著者
岡本 欣也 三好 謙一 木科 学 藤瀬 幸 加藤 順 徳永 志保 的野 智光 法正 恵子 大山 賢治 岡野 淳一 前田 直人 孝田 雅彦 村脇 義和
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.748-753, 2012-11-25
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は60歳代の女性.平成2X年5月中旬から全身倦怠感,嘔気が出現,7日後に皮膚黄染に気付いた.近医受診し,肝機能障害指摘され当科紹介入院.総ビリルビン7.8 mg/dL,AST 1441 IU/L,ALT 1753 IU/L,プロトロンビン時間33.2%で急性肝炎重症型と診断した.なお,血小板数も4.1×10<sup>4</sup>/μLと著明に減少していた.原因検索の結果,DDW-J 2004薬物性肝障害スコアリングで10点で,薬物性肝障害が疑われた.服用していた薬剤をすべて中止した.その後徐々に肝機能改善し,50日後に退院した.服用していた医療用薬剤および健康食品について薬剤リンパ球刺激試験を行ったところ,「にんにく卵黄」のみで陽性となった.日常的に摂取する食品由来の健康食品であっても,重篤な薬物性肝障害を発症する可能性が示唆された.<br>
著者
加藤 将 種市 幸二 松林 圭二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.688-688, 2004-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
4
被引用文献数
12 18

A patient died of fulminant hepatitis E in our hospital. To our surprise, a son of the patient was also infected with HEV. By executing a family study, it was revealed that 7 out of 13 relatives of the patient, all of whom had participated in a Yakiniku party, had infection markers for HEV. Our results corroborate previous report suggesting pig liver to be an important infection source in Hokkaido, Japan.
著者
寺尾 英夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.470-484, 1979-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
63
被引用文献数
2 1

経口的鉄過剰摂取が原因とされている南アフリカ・バンツー語族における鉄沈着症(Bantu siderosis)は鉄が人体に及ぼす影響をみる上で好個な材料として, Idiopathic hemochromatosisやTransfusional hemosiderosisと比較されつつ研究がなされている.著者は東アフリカ・ケニアにおけるバンツー語族の剖検例(74例)にも高頻度(46%)かつ強度の肝鉄沈着を見出したので病理形態学的に検討した.肝組織内鉄沈着のあり方は,同一原因(経口的鉄摂取)と推定されるにもかかわらず肝細胞,Kupffer細胞ともにさまざまである.小葉内分布は肝細胞内鉄沈着は周辺部にKupffer細胞内鉄沈着はび漫性である.鉄が肝線維症や肝硬変の原因となり得るか検討したが鉄の一義的肝障害性を示唆する成績は得られなかった.肝硬変におけるnodularhyperplasiaや異型性のある再生結節に鉄沈着は少なく,癌細胞では全く認められないことから増殖性病変の前癌性病変としての意義についても考察した.
著者
持田 智
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.89-91, 2003-03-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1
著者
清水 勝 時田 元 越野 陽介 星山 直基 山田 昌夫 高橋 善弥太 西川 佳秋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.690-694, 1989-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

アセトアミノフェン大量服用による急性肝不全はよく知られている.今回著者らは40歳,女性のアルコール常用者が,アセトアミノフェン4.8g(セデスAR錠60錠)をアルコールとともに服用し,急性肝不全で死亡した1例を経験した.剖検肝重量は750g,広汎性部位により亜広汎性肝細胞性壊死が存在し病理学的に急性肝萎縮と診断された.本例の服用アセトアミノフェン量は4.8gと比較的少量であるが,急性肝不全をきたした原因として,1)アルコール常用者であったこと,2)アセトアミノフェンがカフェインとの合剤で服用されておりその相互作用が考えられ文献的に考察した.アセトアミノフェンの使用にあたっては,予想以上に重篤な肝障害発生の危険もあり注意が必要である.
著者
相川 達也 山縣 邦彦 宮本 久仁子 津田 文男 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.163-165, 2009 (Released:2009-04-08)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

