著者
千田 淳司
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

インフルエンザで重症化すると脳症や多臓器不全等を引き起こすが、その詳細な機序は不明である。そこで申請者らはインフルエンザの重症化モデル(CPT2遺伝子改変)マウスを作出し、ウイルス感染試験を実施した結果、全身性のATPの枯渇が認められた。以上の結果から、本病態の主要因は全身性のATPの枯渇であることが明確になった。さらに、本結果を基盤にした新規の重症度診断法と治療薬(代謝改善薬)を開発することに成功した。
著者
山田 量崇
出版者
徳島県立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

外傷性受精に関わる雌雄交尾器の機能と構造を把握し,得られた系統仮説に基づいて外傷性受精の進化を考察した.副交尾器の各器官の形質状態は,概ね従来の族のまとまりを支持した.雌のmesospermalege(精子の貯蔵器官)は,族レベルでさまざまな程度に変化していた.分子系統樹上の族間の系統関係は,形態では共通の祖先に由来することが強く示唆されてきたハナカメムシ族とホソナガハナカメムシ族がかなり遠縁のクレードに分かれるなど,一部形態情報と一致しなかった.
著者
西原 陽子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、ネットいじめに関わる不適切な表現を自動判定する方法を構築し、ネットいじめを減少させることである。本年度は以下の2点を実施した。1点目は、ネット上のいじめに関わる不適切な表現を収集したことである。2点目は、不適切な表現の言語特徴を明らかにし、不適切な表現を自動判定するための言語モデルを作成したことである。1点目の実施の詳細を述べる。ネット上のいじめに関わる不適切な表現が掲載されることが多いWebサイトから、掲載されている文を自動収集するプログラムを作成し、収集を行なった。その後、人手により不適切な表現が含まれる文と、それ以外に分類した。さらに、不適切な表現が含まれる文については4種類に分類した。2点目の実施の詳細を述べる。全ての文に対してその種類を表すラベルを付与した。具体的には不適切な文の4種類に対してと、不適切な表現が含まれない文に対してラベルを付与した。ラベルの系列をLong Short Term Memoryにて学習し、言語モデルを作成した。これにより、文を構成する単語の情報と、文書を構成する文の並びの情報の両方から、次にくる文が不適切な表現を含む文か否かが評価可能となった。今年度の成果の意義は、不適切な表現を含む言語モデルを作成したことにより、隠語や造語を含む不適切な表現の文も判定できるようになったことである。今年度の成果の重要性は、文脈を考慮したことによりある文脈では不適切表現であっても、別の文脈では不適切表現とならないものを判定できる可能性が生まれたことである。
著者
石井 卓
出版者
成蹊大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多変数非正則保型形式のフーリエ展開を記述するために、実半単純リー群上の球関数の研究を様々な場合に行った。これら球関数は偏微分方程式系によって特徴付けられる。表現論的手法によりその方程式系を導出することから始め、保型形式への応用に耐えうる形でその解の積分表示を求めた。さらに、保型L関数への応用として、これら球関数の積分変換である、ゼータ積分の無限素点における計算を実行し、L関数の関数等式、正則性という大域的な結果を得た。
著者
加藤 宏之
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

PD後に発症する脂肪肝炎の病態を マウスもしくはラットPDモデルを作成し、その原因をMMP-9 に着目し、解明するため本研究を行った。マウスPD後、HE染色で肝細胞の空洞化がみられ脂肪沈着が示唆された。しかし、マウスにPDを施行すると術後から極度の食欲不振に陥り脱水状態となり24h以上の生存が得られないためRatを用いたPDモデルを作成することとした。ラットにおいてもPD群でTNF-aのmRNA発現上昇を認めMMP-9の免疫染色でもPDモデルで肝MMP-9発現上昇を認めた。HE染色では肝細胞の空洞化、脂肪沈着が認められたがラットでも術後極度の食欲不振を認め48h以上の生存が困難であった。
著者
前原 由喜夫
