著者
中沢 允伸 吉田 兼紀 小門 宏 井上 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-142, 1971-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
7
被引用文献数
3

ホトクロミズムを示すスピロピランは, 溶液中あるいは高分子フィルム中で光発消色をくり返すに従い, その発色種の飽和濃度値が次第に減少してくる (疲労) ことを見出した。疲労は発消色をくり返さずとも, 紫外光を連続的に照射し続けても生じたが, この両者の疲労現象は必ずしも同一のものではない。ここではこの疲労現象を取り上げ, これに及ぼす種々の影響因子ならびにその原因を検討した。温度効果, スペクトル変化, その他の実験結果から, 疲労には少くとも2種類の過程が存在することがわかった。一つはスピロピランの無色種が関与しているもの, 他の一つは発色種が関与しているものであり, 前者の過程が支配的であった。また溶液中での測定結果から, スピロピランの分子間距離が小さいほど疲労は促進され, したがって疲労はスピロピラン分子間の相互作用により生じるものと考えられる。また高分子中での疲労はフィルム中に残存する残留溶媒によっても大きく影響され, その他マトリックスの種類, スピロピラン濃度などにも影響された。また溶液中では溶存酸素を除去すると疲労は促進された。