A 35-year-old woman who was 14 weeks pregnant visited a gynecology hospital to undergo a surgical abortion. Although she was not jaundiced, and had no signs of hepatitis, liver function was abnormal (ALT, 100 IU/L; AST, 96 IU/L). The serum obtained was negative for markers of hepatitis A, B, and C viruses. However, based on the positive results of non-routine IgM/IgA anti-HEV and HEV RNA assays, the patient was occasionally diagnosed with sporadic acute hepatitis E. The HEV isolate recovered from the patient was phylogenetically close to known genotype 3 HEV strains circulating in Japan, with the highest identity of 93.2%. We believe that testing for hepatitis E should be routine in Japan, in cases of suspected viral hepatitis.
著者
髙岡 良成 森本 直樹 三浦 光一 野本 弘章 渡邊 俊司 津久井 舞未子 前田 浩史 五家 里栄 礒田 憲夫 室井 一男 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-17, 2020-01-01 (Released:2019-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

症例は74歳男性.2018年X月に大動脈弁置換術の際に輸血を施行した.術後2カ月頃から肝機能障害を認め,HEV-IgA抗体およびHEV-RNA陽性(genotype 3b)でE型肝炎と診断した.その後の解析で輸血前のHEV-IgG抗体陽性,HEV-RNA陰性であったことからE型肝炎既感染例と考えられた.また輸血に使用した凍結新鮮血漿からHEV-RNAが検出され,解析できた遺伝子配列が患者由来HEVとほぼ一致したため,輸血によるE型肝炎と判断した.本邦では2017年までに本例を含めると,少なくとも26例の輸血後E型肝炎が発症し,その報告数は増加しつつある.北海道地区では輸血製剤において核酸増幅検査によるHEVスクリーニング検査が行われているが,それ以外の地区では施行されていない.よって全国での核酸増幅検査によるHEVスクリーニングの早期導入が望まれる.
著者
小畠 正夫 小島 峯雄 足立 信幸 天野 和雄 亀谷 正明 川出 靖彦 宇土 一道 清水 勝 高橋 善弥太
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.196-201, 1977-03-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

HBs抗原持続陽性の夫から感染し,結婚後3カ月で発症したと思われる劇症肝炎の1例を経験したので報告する.症例は23歳,女性.黄疸,輸血,アルコール常用等の既往はなく,家族にも黄疸および肝疾患は認めない.発症前3カ月に結婚.昭和51年1月13日,感冒様症状出現.18日より黄疸,意識障害をきたし,19日当科入院.HBs Ag陽性.入院後4日目に死亡.剖検にて広範な肝細胞壊死と出血を認めた.ところで,夫はHBs Ag陽性の肝硬変として入院加療を受けたことがあり,e抗原も陽性だったため家族調査を施行したところ,母親および検索し得た同胞はすべてHBs Ag陽性で母親にはe抗原も証明した.以上より夫から妻(症例)への水平感染が推定される劇症肝炎の1例と考えた.
著者
中下 俊哉 江口 有一郎 高橋 宏和 大座 紀子 桑代 卓也 河口 康典 黒木 茂高 尾崎 岩太 水田 敏彦 小野 尚文 江口 尚久 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.483-484, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
3

COBAS TaqMan HBV Test (real-time PCR method) is a new method to detect HBV-DNA with higher sensitivity and broader range of quantification than conventional methods. We evaluated HBV-DNA load by COBAS TaqMan HBV Test in comparison with Amplicor HBV Monitor Test in chronic hepatitis B patients undergoing administration of nucleoside analogue. Forty chronic hepatitis B patients were recruited. In 33 patients with less than 2.6 logcopy/mL by Amplicor HBV Monitor, Taq Man HBV Test showed less than 1.8 logcopy/mL of HBV-DNA and no amplified reaction signal in 22 patients, whereas amplified reaction signal was detected in 11 patients (33.3%). COBAS TaqMan HBV Test is more sensitive and preferable for evaluation of HBV viral load in anti viral therapy.
著者
能津 昌平 道堯 浩二郎 平岡 淳 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 岩﨑 竜一朗 富田 英臣 壷内 栄治 二宮 朋之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.421-426, 2018-08-20 (Released:2018-09-14)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