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は他者に対する利益を期待して行動する際に生じる利他的動機づけが,認知的コントロール能力や精神的健康に与える影響を実証的に検討したものである。具体的には,認知課題に成功すると他者(チャリティ団体)が利益を得られる状況で,空間性ワーキングメモリ課題の成績がどのような振る舞いを見せるかに関する一連の実験を行った。その結果,利他的動機づけ条件のほうが自分の利益が期待できる利己的動機づけ条件よりも課題成績が改善する場面が見られた。また,多動性・衝動性傾向の高い個人のほうが利他的動機づけ条件下において課題成績が向上することが示された。以上より,利他的動機づけは認知能力を改善する可能性が示唆された。
著者
WINCHESTER Mark
出版者
神田外語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、下記の3点を考察の軸として、アイヌ民族の近現代思想史の全体像に迫ることを目標とした。(1)近現代におけるアイヌ思想史の系譜構築の必要性、(2)アイヌ近現代思想史の日本思想史研究上の意義、(3)世界規模の社会的かつ歴史的、または哲学的な思想課題としてのアイヌ近現代思想史。26年度では、書籍などからの基礎的情報と研究上に必要なIT関連機器の補充的整備や、研究対象となる著述家の自筆原稿などの資料調査を行い、27年度では、さらに資料調査を重ね、論文の出版や研究成果の発表を行なった。
著者
中野 晃一
出版者
上智大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、天下りまで含めた高級官僚(退職時に局部長以上)のキャリアパスを全省庁にわたって調査し、官僚のインセンティブ構造を解明、各省庁の特徴を類型化し、政策決定・施行へのインプリケーションを分析することを目的とし、2001年1月の中央省庁再編のインパクトにも注目しつつ各省庁の戦後期におけるキャリアパス・天下りの解明を進めてきた。高級官僚のキャリアパスが官庁の選好や優先課題を反映しているものと捉え、官庁とその環境の間の相互作用を重視する視点から平成18年度までには、退職時に本省局長クラス以上まで昇進した高級官僚の官庁内でのキャリアパスと天下りパターンを、宮内庁、国家公安委員会・警察庁、保安庁・防衛庁、厚生省、労働省へと広げた。平成19年度においては、この研究の調査対象を更に法務省・最高裁判所、文部省、科学技術庁、建設省、国土庁等へと展開し、秦郁彦『日本官僚制総合事典1868-2000』、『人事興信録』などの資料・事典を精査し、アクセスを用いてデータの収集、整理を完了した。この結果、国家と社会を跨ぐ官僚ネットワークの生成・再生産・制度化を包括的に解明し、更には2001年の中央省庁再編以降までアップデートしてデータの整理と分析を行ない、その研究成果の一部を論文発表することができた。こうした研究計画の遂行に伴い、本年度の研究経費としては、図書、ソフトウェアなどの消耗品費、研究補助のための謝金が主なものとなった。
著者
飛田 あゆみ
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.全員が原爆被爆者である、長崎Adult Health Study集団を対象としてシェーグレン症候群に関する調査を行った。1)男性432例、女性662例、計1094例から同意を得られた。平均年齢は71.8歳だった。2)眼球乾燥症状は168例(15.4%)で陽性、口腔乾燥症状は283例(25.9%)で陽性、いずれかの症状をもつものは358例(32.7%)だった。3)涙液分泌量検査(シルマーテスト)は992例で実施し、涙液分泌量が低下していたのは369例(37.2%)だった。4)唾液分泌量検査(サクソンテスト)は990例で実施し、唾液分泌量が低下していたのは198例(20.0%)だった。5)涙液または唾液いずれかの分泌量が低下していたのは484例(48.3%)だった。6)血清学的検査は1094例で行い、抗SS-A/Ro抗体は40例(3.7%)で陽性、抗SS-B/La抗体は14例(1.3%)で陽性だった。7)ローズベンガル染色検査は283例で実施し、3点以上は142例だった。8)唾液腺エコー検査は389例で実施し、55例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。9)唾液腺MRI検査は180例で実施し、11例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。また、耳下腺に脂肪沈着を証明できたのは50例だった。2.上記検査の結果を総合してシェーグレン症候群と診断されたのは33例で、調査参加者1094例の3.0%だった。統計学的に放射線被曝線量との有意な関係はなかった。3.唾液分泌量と放射線被曝線量に統計学的に有意な負の相関があった。
