著者
高 栄哲 飯島 将司 並木 幹夫
出版者
日本卵子学会
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.135-144, 2013 (Released:2013-12-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

無精子症は精子形成に関与する多種多様な遺伝子群の異常で惹起されるが,精子形成責任遺伝子は未だ同定されていない.近年,遺伝子変異動物の作成による精子形成障害を示す例が少なからず報告され,精子形成に関与する遺伝子が多岐にわたることが明らかにされている.本稿では,遺伝子の視点から,減数分裂を特徴とする精子形成過程に深く関与する遺伝子群を概説し,無精子症を呈している疾患群から,その原因遺伝子について鳥瞰する.Y染色体長腕上にはAZF(Azoospermia factor)と呼ばれる精子形成領域が存在する.この領域の構造的特殊性を概観し,染色体内再組換えによる欠失機構を解説する.さらに,われわれが開発した日本人により適したY染色体微小欠失検出キットの開発のコンセプトとその使用法について概説する.
著者
李 殷松 鄭 然吉 荒木 真 福井 豊
出版者
日本卵子学会
雑誌
日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-23, 1996
被引用文献数
6 3

ウシ血清アルブミンを含む合成卵管培養液(SOFM)に添加したヒトまたはマウス白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor; LIF)が単一または集団培養したウシ桑実胚の体外発育に及ぼす影響およびLIFの最適添加用量について検討した.ウシ未成熟卵子を体外成熟,30時間体外受精後2~4細胞期へ分割した受精卵を体外培養し,受精後124時間目に桑実胚を回収した.桑実胚は0(対照区),500,1,000,2,000,4,000または6,000 U/mlのヒトまたはマウスLIFを添加したSOFMを用い,単一(1個/30 <i>&mu;</i>l microdrop)または集団(4~5個/30 <i>&mu;</i>l microdrop)培養した.その結果,集団培養は単一培養に比べ孵化胚盤胞への発生率が有意に(p<0.01)増加した.ヒトおよびマウスLIFは単一培養した桑実胚の孵化胚盤胞への発生率を有意に増加させたが(p<0.05),集団培養では有意な発育効果がみられなかった.マウスLIFでは1,000 U/mlが最も高い拡張および孵化胚盤胞への発生率を示したが(p<0.05),ヒトLIFでは500~6,000 U/mlの添加用量による発生率には有意差がみられなかった.以上の結果より,受精卵の集団培養は単一培養に比べ胚発育に効果的であり,SOFMに添加したヒトまたはマウスLIFは単一培養したウシ桑実胚の孵化胚盤胞への発育を改善することが示唆された.
著者
鈴木 達也 柴原 浩章 鈴木 光明
出版者
日本卵子学会
雑誌
日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.166-175, 2010
被引用文献数
3

哺乳動物において射出精子は,透明帯との結合,先体反応および卵子との受精のために雌性生殖路内で複雑な生理学的,機能的変化をとげねばならない.この精子が受精可能となる変化を受精能獲得(capacitation)と呼ぶ.capacitationを完了した精子は,透明帯を貫通するための特殊な鞭毛運動である超活性化(hyperactivation)と呼ばれる変化を示す.またcapacitationの過程で,精子表面や精子細胞膜の変化,Ca <sup>2+</sup>やHCO<sub>3</sub><sup>&ndash;</sup>イオンの変化,アデニル酸シクラーゼ/cAMP/PKA経路そして精子タンパク質リン酸化の変化を起こす.将来的に,詳細なcapacitationのメカニズムの解明により男性不妊症における精子機能検査法や男性不妊治療法を開発できるかもしれない.<br>
著者
中野 由起子
出版者
日本卵子学会
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-104, 1996 (Released:2007-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
2

ICSIによるヒト着床前期胚の性染色体モザイシズムをFISH法で分析し,非侵襲的着床前性別診断法の信頼性を検討した.2PNを確認した2から8細胞期のICSIによる着床前期胚を分離した割球を検体とし,DXZ1,DYZ1を用いdual color FISHで分析した.正常男性および女性の末梢リンパ球間期核で検討した.シグナル検出感度は,XY92.0%(460/500),XX89.4%(447/500)で,単一割球の固定率は88.7%(86/97)であった.同一胚内の割球の分析結果がすべて一致した胚は20/25個(80%)で残りの5個(20%)の胚に性染色体モザイクを認めた.2個の割球の結果が正常で一致しても,残りの胚がモザイクである可能性は12%(3/25個)であった.したがって1個の割球を生検して胚全体の性別を診断するよりも2個の割球を分析すれば88%の信頼性でモザイシズムも否定でき,より正確な判定が可能であることが示唆された.
著者
Haruhiko Sago
出版者
日本卵子学会
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.18-21, 2004 (Released:2004-05-20)
参考文献数
12
被引用文献数
6

The incidence of major chromosome abnormalities in newborns is about 0.7 percent and increases with maternal age. Amniocentesis is the most common invasive prenatal procedure for the detection of fetal chromosomal abnormalities. Amniocentesis is a relatively safe procedure and fetal loss related to amniocentesis is about 0.5%. An advanced maternal age is the most common reason for using amniocentesis. The use of amniocentesis because of abnormal fetal ultrasound findings has increased recently. Fluorescence in situ hybridization (FISH) is currently a powerful tool in the area of prenatal cytogenetics. The number of amniocentesis procedures in Japan is about ten thousand per year and it is generally recognized to be a great benefit for pregnant women who have a risk of fetal chromosomal abnormalities.