症例は75歳男性.1958年にてんかんと診断されてバルプロ酸を含む抗てんかん薬開始.2011年にγ-GTP高値と高アンモニア血症を指摘.血液検査,腹部エコー,腹部造影CTで肝硬変を示唆する検査値や所見は認められなかった.カルニチンは著明な低値を示しており,バルプロ酸によるカルニチン欠乏症に続発した高アンモニア血症と診断した.レボカルニチン投与開始後,血中カルニチン濃度,血中アンモニア値,自覚症状の改善が認められた.バルプロ酸投与例では高アンモニア血症に留意するとともにカルニチンを測定してカルニチン補充療法の適応を判断すべきと考えられた.
著者
福井 博
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-4, 1998-01-25 (Released:2009-11-17)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1
著者
米田 晃敏 日浦 政明 烏山 司 本間 雄一 柴田 道彦 蒲地 正幸 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.363-369, 2018-07-20 (Released:2018-07-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

アセトアミノフェンの内服薬であるカロナールⓇの過量投与による肝障害の報告は多数あるが,静注剤であるアセリオⓇの過量投与による肝障害の報告例は少ない.今回我々は,周術期疼痛管理におけるアセリオⓇの過量投与による昏睡型急性肝不全の一例を経験した.アセリオⓇ投与開始から3日目に著明な肝障害を来しており,経過からアセトアミノフェンの薬物性肝障害と診断し,N-acetylcystein(NAC)や薬物吸着療法を開始した.その後III度の肝性脳症が出現したため,アンモニアなどの小分子量物質の除去と人工肝補助を目的に高流量血液濾過透析(high-flow CHDF)を開始し,速やかな改善が得られた.アセリオⓇの使用は静注剤である利便性から今後も臨床現場での使用頻度は増加すると思われるが,薬物中毒による昏睡型急性肝不全は救命率が低く,使用時には用法・用量を守り肝障害の出現に注意する必要がある.
著者
泉 裕子 平松 直樹 糸瀬 一陽 井上 隆弘 柄川 悟志 西田 勉 垣内 佳美 外山 隆 中西 文彦 井倉 技 田村 信司 辻井 正彦 辻 晋吾 考藤 達哉 竹原 徹郎 笠原 彰紀 佐々木 裕 福田 和人 今井 康陽 林 紀夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.109-115, 2004-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は58歳女性. 全身倦怠感, 発熱にて近医受診したところ, 総ビリルビン6.4mg/dl, AST 8327U/l, ALT 10879U/l, プロトロンビン時間7.5%と著明な肝機能低下を認めたため, 当院入院となった. 発症3日後の入院時には脳症II°となり, 劇症肝炎急性型と診断し, 直ちに血漿交換などの集中治療を開始したが, 肝炎劇症化から15時間後には脳圧の上昇とともに, 深昏睡となった. 2日後, 生体肝移植術を施行. 術後, 肝機能の増悪はなかったが, 意識レベル低下, 脳圧亢進は改善せず, 感染症を併発して入院8日目に死亡した. 剖検にて, 脳に出血や梗塞による組織変化は認めず, 脳圧亢進は肝性脳症によるものと考えられた. また, 本症例の劇症肝炎の原因はB型肝炎ウイルス (HBV) 感染であった. HBV genotype Bで, precore 領域, corepromoter 領域の遺伝子配列はともに変異型であった. 劇症肝炎発症の極めて早期に, HBs抗原陰性, HBs抗体強陽性となり, その後のIgM HBc抗体価3.2 (cut off index), IgG HBc抗体57.6% (200倍希釈) の結果から, HBV初感染による劇症肝炎と診断しえた. 比較的予後良好とされる急性型劇症肝炎において, HBV初感染による電撃型ともいえる劇症肝炎を経験した. HBV初感染による劇症肝炎例では, 本症例のように急速な転帰をとる症例があり, 肝移植を念頭に入れたより迅速な対応が必要であるものと考えられた.
著者
宮川 佳也 山内 眞義 松浦 知和 高木 一郎 大畑 充 戸田 剛太郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.570-574, 2002-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9

