著者
中野 由起子
出版者
日本卵子学会
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-104, 1996 (Released:2007-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
2

ICSIによるヒト着床前期胚の性染色体モザイシズムをFISH法で分析し,非侵襲的着床前性別診断法の信頼性を検討した.2PNを確認した2から8細胞期のICSIによる着床前期胚を分離した割球を検体とし,DXZ1,DYZ1を用いdual color FISHで分析した.正常男性および女性の末梢リンパ球間期核で検討した.シグナル検出感度は,XY92.0%(460/500),XX89.4%(447/500)で,単一割球の固定率は88.7%(86/97)であった.同一胚内の割球の分析結果がすべて一致した胚は20/25個(80%)で残りの5個(20%)の胚に性染色体モザイクを認めた.2個の割球の結果が正常で一致しても,残りの胚がモザイクである可能性は12%(3/25個)であった.したがって1個の割球を生検して胚全体の性別を診断するよりも2個の割球を分析すれば88%の信頼性でモザイシズムも否定でき,より正確な判定が可能であることが示唆された.