著者
進藤 聡彦 中込 裕理
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-19, 2007 (Released:2017-10-10)

小学校5年生の算数では,図形の性質として多角形の内角の和が取り上げられる。本稿では,この内容の発展的な学習として,星形十角形の内角の和を求める過程を取り上げた授業実践を報告し,その内容が発展的な学習に適っているか否かについて検討した。その際,180°以上の内角(以下,優角)をもつ図形について,児童はそれらを内角と認めない適用範囲の縮小過剰型の誤概念をもつことが予想された。この点について事前調査を行ったところ,予想を支持する結果が得られた。この誤概念を利用すると同時に,優角をもつ内角をそれとして認めせさることに焦点を当て,授業実践と結果の分析を行った。その結果,既習の内角の和を手掛かりに優角も内角であることに納得する傾向が明らかになった。また,誤概念が学習を興味・関心のあるものにすると同時に,その修正は図形の外延の拡大にも資することが示された。こうした結果から,星形十角形の内角の和を求める過程を取り上げた学習は,図形の性質の学習に関する発展的な学習として適っていることが示唆された。