症例は26歳の性転換願望男性. 吐下血を主訴に来院し, 食道静脈瘤および出血性胃炎を指摘され入院となった. 腹部CT, 超音波検査にて肝硬変および著明な脾腫を認めた. 患者は性転換願望があり中容量ピルを内服し, エストロゲン製剤の注射を頻回に受けていた. また, 常習飲酒家であるが飲酒歴は9年間と短く, また, 積算飲酒量は純エタノール換算で480kgとアルコール性肝硬変としては少量であった. しかし, ウイルス性や自己免疫性の肝硬変は否定的であり, 肝組織像はアルコール性肝硬変の所見であった. 本症例は女性ホルモン製剤を常用しながら飲酒を継続していたことにより急速にアルコール性肝硬変へ進展した極めてまれな症例であり, アルコール性肝障害の発症における性差を考察するうえで示唆に富む症例であると考えられた.
著者
吉田 俊巳 加賀 誠司 盛合 理 植田 修 千葉 俊明 阿部 弘一 三浦 義明 滝川 康裕 井上 義博 中舘 一郎 班目 健夫 加藤 章信 柏原 紀文 石川 和克 鈴木 一幸 佐藤 俊一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.1490-1496, 1987-11-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
19

HBe抗体陽性キャリア妊婦から垂直感染し出生50日目に出生児が急性B型肝炎を発症し,さらに患児の発症から92日目に父親がB型劇症肝炎を発症し救命しえた家族内感染例を経験した.患児は発熱・哺乳力の低下で発症.GOT 11,380U, GPT 5,060Uと上昇しプロトンビン時間(PT)10%と著明な低下を示した.HBs-Ag陽性,anti HBc (200倍)74%であった.総ビリルビン(T. Bil)が漸増し32mg/dlとなり凝固能の改善がないため,プレドニゾロンを使用したところ改善し,急性肝炎重症型と考えられた.父親は嘔気・全身倦怠感で発症.T. Bil 14.7mg/dl, GOT 1,675U, GPT 4,690U, PT12%, HBsAg陽性,IgMHBc3.29と陽性.昏睡II度となりプレドニゾロン,グルカゴン-インスリン療法,特殊組成アミノ酸などの治療にて改善した.母親から出生児に垂直感染し,患児から父親に水平感染したと思われる.HBe抗体陽性キャリア妊婦からの出生児に対してもHBIGなどの対策が必要と考えられる症例である.
著者
山本 博之 田中 篤 北川 諭 鈴木 高祐 藤田 善幸 丸山 正隆
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.579-585, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

症例は35歳男性. 入院10カ月前から防風通聖散を服用していた. 入院3カ月前にはじめて肝機能異常が出現. 入院6週間前に近医受診, この時点で肝機能障害は増悪していたが, 5種の薬剤を新たに投与され, 防風通聖散はそのまま服用していた. 入院1週間前から黄疸・皮膚掻痒感が出現したため当院へ入院となった. 防風通聖散, および併用薬は入院前日まで服用していた. 入院時ALT 2996IU/l, AST 7174IU/l, T. Bil 15.1mg/dl, PT 30.6%であり, 第2病日肝性昏睡2度となったため劇症肝炎急性型と診断, 血漿交換および血液濾過透析とステロイドパルス療法を開始した. この結果意識清明となり肝機能も急速に改善したが, その後黄疸が遷延し, 肝機能は薬剤中止後4カ月に正常化した. 本症例ではもともと防風通聖散による薬物性肝障害が存在し, そこへ併用薬の影響が加わって最終的に劇症化に至ったものと考えられた.
著者
岡本 欣也 三好 謙一 木科 学 藤瀬 幸 加藤 順 徳永 志保 的野 智光 法正 恵子 大山 賢治 岡野 淳一 前田 直人 孝田 雅彦 村脇 義和
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.748-753, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