著者
小泉 逸郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、顕著な表現型多型を示すサケ科魚類を用いて、回遊二型(降海型と河川残留型)の遺伝的基盤と進化的起源を明らかにした。サクラマス、アメマス合計384個体においてゲノム全域から約8,000万塩基サイトの配列を決定した。ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行ったところ、降海型と残留型を区別できる遺伝子領域はわずか1-4遺伝子座のみであり、効果もそれほど強くなかった。候補遺伝子領域をニジマスのドラフトゲノムと比較したところ、ニジマスにおける候補領域とは異なっていた。これらのサケ科魚類は似たような回遊特性を持つが、各種で異なる遺伝的変異を用いて降海/残留の表現型多型を達成していると考えられた。
著者
丸山 和美
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々の行なった実験では、牛乳を成人男性、思春期前小児が摂取した際、血液中や尿中に女性ホルモンが検出された。よって、今回、女子を対象として牛乳摂取量と性成熟の関連を検討した。その結果、乳房発育に牛乳摂取量と摂取頻度が、初経発来に牛乳摂取頻度が関連していた。このことは、女性の性成熟には,BMI,母親の初経年齢以外に牛乳摂取量も関連する可能性が示唆され、多量の牛乳摂取の推奨は再検討されるべきだと考える。
著者
平尾 智隆 井川 静恵 梅崎 修 松繁 寿和
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,学歴ミスマッチ(教育過剰と教育過少)が賃金に与える影響を統計的に検証することにある。具体的には,同じ学歴を獲得したにもかかわらず,より低い学歴しか求められない職業に就いた者(教育過剰者)とその学歴に見合った職業に就いた者(教育適当者)の賃金を比較する。また,より高い学歴が求められる職業に就いた者(教育過少者)の賃金を教育適当者のそれと比較する。研究の結果,①教育過剰者は教育適当者に比べて賃金が低いこと,②教育過少者の賃金は教育適当者のそれと比べて高いこと,③学歴ミスマッチの賃金に与える影響は,若年層よりも中高年層において,また男性よりも女性において大きいことが明らかになった。
著者
吉田 寛
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

相互作用付リンデンマイヤ・システム上で多細胞の発展モデルを構築した。記号計算を用いて、細胞タイプの多様性とタイプ比の関係式を導出し、それが楕円曲線とフィボナッチ数に関係する曲線で表現されることが分かった。更に、より分子レベルに立脚したDachsous : Fatヘテロダイマーモデルを構築して、素イデアル分解を用いて、細胞鎖が再生する条件を導出した。これらの事から、多細胞の成立する条件:多様性と再生の条件が得られた。
著者
権 学俊
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近現代日本における天皇制とスポーツとの関係の解明を目的とし、天皇制とスポーツとの関わりに関する分析を通して、日本社会における社会的特質と国民意識を明らかにした。本研究を通して、戦前スポーツイベントが天皇制と国家的な秩序への同意を強化し、国家との一体感を推し進める装置として巧妙に機能していったことが明らかになった。また、戦時下における相撲は皇室・皇族と深く関わりながら、国体・日本精神や精神修養としばしば結びつけられて位置づけてられていた。戦後にも「象徴天皇制の公認と浸透」を増幅させる装置として、スポーツイベントが重大な意味をもたらしてきたことも、本研究を通して明らかになった。
著者
彬子女王
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の一番大きな成果は、大英博物館の日本コレクションの草創期である19世紀後半から、コレクションが盤石なものと変容を遂げていく約100年間の日本関連の展覧会図録の調査を通して、大英博物館の学芸員たちの日本美術に対する理解の変遷の過程が明らかになったことである。19世紀後半のコレクターの主観が反映されたやや偏った日本美術理解が、日本から直接情報が入ってくるようになったことで徐々にその誤差が少なくなり、現代の漫画や伝統工芸の展示などを通して、大英博物館独自の日本理解を示すようになる過程を追うことができた。
