著者
福澤 光祐
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.318-321, 2017-07-20 (Released:2018-01-01)

これからの社会は,より変化の激しい世の中となることが様々な専門家から予想されている。高大接続改革は,このような次代を担う若者たちに,新たな価値を創造できる力(学力の3要素)を育むことを目的として,高等学校教育,大学教育,そして大学入学者選抜の三者を一体的に改革するものである。本稿では,多岐にわたる改革の中から,大学入学者選抜の改革の一つであり,平成29年5月16日に公表された「大学入学共通テスト(仮称)」の検討状況を中心に,お伝えするものである。
著者
石川 伸一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.372-373, 2019-08-20 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

私たちが普段料理やスイーツを食べる前に,その色や形のビジュアルや,漂う香りなどから目の前の料理を評価する。この料理やスイーツのおいしさを決める要因はさまざまで,外観,におい,味,温度,食感などの「食べもの側の要因」はもちろんであるが,空腹具合や健康状態の生理的な要因や,メンタル面の心理的要因などの「食べる人側の要因」も考えなければならない。つまり,おいしいスイーツの秘密を探ったり,おいしいスイーツを開発することを極めていけば,必然的に「食」だけではなく,「人」がおいしく感じることについても分子レベルで調べることに行き着くことになる。その例をいくつか紹介する。
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.340-343, 2012-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

元素の周期表で第6周期のほぼ中央に位置する金と水銀の化学的な性質が,量子化学的計算と相対性理論による補正計算からどのように理解されるかを主に解説する。あわせて,ランタノイド元素のランタノイド収縮などの第6周期元素の性質についても若干議論する。
著者
海宝 龍夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.234-237, 2016-05-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
3

資源小国日本にあって,日本が世界第2位の生産量を誇る資源があることをご存じだろうか。それはハロゲン元素の一つヨウ素である。ヨウ素は,チリではチリ硝石の副産物として生産される。一方,日本では天然ガスの生産の際に,汲み上げられる地下かん水と呼ばれる塩水から生産され,この2カ国で世界の生産量の約90%を占める(チリ約60%,日本約28%)。しかもその国内生産量の約75%が千葉県で生産されている。ヨウ素は1811年フランス北西部で海藻灰から発見された。その後,海藻を原料とするヨウ素産業はヨーロッパ中心に発展した。日本でも明治時代,千葉県,神奈川県,三重県などの海岸地域でヨウ素の生産が行われたが,その中でも千葉県は,最大の生産量を誇っていた。本稿では千葉県におけるヨウ素の製造法の変遷と最近のヨウ素を取り巻く環境について解説する。
著者
矢島 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.228-231, 2015-05-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

「ヨウ素デンプン反応の発色のしくみ」は長い間の謎であった。この謎を解くには,分光法と電子論的解析が欠かせない。すなわち,「なぜ青く呈色するか?」は裏を返せば,「なぜ赤い光を吸収するか?」の電子論的選択則の解明が必須である。「ヨウ素デンプン反応」の主要因はデンプンの直鎖状成分であるアミロースであり,この「アミロース・ヨウ素錯体」に対する物理化学的特性を究明した結果,「錯体の色は,左巻きアミロースらせん糖類中のピラノース環およびグルコシド結合酸素とヨウ素の間での電荷移動およびCH-π相互作用に由来して,結合ヨウ素種I_3^-,I_2各々が折れ曲がり/ねじれ(bent/torque)構造を取り,全体として左巻き配列を取りながらアミロースに内包された発色ヨウ素種I_3^-dimer(I_6^<2->)およびI_3^-・I_2(I_5^-)の励起子間相互作用(exciton-coupling)に起因する」と結論された。口絵11ページ参照。2
著者
星野 直美
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.538-_542-8_, 1987

初学者にとって, 黒板に書かれた構造式を見ただけでその分子の立体構造や対称性を理解することは容易でない。分子模型は大いにこの助けとなるが, 市販の各種の模型は各々特色があって目的に応じて使い分ける必要があり, また中には非常に高価なものもある。そこで, ここでは1枚, あるいは2枚の正方形の紙片という手軽な材料を使って分子模型を作ってみようというわけである。折り紙には, 紙の上に特定の角度を折り取る操作の中に出来上がる立体の幾何学的特徴が隠されており, 平面から立体を掘り起こす造型的な楽しみもある。原理的には用紙も正方形である必要はないし, 折り方もひと通りではないだろう。しかし今回は折り紙に慣れていない読者のために, 基本的な正四面体, 正四面体スケルトン, および正八面体スケルトンの標準的な折り方を紹介する。付録の折り線のついた色紙を切り取り, 以下の解説に沿って試みてほしい。
著者
吉田 健
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.118-121, 2012-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

水酸化ナトリウム(NaOH)は工業薬品としては「苛性ソーダ」と呼ばれている。苛性ソーダは様々な産業の基礎素材として重要な役割を担っている化学製品であり,塩(食塩,NaCl)を原料とした電解ソーダ法で製造されている。電解ソーダ法には水銀法,隔膜法,イオン交換膜法の製法があるが,わが国では水銀法から隔膜法への転換を経て,現在では全てイオン交換膜法となっている。本稿では当社での実例も交えながら,イオン交換膜法による苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の工業的製法と用途について紹介する。
著者
荒川 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.224-227, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
4

我々日本人は,昔からフグに魅せられ,試行錯誤を繰り返しながら独自のフグ食文化を築いてきた。これに伴い,フグの毒テトロドトキシンに関する研究も日本を中心に進められ,大きな成果をあげてきた。本稿では,フグ毒の正体,フグ毒とそれを保有する生物との興味深い関係やフグを安全に安心して堪能するための工夫について,近年の研究成果を踏まえて簡単に紹介したい。
著者
坪村 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.632-635, 1998-10-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
6

従来の高校教科書では電池の項の説明をボルタ電池から始めるものが多い。しかしボルタ電池は, 歴史的な立場はともあれ, 実際は非常に複雑な現象を含むものであり, また安定した起電力を保つことも難しいものであって, これを電池の話の導入に用いることは無理がある。またそのためか, 従来の教科書のボルタ電池の説明には誤りが多く, 化学教育上必要のない, 複雑で末梢的な記述が多い。電池の仕組み, 特長を教えるには, ボルタ電池はやめにして, ダニエル電池などを導入に用いることを勧めたい。
著者
宮越 俊一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.292-295, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1

群馬県には農産物でも工業製品でも全国上位に位置づけられるものが少なくないが,なかでもこんにゃくは,そのほとんどが群馬県で生産されているといっても過言でない。その主成分であるグルコマンナンは,主にグルコースとそのジアステレオマー*1であるマンノースからなっている。両者がβ-(1→4)結合して主鎖を形成し,一部β-(1→3)結合やβ-(1→6)結合による枝分かれ構造を有する。そこへ水酸化カルシウムなどを添加することで,本文に述べるようなメカニズムで凝固する。カロリーの観点からは栄養価はなく,弱酸性~中性の食品が多い中で珍しく塩基性で,食感を楽しむ食品であることなど,世界的に見てもユニークな食品といえる。製造方法としては,コンニャク芋(生芋)からの工程と,精粉からの製造工程とがあり,学校や一般家庭でも同様の方法で作ることができる。こんにゃくはその試作やpHによる影響などを通じて,身近な教材としても多くの可能性を秘めている。
著者
水口 純 相沢 益男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.388-394, 1969-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
34