症例は60歳代の女性.平成2X年5月中旬から全身倦怠感,嘔気が出現,7日後に皮膚黄染に気付いた.近医受診し,肝機能障害指摘され当科紹介入院.総ビリルビン7.8 mg/dL,AST 1441 IU/L,ALT 1753 IU/L,プロトロンビン時間33.2%で急性肝炎重症型と診断した.なお,血小板数も4.1×104/μLと著明に減少していた.原因検索の結果,DDW-J 2004薬物性肝障害スコアリングで10点で,薬物性肝障害が疑われた.服用していた薬剤をすべて中止した.その後徐々に肝機能改善し,50日後に退院した.服用していた医療用薬剤および健康食品について薬剤リンパ球刺激試験を行ったところ,「にんにく卵黄」のみで陽性となった.日常的に摂取する食品由来の健康食品であっても,重篤な薬物性肝障害を発症する可能性が示唆された.
著者
大野 彰久 眞柴 寿枝 青野 通子 丹下 和洋 越智 裕紀 武智 俊治 横田 智行 上甲 康二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.481-486, 2016-09-20 (Released:2016-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は20歳代男性.倦怠感と心窩部不快感を主訴に受診し,血液検査でT.Bilと肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーは陰性で,自己免疫性肝疾患なども否定的だった.画像検査で器質的疾患を疑う所見もなかった.漢方薬の内服歴があり,入院時より腹部に褐色調の皮疹が認められたため薬物性肝障害を考え経過観察した.肝生検組織では急性肝炎と診断し,薬物性肝障害として矛盾しない所見だった.肝胆道系酵素異常は遷延し,腹部の皮疹が上腕・大腿にも拡大した.再度詳細に問診を行うと不特定の性交渉歴があり,血液検査を追加し,早期梅毒と判明した.Amoxicilin 750 mg/dayの内服で,皮疹の改善とともに遷延していた肝胆道系酵素異常は速やかに正常化した.近年,梅毒感染者は増加傾向にあり,特に若年層での感染が目立つ.皮疹を伴う原因不明の肝障害患者では,梅毒性肝炎も念頭に入れるべきだと思われた.
著者
相川 達也 小島 眞樹 宮本 久仁子 上野 ちさと 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.352-361, 2008 (Released:2008-09-10)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

67歳の男性が結婚40年後にC型急性肝炎を発症した.その妻(68歳)がC型慢性肝炎患者であり,C型肝炎ウイルス(HCV)RNAが高力価陽性(>5,000 KIU/ml)であった.両者のHCV遺伝子型はともに1b型で,NS5B領域の1,087塩基長の配列において99.7%の一致率を示した.それに対し,これまでに報告されているHCV/1b株との一致率は最高でも96.7%に過ぎなかった.分子系統樹解析によっても,夫婦の持つHCV株は一つのクラスター(bootstrap値:100%)を形成し,同一株である可能性が強く示唆された.詳細な病歴聴取を行ったが,性交渉(月1, 2回)以外の感染経路はいずれも否定された.高齢夫婦間の感染には加齢に伴う生体側因子が関与していると考えられるが,高齢化社会を迎え,HCV感染者頻度の高い高齢者層でかかるHCV感染が起こる可能性を念頭に置く必要があると考え報告する.