- 著者
-
中谷 智恵
- 出版者
- 独立行政法人理化学研究所
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
f MRI研究:BOLD指標を用い、シーンの認識にかかわる脳部位の特定を、正常視力の成人被験者を対象に行った。測定中被験者は経時的にCRTディスプレイに提示された2枚のシーン内の物体の位置の異動判断を行った。2枚のシーンは同一視点から見た場合と、異なる視点から見た場合があり、後者ではシーンの周りを歩いたように視点の角度を変えた刺激が用いられた。この課題に関与した脳皮質部位のは活動パターンによって3つに分類された。第1は、課題変数(視点の角度の変化量)に伴い賦活エリアの大きさが変わる部位、第2は課題変数に伴い賦活エリアおよび賦活レベルの変わる部位、第3は課題変数に左右されず一定の賦活レベルを保つ部位であった。第1の部位には、V1/V2、右半球後頭から頭頂にかけての諸回、右側頭葉下面の紡錘状回、両側下前頭回が相当し、視点の変化に伴う刺激の変形を処理していると考えられる。第2の部位は左半球後頭から頭頂にかけての諸回と帯状回前部が含まれ、第1の部位での処理結果の評価を行っていると考えられる。第3の部位は島で、賦活は基線レベル(注視点凝視)より低かった。この負の賦活はおそらく課題遂行全般にかかわる活動のダイナミクスを反映していると推測される。従って、これらの3つのシステムがシーン認識の基本ネットワークを形成していると考えられる。結果の一部は国際学会等で発表した。また現在論文を投稿準備中である。脳波研究:物体を認識中の脳波を眼球運動と同時に計測した。このデータは現在解析中である。