- 著者
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中沢 利勝
塩沢 佳幸
説田 和洋
板橋 国夫
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
- 巻号頁・発行日
- vol.1989, no.7, pp.1103-1110, 1989-07-10 (Released:2011-05-30)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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3-(2-ナフチルチオ)プロピオンアルデヒド〔1a〕およびそのメチル置換体〔1b,c〕を50%硫酸存在下,エーテル中で反応させると容易に閉環が起こり2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン-1-オール〔2a〕および対応するメチル置換体〔2b,c〕がほぼ定量的に生成する。〔2a〕をクPtpaホルム溶液中塩酸とともに加熱すると,3H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔3a〕がほぼ定量的に,ポリリン酸(PPA)中で加熱すると2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔4a〕のみが70%得られた。また〔2b,c〕を同様に処理すると対応するメチル置換体〔3b,c〕,〔4b,c〕がそれぞれ高収率で得られた。〔2a〕を硫酸触媒存在下アルコール,チオールおよびチオカルボン酸などの求核剤と反応させるとまもの〔2a〕のヒドロキシル基は反応試剤によって容易に置換され,対応するエーテル,チオエーテル,チオカルボン酸エステルが,ほぼ定量的に生成した。さらに硫化水素とはチオールが,N,N-ジメチルチオホルムアミドとはチオギ酸エステルが,塩化テオニルとは塩化物が,それぞれ得られた。また,〔2a〕と臭化アヤをルとの反応では臭化物が,トリエチルアミン触媒存在下での臭化アセチルとの反応ではア竜トキシ体がそれぞれ得られた。1-ナフタレンチオールから得た3,4-ジヒドロ-2H-ナフト[1,2-b]チオピラン-4-オール〔7a〕も〔2a〕とほぼ同様の結果を示した。以上,〔2〕のヒドロキシル基は酸触媒存在下で,種々の求核剤により容易に置換されたが,アミン類による置換は,酸塩基触媒ともいずれも進行しなからた。