに臍を洗浄した記憶はなくまた手術既往もない.腹部単純レントゲン検査では所見はみられなかったが,腹部CT検査では臍内に層状の3cm大の結石を認めた.治療は臍孔より絞り出すようにして摘出を試みるも困難だったため,臍孔周囲に局所麻酔を行い,臍孔を十分に開大し摘出した.臍石径は27×26×13mmであった.摘出した後の臍窩には不快な悪臭のある垢が存在し臍炎を併発していた.臍石の報告は現在まで数件の報告しかみられない.さらに摘出に難渋するほどの巨大臍石の報告は現在までにみられず非常に稀な症例と考えられる.
著者
今泉 宗久 内田 達男 新美 隆男 内田 安司 阿部 稔雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.658-663, 1989-04-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
18

輸血が免疫能低下に関与することは,腎移植等で知られている.そこで,肺癌手術例の予後における輸血の影響につき,当教室で手術を行った肺癌症例のうち評価可能な150例を対象として検討した.1986年6月現在,生存66例,死亡84例であった.P-病期Iは63例,IIは20例, IIIは60例, IVは7例であった.切除例は121例,試験開胸例は29例で,うち輸血例は91例であった.これらの症例の生存率はCaplan-Meier法に基づき,有意差はLogrank testによって統計的に処理された.術後5年生存率は無輸血群48.8%,輸血群30.2%であり(p=0.129),輸血量による差は認められなかった.P-病期別の5生率は病期Iでは無輸血群69.3%,輸血群62.5%で,病期II+IIIでは無輸血群30.8%,輸血群6.5%であった(p=0.125).手術程度別には,切除例,特に葉切例での5生率は無輸血群75.0%,輸血群49.8%で両群間に有意に差が認められた(p<0.05).従って,輸血は肺癌切除例の予後に悪い影響を与え,肺癌手術に際して不心要な輸血はなるべく避けるべきであると考えられた.
著者
八木田 旭邦 竹内 教能 伊藤 久 北島 政樹 立川 勲
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.185-191, 1987-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
23

腎移植時の輸血が,免疫寛容を誘導し移植腎の生着率の向上に寄与している事が知られている,この事実は,悪性腫瘍の外科的切除の際の輸血が,免疫寛容を惹起し逆に腫瘍の再発並びに増殖を促進している可能性も示唆している. stage II以上の結腸癌根治手術51例(輸血例36例,非輸血例15例)並びに乳癌根治手術51例(輸血例24例,非輸血例27例)の輸血の有無による予後をKaplan-Meier法で比較した.結腸癌根治手術の輸血例の生存率は,非輸血例に比較して明らかに低下している(p<0.0001).乳癌根治手術の輸血例の再発率は,非輸血例と比較し有意に高かった.また,結腸癌非根治手術例でも輸血例の予後は,非輸血例に比べ明らかに低下していた.輸血量と予後との因果関係を検討したが,輸血量との相関は得られなかった.この事実から手術前後の輸血が結腸癌並びに乳癌の予後不良因子として作用しており,輸血量との相関がない事から輸血の有無そのものが重要と考えられた.
著者
平松 和洋 関本 衛 長谷川 洋 中村 隆昭
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2125-2129, 1993-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

症例は62歳女性,腹痛,嘔気,嘔吐を主訴として入院した.小腸造影では小腸に憩室を思わせる造影剤の貯留を認め, CTでは骨盤内に充実性の腫瘤を認めた.これらの検査所見より小腸憩室由来の腫瘍を疑ったが第4病日に穿孔性腹膜炎を併発したため手術を施行した.回盲部より約70cm口側,腸間膜対側にMeckel憩室が存在し,その先端に鶏卵大の腫瘍を認め,憩室中央には穿孔を認めた.明らかな他臓器転移は無かった. Meckel憩室を含めた小腸部分切除を施行した.腫瘍は病理組織学的には高分化~未分化腺癌よりなる多彩な像を呈していた.憩室内には異所性胃粘膜が存在し腫瘍はこれより発生したものと推察された.化学療法を施行したが術後9ヵ月で癌性腹膜炎により死亡した. Meckel憩室癌の本邦報告例14例の集計を行い若干の考察を加えた.
著者
岡村 貞夫 佐々木 政一 勝見 正治 谷口 勝俊 田伏 洋治
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.113-118, 1984-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
22

