著者
中條 晋一郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.110-129, 2003-10-18 (Released:2017-03-30)

本稿は,明治期より太平洋戦争終結までの日本の外国人犯罪を分析するものである.戦前の外国人犯罪に関する公式統計は,『検察統計年報』の前身である『刑事統計年報』にのみ現存するため,このデータを分析に用いた.しかしこのデータは,外国人に係る刑事裁判の受理件数,及び人員数を集計したものであったため,警察統計や検察統計に比べ,当時の外国人犯罪の実体に迫るには限界が生じることとなった.そのような条件の下で,全ての第一審終局処理人員における罪種の傾向と,外国人の第一審終局処理人員における罪種の傾向とを比較して,外国人犯罪の特徴を探った.加えて,当時の犯罪傾向や外国人労働者問題等に関する先行研究を参考として,データを分析し,解釈を試みた.その結果,「外国人被告」における主要罪種は,時代によって変遷していることが分かった.また,戦前を通した外国人犯罪の特徴としては,(1)中国人による犯罪が中心であったこと,(2)窃盗や賭博など,比較的軽微な犯罪が中心であったことなどが示された.なお,戦前の日本には,朝鮮半島出身者も多数在留していたが,「外国人」ではなかったため,犯罪の状況を分析することはできなかった.