- 著者
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丸 諭
- 出版者
- 千葉県農業試験場
- 雑誌
- 千葉県農業試験場研究報告 (ISSN:05776880)
- 巻号頁・発行日
- no.30, pp.p91-98, 1989-03
1. 実態調査の結果,継続的にパラコートを使用してきた農家圃場では1~数ppm,特に多用していた圃場では10~50ppmの残留濃度に達していた。ジクワットは従来の使用頻度が低かったので,現在の土壌残留濃度はパラコートより低いが,今後継続的に使用されれば,近い将来にはパラコートと同様の状況になると思われた。2. 土壌処理したパラコートの減少は遅く,火山灰壌質土の果樹園では,半減期は2年以上と推定された。これに対し,ジクワットの半減期はパラコートより短く,約半年となり,実態調査結果とは適合しなかった。3. 土壌にパラコート,ジクワットおよび両者の混合剤を添加して小麦を栽培したところ,各除草剤とも,火山灰壌質土は210ppm,海成砂質土は360ppm,河成壌粘質土は1410ppm,第三系粘質土は1390ppm以上の添加区で薬害が発現した。4. 土壌からのパラコート,ジクワットの溶出率は,10.5M硝酸アンモニウムによるものが最も高く,5M塩化アンモニウムがこれについだ。土壌の種類別では火山灰壌質土,海成砂質土からの溶出率が高く,河成壌粘質土,第三系粘質土が低かった。また,パラコートに比べジクワットの溶出率が高く,土壌中の両除草剤の濃度が高いほど溶出率も高かった。5. 土壌からの5M塩化アンモニウムによるパラコート,ジクワットの溶出濃度と小麦の生育の関係は,一定の曲線を示した。このことから,土壌中の両除草剤の残留濃度とは別に,簡易な溶出法による診断によって,薬害の未然予測の可能性が示された。