当科及び和歌山県並びに周辺地区の関連16施設において手術を受けた消化性潰瘍患者2,175名について血液型と潰瘍の関係を調査し,和歌山県の昭和56年度献血者69,097名の血液型分布を対照に検討した. 調査項目は個人的背景に重点をおき,手術適応別,潰瘍家族歴及び初発年齢別に分類し調査した. その結果,対照群ではA型37%, B型23%, AB型10%, O型30%であるのに対し,潰瘍2,175例では, A型33%, B型21%, AB型8%, O型38%とA-O型分布の逆転がみられた(p<0.01). この傾向は胃潰瘍(GU)及び十二指腸潰瘍(DU)いずれにおいても認められ,手術適応別では出血性GUにおけるO型の頻度が47%と最も著明に増加していた(p<0.01). 家族歴を有する潰瘍患者は平均初発年齢が約10歳若く, GUでは家族歴のない潰瘍群と異り対照群と殆ど同様のA型優位の分布を示した. 又初発年齢別の検討でも30歳以下の年齢で発症したGU 116例は家族歴を有するGUと同様にA-O型分布の逆転がみられず,対照群との間に殆ど差を認めなかった. O型頻度の有意な増加はDU及び31歳以後に発症するGUのみに明らかであり, early onset typeのGUは血液型以外の因子が発症に関与している事が示唆された.
著者
鳥井 彰人 末永 裕之 寺嶋 康夫 日比野 治生 奥田 哲也 小寺 泰弘 長谷川 満 松尾 尚史 服部 正憲 余語 弘
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.1148-1153, 1987

交通事故によって発生した膵完全断裂にARDS (adult respiratory distress syndrome)を合併した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.<br> 症例は40歳の男性で,泥酔状態で乗用車運転中の正面衝突事故にて受傷した. CT等の諸検査によって膵損傷が疑われたが,全身状態が比較的落着いていたため保存的治療を開始した.受傷後3日目より低酸素血症及び呼吸困難が出現し,更に胸部単純レントゲン写真の所見等によりARDSと診断した.レスピレーターによる呼吸管理を行ったが効果無く,状況の改善をはかるべくその原因と思われる膵損傷に対して手術を施行したところ, ARDSは次第に改善し,軽快退院した. ARDSの治療には原因の除去が最も重要であるものと思われた.
著者
新居 清美 宮内 昭 岡本 公子 前田 昌純
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.81-83, 1992

1家系内に3例の甲状腺乳頭癌を認めた家系を報告する.患者は1人の女性とその娘2人である. 3名とも健康で,放射線被曝歴はない.発端者は甲状腺両側に腫瘤のある53歳の女性で,母親が,気管に浸潤する甲状腺癌のため67歳のとき甲状腺亜全摘気管環状切除を行っていた.家族性発生がみられたため家系内の13名に対して家族調査を行ったところ, 46歳になる発端者の妹に小さい甲状腺乳頭癌が見つかった.家族性発生していることを考慮して, 2例ともに甲状腺全摘,両側頸部郭清を行った.病理組織学的には2例とも両葉に乳頭癌が認められた.家族性発生した甲状腺乳頭癌には甲状腺全摘が適切であることが示唆された.また,早期発見のためには家族調査が重要であると考えられた.
著者
藤枝 裕倫 水野 伸二 徳丸 勝悟 日比野 正幸 玉内 登志雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2306-2311, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は39歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.左上腹部に小児頭大の腫瘤が指摘され当院受診となった.腹部超音波検査では,94×92×111mm大のhigh echoとlow echoが混在した腫瘤が見られた.CT検査では,腫瘤の内部は低濃度と高濃度がモザイク状に混在していた.内部には造影効果は見られなかった.MRIT1強調像では,腫瘍の大半が高信号であり,MRIT2強調画像では隔壁様の構造を伴う高信号と低信号域が混在していた.造影MRI検査では腫瘤背側壁の外縁が造影された.以上より,後腹膜血腫が疑われ,再度問診を行い2カ月前に自転車で転倒し左肘骨折をした既往があると分かった.しかし,後腹膜腫瘍も否定できず開腹手術を行い腫瘤の摘出を行った.病理検査では中心部には変性,壊死に陥った凝血塊を認め,周囲は線維性の被膜で覆われている所見であった.以上よりchronic expanding hematomaと診断した.文献的考察を加え報告する.
著者
川井 廉之 星 永進 高橋 伸政 池谷 朋彦 村井 克己
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1978-1981, 2011

症例は30歳,男性.前医にて緊張性気胸に対する胸腔ドレナージ後に血胸を呈し,医原性の血胸が疑われ当センターへ緊急搬送された.胸部X線写真にて右胸腔に大量胸水貯留を認め,ドレーンからの出血が続いていたため,血気胸の診断で胸腔鏡下緊急止血術を施行した.出血は肺尖部対側の胸壁の断裂した血管からであり,自然血気胸と診断した.術後,再膨張性肺水腫を発症したが,その後の経過は良好で,術後第7病日に軽快退院となった.自然血気胸の中には本例のように初回胸部X線写真で胸水貯留が認められない症例があり,早期の診断と治療のためには,ドレナージ後の注意深い経過観察が重要である.
著者
森脇 義弘 伊達 康一郎 長谷川 聡 内田 敬二 山本 俊郎 杉山 貢
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1701-1705, 2001

キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.
著者
中野 聡子 藤田 哲二 小林 進 伊坪 喜八郎 杉坂 宏明 池上 雅博
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1988-1991, 1996

回腸とS状結腸に交通を認めた稀な管状型消化管重複症を経験したので報告する.<br> 症例は33歳,中国人の男性. 1995年2月9日,急に腹痛が出現し腹膜刺激症状を認め,腹部レントゲン上腸閉塞所見を呈し,手術を予定したが, 10数分の間に腹膜刺激症状は消失した.しかし,腸閉塞症状が改善せず,翌日手術を施行した.開腹時,回腸周囲に索状物を認め,ここに腸管が陥入し絞扼された状態になっていた.また,回腸とS状結腸の腸間膜対側で交通を認めた.手術は交通部の大腸を含めた小腸部分切除を行った.病理組織学的に,交通部は大腸粘膜で,周囲は平滑筋がとりまいていた.以上から, S状結腸の管状型重複症で,ここに潰瘍を形成し,回腸に穿通したものと考えられた.非特異的な経過または腹部所見を示す急性腹症では消化管重複症も念頭におくべき疾患の1つである.
著者
中山 隆盛 白石 好 西海 孝男 森 俊治 磯部 潔 古田 凱亮
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.3052-3056, 2002

前立腺癌は,日本において死亡増加率が最も高く,今後の動向は重要である.われわれは,直腸狭窄により発見された稀な前立腺癌を報告する.<br> 症例は, 73歳の男性.主訴は排便困難であり,直腸癌疑いにて紹介入院となった.大腸内視鏡および注腸にて,直腸の全周性狭窄像を認めた.尿路症状を認めないものの, PSA (prostate specific antigen)が高値であり,骨転移が認められた.前立腺生検により,原発前立腺癌の確定診断となった.内分泌療法および放射線療法が奏効し,直腸狭窄は解除され,外来で内分泌療法中である.
著者
大槻 憲一 渡辺 明彦 山本 克彦 石川 博文 大山 孝雄 山田 高嗣
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.522-526, 2004-02-25
被引用文献数
3 1

症例は59歳,女性.平成13年11月,下痢を主訴に近医を受診したところ,右側腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.当院受診時,右側腹部に弾性軟,小児頭大の腫瘤を触知した.腹部CTでは右後腹膜腔に12×7 cmのlow density massとして描出され,注腸造影検査において,上行結腸は著名に左側に圧排されていた.後腹膜漿液性嚢胞の診断のもと,腫瘍摘出術を施行した.腫瘤は非常に薄い嚢胞壁を有し,その内容物は無色透明の液体であった.内溶液のCA19-9, CEA値はそれぞれ10,000U/ml以上, 344.5ng/mlと高値を示したが,細胞診は陰性であり,嚢胞壁にも悪性所見は認めなかった.後腹膜嚢腫は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
佐藤 裕 佐藤 清治 広橋 喜美 伊山 明宏 原岡 誠司 溝口 哲郎 片野 光男 樋高 克彦 原田 貞美 藤原 博 山本 裕士 久次 武晴
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.577-584, 1989-03-25 (Released:2010-01-21)
参考文献数
18
被引用文献数
11

1985年5月から1987年12月までの3年7ヵ月の間に,6名のシートベルトに起因する鈍的腸管・腸間膜損傷を経験したので報告する. 症例は男性5名,女性1名の計6名で,平均年齢は51.7歳であった.このうち,盲腸破裂と多発小腸穿孔をきたし,すでにshock状態におちいっていたために,回盲部切除を余儀なくされた女性を術後敗血症で失なった以外は全例軽快退院した.また大腸に損傷のあった5例中,遊離穿孔に至っていたのは2例のみで,あとの3例は腸間膜損傷をともなった腸管壁の漿膜筋層断裂にとどまっており,腸管切除をせずに吸収糸にて縫縮,修復するのみで良好な結果を得た. 診断面においては,腹部CT検査が腹腔内遊離ガスと液体貯留をあわせて同定でき,しかもその性状にも言及できる利点があり非常に有用であった. 交通事故の増加とシートベルト着用の義務化にともない,今後シートベルトによる鈍的な腸管・腸間膜損傷が増加するものと考えられる.シートベルトを着用した交通外傷患者の診療に際しては,常にこのことを念頭おくべきことを強調したい.