- 著者
-
中西 祥彦
- 出版者
- 神戸常盤女子高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
ID(インストラクショナル・デザイン)でみる数学の授業の提案である。(y=距離、t=時間)本校3年家庭科生を対象に、1クラスを4班(数名)に分けて実施。お互いに役割分担をさせ、協力作業を進めながら、ICT活用のもと、「歩く」という共通体験を通して、「一次関数(y=○t+△)のグラフとその意味するところを理解させる」ことが本授業の大きな目的の一つである。<初めに現象ありき>で、体験学習を通した実験から始めて、同じような理解(○=(y-△)÷t)をえる。グラフの傾き=○から、<速さ>が<距離>÷<時間>という比の関係で、与えられることの理解に到達させる。しかしその過程が、通常と異なるのは、生徒たちが、机上に置かれた距離センサーに向かって、「歩いたり/退いたりする」行為をくりかえすことから始まるからである。そしていろいろな歩き方を工夫する中で、グラフのプロットと歩き方の意味づけ等の考察を通して、まさに自発的な行動や思考が生まれ、連続または不連続なグラフの動き方もみつけだしたりしながら、一定の結果をだしてくれたのでこちらもわくわくしてくる。(生徒の実験の様子はVTRに記録)それから、「共通」体験とか「共通」理解という、言葉「共通」の意味を一寸考えてみたい。一般的には、「共通」=「最大公約数」である。だから<殆ど100%に近い>という意味をもたすには、生徒全員が同じような気持ち体験が必要。それにはICTハイテク技術が、授業の流れの下支えをしているからこそ可能で、教師は思い通りのIDが実践できることになる。一歩ずつの生徒の動きは、グラフ電卓の小さな画面で、ほぼ直線のプロットに変換され、PCを経て、リアルタイムで目の前の大画面に投影されここで目が釘付けになる。このビジュアルな共通感覚がとても大切。これこそが持続可能な思考を引きだす泉のような原点だと思う。最後に、この授業から、生徒に教えられたことがある。ガニェ先生が書かれなかった、学ぼうとする生徒の側からのIDの視点の発見である。幸いなことに、次の課題までえられたことになる。