著者
中田 進
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.194-197, 1993-03-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
5

ヴィェトナム難民におけるB型肝炎ウィルス(HBV)の侵淫状況について検討した.対象は日本に来た2,428人の難民で,男女比は1,587:841 (1.89:1),年齢は0~86歳であった.HBsAg陽性者は316/2,428名(13%)で,男は243/1,587名(15.3%),女は73/841名(8.7%)であった.HBsAg陽性率を年齢群ごとに検討すると,0~9歳群で11~12%であるのに比し10~19歳群では19.9%とより高率であった.ヴィェトナムでは家旅単位が大きいこと,輸血のスクリーニング体制の不備に加えて,非衛生的な医療施設の現状,売春,麻薬の蔓延などの社会状況がHBV感染に大きく関係していると推定される.今回対象とした難民は北部出身者も含み,現状では調査が困難なヴィェトナムの一般人口におけるHBVの侵淫状況を良く反映したものと考えられる.同国ではB型肝炎の抑制は保健上重大な問題であり,早急な対策が望まれる.