著者
眞嶋 良全
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

高校までの教育,科学技術概念の基礎的理解,日常的なメディアへの接触頻度,認知判断傾向等の個人差変数が,疑似科学的信念の強度に与える影響について,変数間の関係性を統計的に分析する共分散構造分析を用いて検討した。その結果,正しい科学的知識(科学リテラシー)の獲得は疑似科学的な信念を弱める一方で,認知的な安定性を求める傾向が拙速な判断に関与している可能性が指摘された。
著者
田島 一樹
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高血糖及び小胞体ストレス下におけるメトホルミンの膵β細胞保護作用を検討した。インスリン抵抗性が惹起されない短期間高脂肪食負荷マウスでみられる膵β細胞の代償性増殖は、メトホルミン投与により膵β細胞増殖が抑制された。また、マウス単離膵島において、グルコース誘導性の膵β細胞増殖を抑制、高脂肪食および高血糖下において、AMPKリン酸化を亢進し、mTORシグナルを抑制した。メトホルミンは、小胞体ストレス誘導性の膵β細胞アポトーシスを抑制し、その機序とし、4EBP1を介し、翻訳開始を抑制する可能性が考えられた。メトホルミンは、インスリン抵抗性とは独立して、膵β細胞に保護的に作用している可能性が示唆された。
著者
枝川 亜希子
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

大阪府内の水道原水として取水を行っている河川水から、平成17年度に分離・同定したNaegleria spp.、Acanthamoeba spp.について、PCR産物のdirect sequencingを行い、遺伝子解析を行った。分離したNaegleria属180株の遺伝子型解析を行った結果、動物に対し実験的にアメーバ性髄膜脳炎を引き起こすとされるN.australiensis、N.philippinensisなどを含むNaegleria属13種を検出した。分離したAcanthamoeba属74株について遺伝子解析を行った結果、A.castellaniiなど7種を検出した。その系統樹解析を行ったところ、アメーバ角膜潰瘍の原因となるA.castellaniiが属するType4遺伝子群に4株が属していた。さらに、水道水を対象に自由生活性アメーバの分離・同定を行った。建築物内で日常的に使用している蛇口栓(水道水質基準を満たしていることを確認している)から2試料、使用頻度の低い蛇口栓から28試料を採取した。分離・同定は、平成18年度と同様の方法で行った。採取した30試料のうち、20試料(66.7%)から自由生活性アメーバを検出し、Naegleria spp.22株、Vannella spp.2株、その他15株を同定した。日常的に使用している蛇口栓から採取した水道水からは自由生活性アメーバは検出されなかった。Naegleria属については遺伝子型解析を行っている。本研究により、水道原水中に病原性の高い種を含め多種類の自由生活性アメーバが棲息することが明らかとなった。水道水については、使用頻度の低い蛇口栓から採取した試料から自由生活性アメーバが高率に検出され、滞留が原因と考えられる自由生活性アメーバ汚染が示唆された。
著者
高橋 めい子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主題は「放射線誘発甲状腺がんの発症リスクに関与する遺伝子多型性SNPsの同定」である。申請者らはチェルノブイリ原子力発電所の事故により乳幼児期に放射能被爆を受けたベラルーシ人から、早発型甲状腺乳頭がんの患者群の検体と、その患者と年齢、性別、被爆時の居住地が一致する健常者群の収集をし、全ゲノム関連解析GWASを実施した。
著者
金田 茂裕
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では,算数1年の減法の求残・求補・求差の場面理解,および,2年の乗法の被乗数と乗数に対する理解に焦点をあて,算数作問の認知過程とその難しさを明らかにした。さらに,算数の教科書に掲載されている作問課題の種類・特徴を明らかにし,算数作問の教育的効果として何が期待されているかを明らかにし,教材の種類・配列順序・新しい教材の開発・指導方法の教育実践のこれからのあり方を提案した。